ゴーレム狂の受難
「おおおおおおおおおお!!!?これが俺っちの城じゃぁぁぁぁぁ!!」
城という名の小屋ですが…まぁどれだけ小さくとも一国一城の主なのだから水は指すまい。
「気に入ってもらえたのなら良かった。中の設備はどうかな? 私の国の物だが専門ではないので教えることは難しいが…」
「天上の設備と言ってもそこまで大きい違いは無いようじゃ、おおよその察しは付く。」
それならば問題は無いだろう。
どうせなら素材となる鉱物もプレゼントすれば村に大いに貢献できるのではないか?
「ビルド、材料となる鉱物はあるか?」
「周りの土地は探ってみたが…精々が鉄が少しに銅がほんの少しあるぐらいじゃ、村の農具修理がなんとかってとこじゃな」
「なら材料さえあれば武器も作れるか?」
「おう!この設備に慣れさえすりゃ何だって作ってやるわい!」
はい、言質取りましたっと。
アイテムボックスを開き素材となるであろう鉄、鋼、銅、銀、金、ミスリルをこれでもかと、まるで壊れた蛇口のようにがらがらと山にしていった。
ちなみにこの素材はこっちの世界の素材なので信仰ポイントも使わないので私的にはエコな素材だ。
「これで足りるか?」
目を見開き( ゜д゜)……としている。
髭で口は見えないが顎が下がっているので予想は出来る。
「……………はっ! いかんいかん、ミスリルが山のようにあるなど白昼夢じゃわい…」
「いや、現実だぞ…これは私の資産の一部だ、この村の為に有意義に使ってくれ」
「…まじでか……失われた転移や解呪など規格外とは思っていたが酒に加えて材料も規格外とは恐れ入ったわい……ここまで施されて良い品が作れんようじゃ三流もいいとこじゃ!」
オースでのミスリルの価値観と土精種の価値観にそう大きな差異はないらしい。
とりあえず村の農具や武器がグレードアップすれば良い生活にも直結するだろう。
「さっき出した材料は好きにしていい、ミスリルで農具も作っていいし武器などは戦える者に優先的に渡してくれ」
「ミスリルの農具とは…諸国の冒険者たちが絶叫しそうじゃが……承知した。次に村に来る頃には軍隊も非じゃねぇほどの装備にしてやるわい!」
小屋からはみ出している色取り取りの素材の山を前に小躍りするビルドは「♪~何から溶かすか~叩くかドンガンドン♪鎧か剣かマサカリか~♪」と土精種の歌だろうか、ちょっと調子はずれの歌を垂れ流している。
どうやら機嫌が良いと鼻歌やらが自然と出るものらしい。
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次はエミエだが、一応軽く触れておこう。
このアダム村は以前に盗賊団に襲われていたことがあり、その首謀者がこれから会いに行くエミエ・ラヴレ元宮廷魔法士だ。
実際の黒幕は別にいるんだが、その辺は物語をもう一度読み返してもいいんじゃよ?
