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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
3章 より良い生活を目指して
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今週のアダムさんは「自分語り」についてお送り致します。

頭部に迫る木刀。

間もなく血まみれの惨劇になるであろう未来がすぐそこまで迫っている。



「待ったぁぁぁぁ!!!!」



声を張り上げたのはキルスティン支部長。

木刀はホリッドの頭の前50センチほどで止めることが出来た。

受けの当人は既に木刀を手放し、体育座りの姿勢で両手で頭を覆うように縮こまって震えている。

ガチガチと歯がならす音に混じって仄かに香るアンモニア臭…。

あちゃー…正直やり過ぎた…と思う。


「もうこれ以上は必要あるまい!誰が見ても結果は明らかだ!」



「…すまん、手加減が下手くそだからケガをさせる前に止めるにはこうするしかなかった…。」


ホリッドに対し手を伸ばすが手は掴んで貰えなかった。


「ヒィッ! た、頼む…こ、ころ、殺さないで…!」


…殺気をオフにするのを忘れていた。


「重ね重ねすまん…。」





重圧が消え、顔に赤みが戻る。

呼吸も楽になったのか今度は手を握ってくれた。


「あんた…その実力で緑とか嘘だろ…」


「ま、その辺は秘密にさせてくれ。」


「……あー!負けた負けた!!俺の完敗だぁぁ!」


大きく大の字になり庭に寝転ぶ…ホリッドは脳筋ゆえに性格は案外さっぱりしているらしい。

こういうタイプは一度心を開くと熱心な兄貴分らしくなるものだ。

その証左が付き添っている2人だ。


「ちくしょー支部長とマルダちゃんのほぼ独占勝ちかよ!」

「まぁアダム様なら余裕ですよねー」

「様?もしかしてそういう関係?」

「1口とはいえ倍率が高かったから儲けもそれなりだな…今夜はちょっと奮発しようか。」

「マルダちゃん…」


ちょっとマルダよ、素が出ているぞ…違う方向に誤解されてるから良いとして……良いのか?


「負けたからにはスジは通さねぇと…なっ!」


ホリッドは何やらバッジにような物を投げて寄こしてきた。

簡素な細工のバッジで全面には女の子の顔のような模様に裏面には『S:0001』と番号が彫り込まれていた。


「…これは?」


「聞いて驚け!マルダ親衛隊の第1号を示すバッジ…つまり! マルダ親衛隊隊長の証だ!」


うわー…何となく「もしかして…」とは思っていたが嫌な方に予想通りになってしまった。


「勝負に負けた俺は隊長の席を譲り、隊員番号4番として再加入だ…マルダちゃんの事ちゃんと守れよ!」


「あ、ああ…。」


アダムは『マルダ親衛隊』に入隊した!

アダムは『マルダ親衛隊隊長』の称号を獲得した!

アダムはホリッド、イキリー、ネラックを舎弟にした!

マルダの好感度が10上がった!しかし好感度はMAXなのでこれ以上は上がらない!


