表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
3章 より良い生活を目指して
40/155

【幕間】キルスティンの調査2

私はキルスティン・ギモン。

オースの街にある冒険者ギルドのトップを勤めている。


ちなみに先日籍を入れたばかりの新婚だ。

結婚は人生の墓場と言っていた元冒険者仲間がいたが…私は違うと否定したい。

家に帰れば誰かが待っているというのは何とも暖かいものだ…まぁ妻も同じ職場だからいつも一緒みたいなものだがな。


トントントン…ガチャ…


「支部長、緊急の報告です。さきほど南門から例の人物が冒険者の遺体を運んできたと報告が上がりました。」


報告をしてきたのは秘書兼妻のサリーだ。

いつもであれば少しくらいは軽口を交わすのだが内容の方が非常に重要だ。

何せ例の人物――アダムに関する事だ。


「誰の遺体だ!?」


「オース支部所属、緑ランクのレイナード、アニーズの2名、それとケイド…3人目関しては状況と装備からの推測です。」


「あの3人か…」


それなりの数がいる緑ランクでもある意味印象的な3人だ。

特に最近は怪しい情報に踊らされて冒険者ギルドの禁止事項に抵触しようとしていた節があった。

それはドラゴンの生息地への侵入だ。

特にドラゴンの巣に近づくことは厳禁とされている。

その理由はドラゴンは縄張り意識が非常に強い事、それが産卵期には更に狂暴になる為だ。

下手に巣を突かれて街に被害が出ることを避けることもそうだが何より冒険者自身の身を案じてのことだ。

どんな功績を挙げても、どんな美女と結婚しようとも死んでしまえば何にもならない。

死んで神格化された英雄というのもいないことは無い。

しかし、当人とて死にたくて死んだわけではないだろう。

少なくとも私は冒険者を死なせない為に管理を行っているわけだ。


「で、例の人物は?」


「門番が引き留めたそうですが、その場で姿を消したそうです。」


「そうか……遺体は?」


「既に第2倉庫に移しています。確認されますか?」


「もちろん、私の部下だからな…それに遺族への説明もあるしな。」


私は席を立ち、倉庫へ向かう。

どんな奴であろうとこのオース支部に所属している以上は私の部下であることに変わりはない。

最後を見とれなかったとはいえ弔いは最低限の礼儀だ。





ギルドに建てられた4つの倉庫…それぞれ食糧庫、素材備蓄庫、装備庫、備品倉庫となっている。

その素材備蓄庫に並べられた3つの机に掛けられた白い布。


「左からレイナード、アニーズ、ケイドの順です…確認下さい。」


「分かった。」


白い布を少しだけはだけて顔を晒す。

レイナードとアニーズは確認できた。

体の一部に欠損は見られたが顔は問題なく見れるだけマシという物だ。

最後はケイド…報告を聞く限り本人だと体や顔から特定できる状態ではないという事だ。

覚悟を決め、布を少しだけはだける。

見えたのは黒い肌…いや、肌だったものだ。


「何だこれは…炭化している…のか?」


「門番が聞いた事と状況からの推測ですが…金剛龍のブレスを受けたのではないかと…」


「なるほど…あのドラゴンのブレスならあり得るか…」


やはり禁止事項を行っていたという事…それは置いてもドラゴンだ。

どんな下位であれドラゴンに属するものであればブレスは脅威だ。

下位ならば魔法による耐性向上や盾で防げるものもあるだろうがあくまで下位に限った話だ。

上位になれば幼龍でもその話は通用しなくなる。

そもそも鉄が高温で溶けるように、魔法耐性に限界があるように…防げる力の大きさには決まりがある。

そして上位のドラゴンは例外なくその力は簡単に人知を超える。

その為、ドラゴンの縄張りへの侵入はどの街のギルドでも禁止事項とされている。


「……非常に悲しい事件だ…これを無にしない為にこの事はギルド内に広めてくれ…」


「…死者に鞭打つようなことになりませんか?」


「死者は弔ってそれで終わりだ。しかし、その死は教訓となり他の者の知識となる。」


「…分かりました、事実関係の調査も含めますので数日かかります。」


「構わない。草案が出来たら回してくれ。」


死者に恨まれることになろうとも私は生者の為に尽くすのみだ。

私を恨んでくれて構わない…その恨みが強ければ強いほど生きる者が増えるのだ。

死なせない代償が我が身の恨みなら安いものだ。





3日後、執務室で今回の事件に関する草案を読んでいる所に今度は別の報告が入った。


「支部長…その…来客です…」


「? 来客なのは分かったがいつになく歯切れが悪いな、どうした?」


「その…デリスと名乗る女性です…。」


「デリス…デリス……記憶に合致する知り合いはいないし約束も無かったはずだが…」


外見の特徴はブラウンのショートヘアー、身長は160センチくらいで発育はサリーと同程度らしい。

服装は貴族や豪商のような華麗さは皆無で庶民だろうとの推測。

やはり外見を聞いても思い当たる節は無い。


「……もしかして浮気…ですか?」


は!?