話を戻そう…エミエは魔法という広大な分野では極々マイナーなゴーレムに精通した…まぁ、いわゆるマニアだ。
部屋に閉じこもりずっとゴーレム製作に掛りっきり…というのが村長からの言だ。
まさに先ほども村長宅にお邪魔したら絶賛お籠り中とのことで部屋からは作業の音と不気味な笑い声が響いていた。
「渡してから1か月か?2か月か…? いかんな、どうも睡眠を取ったり取らなかったりするせいか時間の進み具合が分からなくなるな…」
この案件が終わったら1度、耐性解除するか。
仮に1ヶ月とは言え籠もりっきりであればどんなゴーレムが出来ているか分かったものではない。
あの時のデモンゴーレムよりも強い物が出来ているのは想像に難くないが、あまり強すぎたり自身の手に負えなくなっていれば元も子もない。
扉を壊してでもお邪魔させてもらおう。
ドンドンドンと少々荒目のノックが響くが部屋の中に変化が有ったようには感じ取れない。
常にカチャカチャ…ガリガリ…と作業中らしい音と時たま「ヒヒヒッ…」や「くふふ…ぐふっ…ww」という堪えきれない笑いのようなものが聞こえる…怖いわこれ。
「これが…大体1月半ほどでしょうか、朝の礼拝と食事時には出てくるのであまり心配はしていないのですが…」
そう村長はちょっと言い淀みながらも言葉を続ける。
「アダム様のお陰で未遂に終わったとは言えあの件でエミエさん…いえ、ゴーレムに良い印象を持つものはほぼおりません。本人が村民と積極的に交流を持ってくれれば変化もあるのでしょうが…」
なるほど、例えは極端かもしれないが、元テロリストが隣に引っ越してきたが日がな1日籠もりっきりというのは不気味だ。
飯時だけでも顔を合わせている村長一家が唯一の現状を知る者では、他の村民は気が気じゃないだろう。
「確かに…ご丁寧に"立ち入り禁止"とあるが、ここは強行突破しましょうか」
といっても仮にも女性の部屋だ。
無断ではあるが、世間体のために「エミエ!入るぞ!」と声ぐらいは掛けてみる。
念のために補足しておくと村長宅はこの村では一番大きく、個室の数も多い。
他の家は個室がある方が珍しくドアに鍵…といってもかんぬきのようなシンプルなタイプだがそんな設備すら高級とされている。
エミエの部屋はやはりかんぬきが掛けられているらしく押してもびくともしない…本気でやると当然だがドアを壊すために軽~くしか押して無いけどね。
ぐっとごく軽く力を掛けるとミシミシと木がしなる音、やがてパンッと破裂のような音に変わるとドアが開いた。
中は…端的に言うなら汚部屋…だろうか。
誤解を招くような言い方をすればゴミ屋敷だ。
机や床は実験機材のようなものや、工具みたいなもので埋まっており足の踏み場がない。
ベッドの上のみが辛うじて最後の聖域で、その聖域も着替えと…下着で汚染されつつあった。
「…ヒヒヒッ…ここはもっと鋭くして…」
当人はかんぬきを壊して入った我々に気づく様子もなくゴーレム…と思われる物体に手をかけ続けている。
一方家主は部屋の惨状に「oh…」と言葉も出ていない…ご愁傷さま。
それにしてもデモンゴーレムの時より大分小柄で全高が約2メートルぐらい、体型も人形かフィギュアを思わせるような造形…それにどこかで見たことの有るような…?
「エミエさん! 何ですかこの部屋はッ!!」
「…へ?」
いつもなら「あらあら」と温厚な空気を漂わせている奥さんがドアの前で立ち尽くしていた私達の後ろに仁王立ちしていた。
傍から見てもゆらゆらと怒気が溢れているのが分かる。
「朝から晩までずーーー……っと籠もりっきりで! アダム様の人形にかまけて! もう少し掃除と健康に気を使いなさい!!」
あー…どっかで見たような姿だなーと思ったら私じゃないか。
銀の髪にイケメンな顔――ってディフォルメされたら分かんないじゃん。
「え…ドアは閉めていたのになんで…」
「問答無用! 晩ごはんまでに片付けますので、アダム様は少々外でお待ち下さいな」
「あっ、はい」
触らぬ神に祟りなし。
村長も同じ思いなのか、無言で私に付き添ってくる。
「ああなった妻は止められません…一区切り着くまではエミエさんも逃げられないでしょうね…」
「あの部屋をみれば誰もが不衛生で不健康なのは分かりますからしょうが無いですねぇ…」
着替えが運び出され、ゴミと思われるものがまとめられ、「それは捨てないでぇ!」「そっちは調合中だから触らないでぇ!」とエミエの悲鳴と「触られたくないなら自分でさっさと片付ける!」と鬼教官のやり取り聞きながら私と村長は静かにお茶を飲むのだった。
お待たせしております…
短めですが区切りのいいとこで一旦切ります。
明日から出張のため、次は早くて水曜日くらいを予定にします。




