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人の皮を被った獣 その3

ちょっとグロめな表現と自己中的な表現が含まれると思いますのでご注意をば。

私を呼び止めるジェスタの顔は一見爽やかな笑みに見えるがどうも何か引っかかる。


「金貨100枚などという途方もない対価を貰ったのですからサービスで町までの護衛など如何ですか?」


「あのフォレストウルフの亜種はこの樹海では珍しい方だけど強さ的には中間くらい…1人では大変な事も多いぜ?」


「そうです。まだ我々は出会っていませんが他のパーティの話ではサイクロプス種や下級のワイバーン種など特色ですら手こずるモンスターの目撃例もありますし」


「……」


 …サイクロプスの上位種のギガントサイクロプスすらうちの従者でも余裕という事は当然口に出すまでもない。

 ワイバーンはまだ戦った事は無いが、特色クラスで倒せるなら私なら苦も無く…ということだ。

 それに私に嫌悪感まる出し…まぁ礼儀は欠いていたが――だった犬型亜人のガントが黙ったままというのが気にかかる。


「申し出は有難いが遠慮させて頂く。町に戻る用は無いのでな…ここで失礼させて貰う」


「そうですか…それでも貴方のような財を持った方と出会えたのも何かの縁…もし冒険者絡みで何かあったら"青蜥蜴"をご贔屓に」


「…覚えておこう。それでは」




 野営地の端でグレイが待っている。

 踵を返してグレイの元へ向かう……が足が何かに引っかかった。

 木の根?と思っていると伸びながら足に絡まり巻き付くように足首、膝、腰とぐるぐる、ギチギチと締め付けてくる。

 杖を構えながらシェスタがニヤニヤと笑っている。


「いかがですか? "バインドツリー"と"ハードプラント"をかけ合わせた私オリジナルの拘束魔法は?」


 私の体は根っこに覆われ、もはや出ているのは頭のみだ。

 これは…もしかしなくても…あれだよなぁ…


「…今、拘束を解くなら見逃してやる」


 事態の変化にグレイがウ゛ゥゥゥと唸るが『黙って見ていろ』念話を飛ばしたから大丈夫だろう。


「強がりは止めて素直に降参したほうが痛い目見ずに済みますよ、大人しく身ぐるみ置いていくか…死ぬか、どちらがいいですか? 自慢ではありませんが青蜥蜴は実力ととある噂で恐れられているんですよ……強盗、野党紛いの事をしている、と…心外ですね」


「降参も痛い目もどちらもゴメンだな」


 拘束されているとは言っても所詮は植物だ、力任せに引きちぎるのは造作もない。

 試しに右腕にぐっと力を込めるとブチブチという音と共に右腕が飛び出す。


「なっ!? ガント! 拘束が解ける前にやりなさい!」


「無抵抗の相手を嬲るつもりはない…一撃で終わらせる」


「……これが最後の警告だ。そのメイスを振り下ろしたらお前たち3人を『敵』と見なす」


「ガント!!さっさとやれぇ!」


「ッ!! オラア゛ァ!」


 メイスという武器は柄の先端に球体やスパイクを付けた物が主流だ。

 先端の形状により、叩いて凹ませるか突起により穴を開ける物に大きく分けられる。

 ガントが使用しているのはお玉の化物のような相手を純粋に凹ませる事を目的とした鉄球タイプだ。

 そして鉄の塊というのはそれだけでも結構な重量があり、仮に鉄アレイを投げ付けるだけでも相手に怪我を負わせるには十分だ。

 鉄の塊に殺意という指向性を持たせ、人間以上の筋力で私の頭を狙うわけだが…。


 ガァン!


 薄暗い樹海に轟音が響き、うわんうわんと残響が木霊する。

 ドサッとメイスを落としてガントが痺れた両手を見据える。


「がっ……! 何て硬さだ…!」


「凹みすらしないだと!?何だその馬鹿げた防御は!」


「今この時を持ってお前たちは私の『敵』になった。もう容赦は無い。」


「チッ…物理が駄目なら魔法だ!拘束が生きているうちに……"フレイムケージ"!」


 私を中心に炎の渦が生まれ、名前の通り檻になった。

 これは相手を炎の中に閉じ込めて焼き尽くす火属性の中級魔法の1種…とヘルプで読んだ。

 何でそんな余裕があるかって言うと…まぁ、全く効かないからね。

 むしろ体を覆う根っこが焼けただけこちらの得かな。



「あの鎧は高価そうだったからできれば原型を止めたまま手に入れたかったが…仕方がない」


「ガント渾身の一撃を無傷で耐えるって相当なレア物だったろうなぁ~」


「装備だけではない、あの拘束魔法を力技で引きちぎるなんて芸当が出来るのがいるとは思わなかった…奴は余程の―――」


「ガント? どうした?」


 もうガントは喋らない。

 喋れない。

 炎の檻が消え無傷の私が現れると同時にガント…だったものが崩れ落ちる。

 彼の体と守っていたはずの盾は何重もの細切れのパーツとなって地面に転がり、やがて断面から血が広がっていく。


「!? な…何で…死んでない!?」


「あ…あ! うわぁぁぁぁぁ!」


 弓使いの男が脱兎のごとく逃げ出す。

 こいつは直接手は下しては居ないが止めなかった時点で同罪だ、許すつもりはない。

 後ろで暇している奴らに仕事を与えるとするか。

 