何か望んでいないテロップが流れた気がするがスルーしておこう。






あの手合わせが終わってから逃げるようにギルドを後にし、今はオースの街から30分ほど歩いた所にある農場に来ている。

ダッシュボアによって農作物に害が出ているのでその駆除が今回の依頼だ。

ちなみにハチは管理者の間でお留守番中。


「いやー、さすがはアダムさんですよねーアタシの為にあの連中をしばいてくれるなんて…毎日祈っている甲斐があるってもんです!」


街を出てから道中ずーっとこんな感じだ、「あくまで不可抗力だ」と言っても聞きやしない。

褒められるのは嫌いではないがよいしょされ続けると無感動になってくる。

これならハチが居たほうが良かっただろうか…。


「祈ってもらえるのは有難いが、そろそろ依頼主の農場だろう、警戒はしなくていいのか?」


「あー、ダッシュボアはヒヨッコでも相当油断しない限り余裕の相手ですよ!」


慢心イクナイ。

常に全力で気を張れとは言わないが警戒心はもってしかるべきだ。


「マルダ、相手が雑魚とはいえ舐めてかかるのは危険だ。ちょっとした油断で勝者と敗者は入れ替わるものだ。」


「ハイ!気を付けます!」


返事だけは良いんだけどなぁ…。



依頼主の農場のオーナーに話を聞くと、ここ2週間ぐらいダッシュボアに農作物を食われ荒らされているらしい。


気になるのはダッシュボアは基本的に森の浅めの所に巣を作り行動する為、こんな草原の真っただ中の農場を襲う事は滅多に無いらしいがここ2週間はたて続けという話だ。

もしかしたら何かしらの異変により生息地を追われて来たのかもしれない。

主に夜に掛けて荒らされるらしく、今夜は寝ずの番となった。


農場は広い、右は見渡す限りにジャガイモ、左は見える限りに小麦…とかなり規模を誇っている。

狙われているのが主にジャガイモという事で畑の端に簡易テントを設営して来客を待っている。


明りがあると寄って来ない可能性があるため、ランタンに覆いを掛けて光をかなり遮っているので小さなテントとはいえ手元は少々暗い。


マルダは暇そうに横になり、たまに私の顔を見たかと思うとすぐに目線を逸らしたりしている。

テントの外からは虫の鳴き声がキーキーと聞こえる以外は草の騒めきだけ…沈黙で過ごすには少々物寂しい。


「…マルダは…何で冒険者を目指したんだ?」


「ふぇ!?え?あ、アタシですか!?」


「声がデカい…ここには2人しかいないんだ、暇つぶしに教えてくれ。」


「あっ、すいません……えっとですねぇ…大したことは無い話ですよ?」


「構わない、マルダの話を1つ聞いたら今度は私が1つ答えようじゃないか。」


「む~…ホントに面白くないですからね…?…あれは――」


そういって始まったマルダの冒険者を目指すまでの過程は確かに良くある悲劇ものに近い内容だ。

だがこの世界で生きている人の切実な現状を私が感じるには充分な内容だった。



「アタシはですね…この辺の生まれではないんです。オースの半分の半分…くらいの本当にただの通り道みたいな小さな宿場町の…更に離れた所にある村で生まれました。

今思えば貧しい生活でしたねー村で生産した小麦は税と金策の為に使い、痩せた畑で作った芋を食べる毎日。

たまーに罠に掛かった猪とかウサギなんかが出た日にはもうすごい嬉しかったのを覚えています。あぁ、村の暮らしは切っ掛けにはそんなに関係ないんですけど…まぁ、そんな村にもものすごーくたまーにですが領主の貴族が見回りに来るんですよ。

