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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
3章 より良い生活を目指して
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獄中から一転

「誠にッ!申し訳ございませんッッッ!!!」


見事な土下座を見せたおじさん…上で兵士たちに命令調で話していたことや身なりからそれなりの身分である事は容易に分かる。

そんな人が恥も外見も気にせずに、ましてや兵士と捕まっている囚人の前で土下座などどれほどの覚悟なのだろうか。


「まず頭を上げてください、服が汚れてしまいますよ。」


「勝手ですが許しを頂くまでは頭をあげれません。服の汚れなど…許しを頂けるのなら肥溜めにでも入りましょう。」


いや、別に実害としては退屈だったぐらいで許さないという事はない。

それにここで「許してやるから肥溜めに入ってこい」なんて尊大を通り越して暴君的な人だと思われるのも嫌だ。

まして…この状況で頭を下げるということは紛れもなく捕まえるという命令を出したのはこの人だろう。

情報を引き出す上で友好な関係を構築するに越したことはない。


「許しましょう…ですが詳しく話を聞きたいので邪魔が入らない場所を用意して頂けますか?」


「ハッ、すぐにご用意します!」


そういうとおじさんは兵士に命令して牢を開けさせ移動の手はずを整えてくれた。

外はもう夕日と呼ぶような時間だがそれでも2日ぶりの太陽だ。


「間もなく馬車が参りますのでお乗りください。冒険者ギルドに場所をご用意しております。」


「よしなに。」




獄中での扱いとうって変わって応接室のような部屋でゆったりとソファーに体重を預ける。

未だに名前も身分も聞いていないがあのおじさんの取り計らいで一気に待遇が改善した。

逆に言えば何も無ければずっとあのままだったということだ。

後でおじさん経由で釘は指しておかねば…あ、このお茶も初めて飲んだけど美味しい。


「菓子はギリギリ及第点という所か…あの貴族の所には及ばんな」


用意された茶菓子を一口で平らげてその言動…お前はいっちょ前にお菓子ソムリエか!


「また太るからお代わりはダメだからな」


"む、ぐぅ…"と念話で唸るとは芸が細かい奴め…。




ちょうど用意されお茶を飲み終えた頃にドアがノックされ馬車が着いたことが伝えられた。

伝えてきたのは私を牢に蹴り入れた若い兵士だった。

……蹴られた恨みがあるわけでは無いがこういう目に余る態度を行っている者には先んじて釘を指すべきだろう。


「連絡ご苦労…それと君、囚人とはいえ余り乱暴に扱わないように。要らぬ所で恨みを買う事もあるぞ?」


「はっ…はぁ?」


余り腑に落ちないという顔だ。

もしかすると奴隷といい囚人といい、人に対する格差による扱いの酷さを『日常』としていれば疑問も持たないかもしれない。

もっと直接的に言うべきか。

ドアを通りすがりに他には聞こえないようにボソッとつぶやく。


「私が"君に蹴られた"と告げればどうなると思う?数日だが囚人として扱われていろいろと感じたものでね…」


「ッ!」


私が告げればこの若者は何らかの処罰を受けるだろう。

だが私もわざわざそれを上に告げるほど子供でもない…あとは若者の自主性に任せるのみだ。

…私も内面は20代の若造だが、この兵士は私よりも若く見える…年のころはまだ10代後半ぐらいだろう。


「別に君を罰するつもりは無い。少し囚人の扱いについて考えてくれればいい。」


もはやその兵士は黙したまま頭を下げている。




馬車に乗るのは初めての経験だったが……あえて言おう、乗り心地が最悪であったと。

日本の車、電車などの乗り物に慣れ親しんだ人にとっては到底耐えられるものではない。

この体が無ければギルドに付くまでの10分で酔っていただろう。

同乗したおじさんが何食わぬ顔で乗っていることからこちらではまともな乗り物なのだろうか…。


それにしても改善点がぼろぼろと見えてくる。

まずはサスペンションなどによるクッション性がもっとも必須だろう。

現状では木製の車輪に鉄製と思われる車軸があるくらいだ、これに振動を吸収する機構を付ければ多少はマシになるだろう。

続いては騒音だ。

会話しようにも石畳と車輪のガラガラという音でまともに聞こえない。

これはゴムのようなタイヤ代わりになるものが必要だな。

この改良版馬車が完成したらアダム村産として売ればそれなりの産業にならないかな?