サリーの眼光が光る。


「ままま待ちなさい!あの日からほとんどの時間を一緒に過ごしているのだから浮気も何も無いだろう!?」


「焦っているのが非常に怪しく感じますが…それも事実ですね。」


私が焦ったのは急に浮気という思ってもみない言葉が出てきたからであって事実無根だ。

何より私はそれなりに年を重ねたがそこまで元気なタイプではないし、妻にも充分満足している。

妻の他に女性を囲うなどありえない。


「…私が愛しているのは君だけだよ。」


「まぁ♪」


見つめ合い近づく顔、あぁ妻の香料が香ってくる…これはこの前の休みに街で見つけたものだな。

そして…2人の唇が――



「…人を待たせておいて何をしているのか…。」


ガチャ…とノックなしに扉が開かれる。

人は本当に驚くと「うわっ」や「キャー!」などと言葉には出ない。

ただ硬直あるのみ。


数秒のタイムラグの後に私の頭は思考を開始する。

…何故見ず知らずの人がここまで入ってこれるのだ。

ここはギルドで一番奥に位置する部屋だ、不審な人物が居ればすぐに止められるはず。

当然ロビーは冒険者のたまり場となっており勝手に奥に行こうとすれば受付や冒険者の目に留まる。

仮に冒険者も居なく、受付を目の盗めても…関係者以外の侵入を察知する魔法も仕掛けているが反応も無かった。

つまり、この人物は…


「もしかして…君は"D"か…?」


「そうだ。」


自分が"D"だと名乗ると一通の手紙を投げて寄越す。

蝋付けされた紋章は冒険者ギルドの王都本部のものだ…つまりは身分の証明書。

以前に王都本部に自費で指名の依頼を送っていた結果だろう。


「まさか、無色の"D"が町娘の格好で現れるとは予想外だったよ。」


無色の"D"…数少ない特色ランクの冒険者であり主に斥候や探索、諜報に特価した能力を持っている。

表立ってパーティを組んだりモンスター討伐を行うことが無く、顔、性別、年齢、種族などは不明…王都本部の責任者しか知らないとされる。

また、ギルドの表ざたに出来ない仕事も行っているという噂…これは暗殺では?と言われていた。


「もちろん、この姿も無数にある変装の1つだ…それにしてもここはお茶もでないのか?」


「っ! 今ご用意いたします。」



サリーが礼と共に姿を消すと挨拶変わりに話を始めてくる。


「あんたが嫁を貰った事は知っていたがここまで惚気けているとは予想外だったな。」


「…それは王都への報告書には載せないでくれるとありがたいな…」


「くくっ…報告書には載せないが…会話のネタぐらいにはさせてもらおうか…あぁ、あと警備魔法はもっと分かり難く隠したほうがいいぞ。」


「…忠告感謝する。それで本題に入らせて貰おう。」


まぁ…会話のネタぐらいは構わんだろう。

では、私が調べたアダムに関して話すとしようか…。





お茶を飲みながら約1時間、調査した資料や冒険者から得た調書を見せながらようやく話し終えた。


「……うんうん、確かにこれは頭の固い本部の上層じゃ笑い飛ばすような内容だ。」


「君もそう笑い飛ばすかね?」


「ふん…私は引退したとはいえあんたの過去の実績は評価に値するものだと思っている…それはこの集められた情報の確度の高さからも分かる。」


「特色クラスに褒められるとはチキンや情報屋と揶揄されていた過去も報われるというものだ。」


「…未だに冒険者の中では情報を軽んじる者は多い。その最たるものが本部の上層部だ……これだけの情報が示すものを笑い飛ばすほど腐っているのが現状だな。」


私が現役だった頃とそう大差が無いというのは悲しいことだ。

という事は本部の上層は未だに戦闘能力至上主義という事か…それでも"D"という戦闘より諜報に特化したものが特色ランクに居るというのは特例とはいえ頭の片隅には情報も大事という事があるのだろう。

それを知れただけでもそれなりの手土産になった。


「愚痴が過ぎたな…私はこの依頼を受けるべきだと考えている。」


「おお!」


「本当の事を言うならばこんな一国の国宝と国軍が同時に存在して牙を隠して街中を歩いているような人物にも興味が湧いたし…何より…」


「…何より?」


「奴が使っている隠蔽魔法と私の諜報能力…どちらが上なのか非常に興味がある。」


「……能力比べは構わんが万が一にも敵対行動は取らないで欲しい。」


「分かっている…今更疑うわけでもないがこんな奴が実在して目をつけられたら逃げれる奴などいないだろう…私を除けばな。」


大した自信だ…特色クラスなんて今のところは今のところ5人しか認定されていない。

今目の前にいる"無色"。

金の剣聖、銀の暗殺者、灰の魔導、黒の射手…どれも一癖も二癖もあるが戦闘に関しては鬼才を持つもの達だ。

逆に言えば逃げる・隠れるとなれば"D"の独壇場だろう。


「…無色の能力を疑う訳ではないが、念には念を入れた隠蔽と調査を頼む。」


「分かっている、約1か月はこのオースで独自に動かせて貰うからな。」


「報告の際には……この指輪を受付に見せてくれ。私に連絡が出来るようにしておく。」


「へぇ、オース支部の役員の指輪か…有効に使わせてもらうよ。」




まだアダムはオースに入ってはいない。

だが、オースに入ろうとしていた事や比較的近隣での目撃情報が多い事、今回のオース支部の冒険者に接触が多い事からこの街との関係性が考えられる。

今の段階で街にどう関係しているかは不明だ。


しかし、いずれ会う事は想像に難くない。


アダムよ…お前の目的は何だ。



ちなみに私がオース北部にある村が『アダム村』なる名称を付けた事を知るのはその後のすぐの事だ。

会話パートは一旦終わりー

地味にアクセス、ブックマークが増えており非常にうれしみ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