今考えればあの村で過ごした12年ちょっとの間に…2回ぐらいですかね。

それで…村の中から「原石だー」といって娘を買い取って行くんですね。

当時は分からなかったけど、今にして思えばゲスいことをしていたんですよねー…。

それで4つ年上の姉ちゃんが買われて行って…家には金貨という見たことも無いお金が入りました。

両親はもの凄い喜んで…それから生活が一変しました。

服がボロボロの継ぎ接ぎから中古品とはいえ綺麗なものに、農具も新品に…食事もスープが付くようになりました。

それに味を締めた両親はアタシも売り物として育て始めたんです。

ある程度の読み書きが出来るように本を、見初められるように髪を整え…日焼けしては――なんて畑仕事の手伝いもさせて貰えなくなりました。

来る日も来る日も家の中で勉強と家事をする日々が続きました。

それから2年、3年かな…また領主が来たんですよ。

両親はここぞとばかりにアタシを売り込みました。

ご想像通り買われませんでしたよ、理由は「中途半端に磨かれた石は要らない」と言われました。

そっからがちょっとだけキツかったですねー。

両親から売れなかったから要らない…と家を追い出されました。

行くところが無かったアタシは小さいながらも宿場町に着の身着のまま向かいました。

もちろん12,3の娘に出来る仕事なんて見つからないので生きるためにいろいろしましたねー…。

宿の掃除に馬の世話…時には盗みやどうにもならないときはもう女を売ってまで何とか生きてきました。

宿場町での数年間…細々と暮らすうちに冒険者の知り合いも出来て…そこから冒険者ならきっとアタシでも出来ることが有る!って勝手に息巻いて……ご存知の通りあの洞窟で一生を終えるはずでした…ってなわけです。

ね?面白みもなーんにもないでしょ?ただ生きていくために選んだってだけなんですから。」


「そうか…月並みな言葉で悪いが、辛かっただろう。」


「そんな、止めてください…このくらいの不幸はどの町にも普通に転がってる話ですってば……じゃぁ、今度はアダム様の話を教えてくださいよ。」


「そうだな…私が住んでいた世界とこれから目指す世界について語ろうか…」


マルダが言うにはこの世界は未だに権力者が全てを握り、持たざる者は徹底的に絞られる世界だ。

多少なりとも秩序があるが、それは力を持っている者が持たない者を良いように使うための秩序という名の鎖だ。

自分の目的を考え直す為にも自分語りではあるが再認識するのも悪くないだろう。


「私が住んでいた…そうだな、神の管理下にある世界とでもしておこうか。

その世界は非常に厳しいルールによって管理されていたがその為、誰もが平等であるという考えによって動いていた。

少なくとも万人が飢えないように国が弱者を保護し、強者から多く税を取り持つ者と持たない者を同じように管理していた。

子供は誰しも学校…えーと文字の読み書きから計算を習う場所に行き、ある程度の年になると働いて金を稼ぐか、もっと勉強して世界の神秘に挑むか…と自分の未来を選ぶことも出来た。」


「すごい…誰も飢えないなんて素晴らしい世界じゃないですか…」


「表面上はそうなんだろうな、しかし実態はより良い暮らしをする為に他人を蹴落とし、罠に嵌め、自分の居場所を守るのに必死になる毎日だよ。

そこには子供も権力者も差異は無い。

それに私が居た国以外にも数多く国があり民がいるが、どこも武器やお金で脅し合い、神に対する考え方でいさかいが絶えない世界だよ。」


「不思議ですね…飢えないのに仲良くできないなんて…」


「それだろうな、生きるために必死で田畑を耕す。そうして生きていれば他の事には気を向ける暇が無いから…だと思う。」


「なんか…難しいですけど寂しいとこですね…。」


「そうだな。だから私はこの世界をそんな下らない事で争わなくてもいいように、皆が笑って過ごせるような世界にしていきたいと考えている。

人の考えは多種多様だし、ましてや他種族では生き方すら違うから困難な道であることはもちろん承知だがな。」


「アダム様は立派な考えをお持ちなんですね……。」


別にあっちの世界の絶望した訳ではない。

ある意味ではあの世界は完成していたはずだ。

だが良い世界であるかという事については素直に頷けない自分がいる。

国を良くするという大義から国政では足の引っ張り合い、他国は自国の利益優先で思いやる気持ちを忘れている。

あんな腹の底では何を考えているか分からないような国…世界になどしてたまるか。


「それで私の理想の世界を実現するための第一歩として…成り行きだが村の管理をしていて―――」


「…アダム様?」


実はずっと使っていた『範囲索敵』に反応があった。

自身から直径1キロメートルに動物かモンスターと思われる集団が入り込んできた。


「お客さんのお出ましかな?」

インデントに関してご指摘を頂きました。

特に今回は、マルダとアダムの語りシーンでごちゃごちゃと記述しています。

"読みやすさ"という点については少々お見苦しい分があるかと思われますが、追々インデントなり、改行なりで改善していければと思っております。

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