冒険者ギルドは先ほどの兵士の詰め所とは違い全て木造だが豪勢というよりは剛健といった佇まいだった。

馬車から降りると小麦色の肌をした眼鏡が似合うお姉さんが待っていた。


「お待ちしておりました。アダム様とお見受けします…支部長は少々着替えがございますので先に応接室にご案内いたします。」


「うむ。」


正面玄関をくぐると2階まで吹き抜けのロビーになっており受付カウンターらしき場所が2つ、依頼用の掲示板が置かれ複数設置されたテーブルには冒険者らがたむろしていた。


受付の横を過ぎ、廊下の途中の両開きの扉を開けると年季を伺わせる重厚な木製のテーブル、対面に設置された鈍く光沢を放つ4つの椅子…壁際の棚には良く分からないが宝石のようなものがいくつか飾られている。

まさに応接室!という作りだ。

「こちらで少々お待ち下さい。」と小麦色美人が姿を消し、私とハチの2人だけにされた。


「ふぅ……中々に――」


"主よ、少々の間喋るな。"


何だ?ハチがいつになく真剣な口調で念話を入れてきた。


"…イマイチ掴みにくいがこの部屋、何かが隠れているぞ。"


"…私たちの監視か?それとも…"


さすがに暗殺などという言葉を口に出せるほどの事をしでかして…いないと思いたい。

表立って敵意が無いのは幸いだが、隠れているという事はやましい事があると読まざるをえない。


"真意は分からんがこの建物に入った時からずっと後ろに違和感があった。部屋に入ってからは隅のほうに移動したようだが…"


そういってハチは私たちのソファーの左前方…観葉植物が置いてあるあたりを睨んでいる。

『範囲索敵』に引っかかるものは無いという事は何もいないか、何らかの手段で隠れているかだ。


"隠れている奴をあぶりだす魔法とかあるか?"


"第一に隠蔽系の魔法そのものを解除があるがそれは相手が何を使っているかを知らないと何を解除するか決まらん。それに相手を認識できないと掛けようが無い。"


"じゃあ隠れている相手そのものを発見できるような魔法か技は?"


"んむぅ…剣聖を極めた者にのみ使える技と…教会の犬どもが使う技が有ったような気がするが…確証はないぞ。"


こんな時には久々のヘルプ検索ぅ~…剣聖のスキル…。

恐らくだが『天眼』だろう。

効果を見る限り"剣の極限に達したことにより感覚のみで隠蔽状態の相手を察知し、行動の未来予測し先の先を読むことが出来る。この技を発動中はあらゆる飛び道具を含めた物理攻撃にカウンター可能。効果時間は20秒、クールタイムは5分。"

つっよ…。

効果時間とクールタイムはPvPとすればちょっと長いがこの体なら20秒で捕まえることは可能だろう。


"天眼"