「ハチ、今逃げた奴を捕まえてこい」


「承知!」


 ぴょんぴょんと木の枝から枝に飛び移りターザンのような、ナ○トのような軽快な動きで森の中を駆けて行く。

 さて、ここに残ったのはリーダー各のシェスタ1人だ。


「…覚悟はいいか?」


「中級でダメなら……………"イラプション"!! 鉄をも溶かす熱量で跡形も無く消えろぉ!」


 私の足元が赤く光りぐつぐつと煮えたぎる。

 数秒後には沸点を超え、間欠泉のように溶岩が足元から噴き出した。

 わー、溶岩の中って明るいんだなぁ…そんな感想を感じつつまるでただの噴水の中を通るように歩を進める私。


「ありえない…ありえない…ありえない!! 物理も駄目、魔法も駄目…であればもうこれしか無い!!!」


 懐から何か出すと地面に向かって投げつける。

 ボフンと破裂する音と閃光と煙が同時に広がり視界が塞がれる。

 煙が晴れるまでには10秒程度かかりそこにシェスタの姿は無い。

 敵わないと分かった矢先に逃げを選択するのは賢い…がそれは相手が常識の範疇にいる場合のみだ。


「フェンリル…今逃げた男を捕まえて連れてこい」


『…殺したら駄目なのか?』


「アイツは首謀者だ。私が自分で裁く」


『分かった…なるべく殺さないようにがんばる』


 薄暗い樹海の中に白銀の残光を残しながらフェンリルが走って行く。




 ものの数分もしないうちに絶叫が聞こえ、フェンリルが血だらけのシェスタを咥えてきた。

 ハチも丁度同じタイミングで気絶した弓使いの首根っこを捕まえてをずるずると引きずって来た。


「2人ともご苦労」


「何だ…何なんだアンタは…こんな化け物まで従えて!!」


「…弱者の味方だ」


「アンタからすれば大概は弱者だろうが!」


 血だらけで股間にもシミを作りながらもはや先ほどまでの丁寧さの欠片も無くシェスタは叫んだ。


「意味を履き違えるな、私は虐げられる者を救っているのだ……どうする、今なら夫と子供の無念を晴らせるぞ?」


 ヒッ…と息を飲むシェスタに対してグレイは『夫は子供たちを守って死んだ。誇り高い最後。だからいい』と。

 私には子は居ないが、親になれば理解出来るだろうか…。


「彼女の高潔さに感謝するんだな。フェンリル、放してやれ」


 ドサッと地面に倒れると引き攣った声と体液を漏らしながら森の中に消えて行った。

 気絶した仲間を放置して…というのは少し、許せない。

 それに、放してやれとは言ったが私自身は許していない。

 

「ハチ、その弓使いは装備を全て取っ払ってここに放置だ。他のモンスターが処理してくれるだろう。フェンリルは私を乗せて奴を追え」


 ウィムッシュ!とどこでそんな言葉づかい覚えたハチを放置してフェンリルが森を駆ける。

 隠蔽魔法も使わず、身体能力の強化も使わずに逃げれる距離などたかが知れている。

 先回りをして奴が出るであろう道と呼ぶには憚られる通りにて待ち構える。


 ガサガサと茂みからシェスタが現れた。

 恐慌状態なのか酷い顔をしている。


「ヒィ! な、何で!? 見逃してくれるんじゃないのかよ!!?」


「彼女は許した。だが私に剣を向けた事を許した記憶はない。それに仲間を見捨てるような輩は個人的にも非常に許しがたい。」


「あ…あぁぁぁぁぁ!」


「理性があるが故に欲望に塗れ、殺しまで行おうとする性根は畜生にも劣る。」


 フェンリルから降りて刀を構える。

 腰が抜け、もはやずりずりと後ろに尻を滑らせる事しか出来ない。


「そんな人ですらない獣はここで朽ち果てろ」








― ― ― ― ― ― ― ― ― 






 グレイ一家…と言ってももはや母親と子供の2頭だけになってしまった。

 律儀にお座りして私を待ってくれていた。

 

「…すまなかったな、家族全員を助けてやれなかった」


『私だけではこの子も守れなかった。感謝』


「…ありがとう」


 なぜお礼を言われたのか理解できずに彼女は首を傾げた。

 …気持ちと頭を切り替えて行こう。


「もし君が良ければ君に安全な住処を用意するが…どうする?」


『この子を安心して育てられるなら行く』


「決まりだ、聡明な君ならすぐに馴染めるだろう」




 この世界ではモンスターは駆除すべき対象だ。

 ほぼ例外なく敵と見なされている。

 理由はいくつもあるが、例を挙げるなら「意思疎通の難しさ」「価値観、習慣の違い」だろうか。

 ゴブリンなんかは雑食性で多産だが少ない事例だが言語を解する者もいる…しかし、奴らは人を捕え、犯して食う。

 そんな奴らとお友達に――なんて言ったら異常者と見られるだろう。


 だが、人にも善人と悪人が居るようにモンスターも種類、知性によっては共存関係を築ける者が居るのではないか、と思う。

 だから私はテストケースとして彼女――グレイをアダム村に招待したのだ。

 「モンスターですか!?」と驚いていた村長も私の言葉を聞き、理解している彼女を見て納得したようだった。

 ちなみに彼女の家は村の教会の脇に小屋を建て、村の周囲を縄張りとして近くに出るモンスターの討伐をお願いしている。

 きっとしばらくすれば彼女とその子供が村の中を堂々と歩いても問題にならないようになるだろう。


 


 ちなみに朝の礼拝時必ず参加している白い狼の親子が話題になるのはもう少し後のお話。

消えた部分+加筆で何とか仕上がってよかった…。


明日から出張なので次の更新は4/23予定です。

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[一言] 主人公頭悪いな。
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