目を閉じると額にもう1つの目があるような感覚というのだろうか、視界は真っ暗なのに確かにそこに誰かいるのが『見える』。

例えるならサーモグラフィのような感じと言えばいいのか。

そこには視覚では何もないが、サーモグラフィであれば温度が見えるような。


件の人物は観葉植物の脇に座っている…ように見えた。

天眼の効果時間は短い、今のうちに捕まえるなり追い出すなりするべきだろう。

天眼が切れるまであと15秒、完全隠蔽を併用で使用しながら相手の背後に向けて移動を開始する。

相手の姿が見える訳ではないが私が完全隠蔽で姿を消した時から動揺しているのか、周りを見回して探しているようだ。

肩…と思われる部分を簡単に振りほどけないようぐっと多少力を入れ握る。

何も見えないのに掴んだ感覚はある…『非接触』は使っていないのか。


トントントン…ガチャッ


「アダム様、お待たせしました。」


おじさんが入ってきたが端から見れば私は部屋の隅に立って変なポーズをしている人にしか見えないだろう。


「……従者の方のみですか?アダム様はどちらへ?」


そうでしたね、完全隠蔽中なので見えていないのか。


「部屋の中におるぞ、ちょっとネズミ捕りをしていた。」


「はて…この建物にネズミが出るような不衛生な――!?」


解除すると部屋の隅で変なポーズをする人(自分)が現れた。

右手はさっきからネズミの肩をずっと掴んでいるが時折、手が叩かれたり刺されたり…振りほどこうともがいているのが感じられた。


「…邪魔が入らない場所をお願いしたつもりが部屋にネズミが入っていましてね。今ここに掴んでいるのですがどうしましょうか?」


「そこに…誰か居るのですか?何も見えませんが…?」


「まさに今掴んでいるよ、なぁ…いい加減その隠蔽を解除してくれないかな……話が進まないんだよ。」


少しずつ…ほんの少しずつ指の力を強めていく。

指が肩の骨、皮膚、関節に食い込む。

私の手にはメリ…メリ…という音が聞こえてくる。

余程姿を現すのが嫌なのか、それとも表せない理由があるのか。

そして私の指はある1点を超え、部屋に鈍い音が響いた。


ゴキッ


先ほどとは比にならないぐらい掴んだ体が暴れている。

恐らく骨が砕けたか、肩が外れたか…何れにせよまともな人であれば激痛にのたうちまわるほどだろう。


「えーと、これでも姿を現さないとなれば相当にやましい目的があるか、私に敵意を隠しているとしてここで殺さねばなりませんね。」


右手で不審者の方を掴んだまま左手で脇差を取り出す。

手に当たる感触と動きから私は不審者の右肩を掴んでいる事は想像できた。

それであれば左手に脇差を持ち、けさ切りするだけで相手の体を斜めに両断出来る。

出来ればこの辺で折れて欲しいんだがなぁ…。


「ま、待って頂きたい!」


「……この不審者に心当たりが?」


「恐らく私が雇った冒険者のDという名の者では無いかと…近年では並ぶものの無い隠蔽系の使い手ですので…」


「ほぉ…ではDとやら5秒やろう。その間に姿を出さねば敵意有りとして…切る。」


掴んだ右手から相手が少しだけ力を抜いたことは感じられた。


「ごー」


「よーん」


「さーん」


「にー」


「いー――「降参だ…」


聞こえてきた声は男とも女とも区別出来ない、中性的という意味ではなく合成音声のような機械で加工したような声だった。

隠蔽を解除したのか姿が見えてくる。

赤い仮面に黒いフード着きの外套、そこから見える手足は包帯のようなもので巻かれている。

それも姿を隠したり、音を消したりと隠れることに特化した装備なのだろう。

念のため確認をーと思ったら阻害されているのか装備や経歴は覗けなかった。


その不審者…もといDという冒険者は肩を押さえありえないという感情丸出しで喋りだした。


「あんた…ホントに何もんだ…私の隠蔽を見抜き、捕まえられる奴なんてここ数百…いや相当な間居なかった。それにその筋力も姿を消した技――「D!!いい加減にしろ!」


今度はおじさんが切れたよ。

発端は私かもしれないが忙しい人たちだな。


「契約では力量比べは静かに敵対しない事を条件にと言ったがこれではまるで逆効果だ、それにお前の命だけで終わらない可能性もあったんだぞ!」


「ふん、そっちのアダムさんとやらに私を殺す気は無かっただろうよ。最後まで殺気が無かったからな。」


「え、私は切るつもりでしたよ?」


「「え?」」


「殺気の出し方が分からないというのが本当なのですが、少なくとも敵対する者をそのまま放って置くほど甘くは無いつもりですよ。」


ヘルプで殺気を探すと…どの職でも取得可能なスキルで相手に威圧感を与え、行動を鈍らせる。I~Ⅴとレベル高くなるほど効果が高くⅣ、Ⅴの時には相手とのレベル差により一定確率で即死効果を持つ。

…今は殺気の設定はゼロ…つまりオフになっている。

試しに"殺気Ⅰ"を入れてみる。


「んー…これで殺気出ていますか?」


「出ているね…ピリピリと感じるよ、しかし殺気のオンオフが自在で出さずに殺せるとかどれだけ熟練の暗殺者でも難しい事だぞ…」



ちょっとした遊び心だった。

内緒で殺気のレベルをⅡ、Ⅲと上げてみた。


「えっ…!なん…だ…!?」


「ぐっ…!」


Dと言われた人は仮面の奥からうめき声をだし、おじさんは立っていられないのか脂汗を滲ませつつ地面に片膝を付いている。

これはやばい。


「すまない、ちょっとどれだけのものか殺気のレベルを上げてみたんだ。今解除する。」


殺気が消えたとたんに2人とも大きく呼吸をしている。


「はぁ…はぁ…マジであんな何なんだ…こんな殺気感じたことないぞ…」


「これは…老体には…中々…骨身に沁みますな…」


「私の実験に付き合わせてしまって申し訳ない…これで先ほどの件との相殺にならないかな?」


「ハァハァ……命拾いしたなD…これからは不用意な行動は慎めよ…」


「あぁ…心底身に染みたよ…こんな化物に敵うと思うほど耄碌しちゃいない。」


「それではそろそろお話を始めて貰ってもよろしいですか?あ、お茶もお願いしますね。」


「お菓子もな!!」


まったく話に入ってなかったハチもお菓子の要求だけは欠かさないとは抜け目ない。

こうしてようやく私の置かれた状況と冒険者の情報を収集できるところまで来たという事だ。



なお、ギルドのロビーにて気絶者数名、失禁者多数、訳も分からず逃亡した者多数…という『原因不明』の異常事態が起こっていたことを私は知らない。

多分これを投稿しているころには1万アクセス突破していることでしょう(慢心


いつもながら会話や推測描写が長ったらしい感じですがお付き合いくださいませ。

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