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初めての仕事 その3

私はリリアナ。


ただのリリアナです。


苗字?ファーストネーム?


貴族様でもあるまいし、私はただの村娘です。


そして私の人生は間もなくお先真っ暗になるでしょう。


―――――――――――――――――――


古びた、というのもでは言葉が足りないほど廃れた教会。


手入れがほとんどされておらず至る所が埃を被っているし、壊れた長椅子も放置されたまま。


この廃墟同然の建物が村唯一の教会です。


首都から遠い辺境の村には神父もシスターすら居ません。


以前に見たのは3年…4年くらい前でしょうか、ありがたい話をしてくれたと思うのですが一切覚えてません。


だって私もまだ小さかったし、話の意味もちんぷんかんぷんでしたので…。


この教会の現状を見る限り村民の信仰心の深さが感じられますよね。


それでも…こんな教会もどきでも祈らざるを得ません。


他に祈る場所など無いのですから。


「お願いします…神様でも悪魔でも誰でも構いません…」


おとぎ話で聞いた神様、勇者を導く女神様、願いを叶える為に魂を取る悪魔――どちらでも誰でも何でも良いのです。


家族――2人が助かるなら私の命くらい差し出しましょう。


「弟はもう助からないでしょう…母も間もなく…」


母は高熱を出して2日目、日に日に衰弱しまともに食事も取っていない。

水を飲むことすら億劫なようだった。


正直な所、看病とはいっても汗を拭き、水を飲ませるくらい。


もっと深刻なのは弟です。


高熱が出てすでに3日目に入り、特に今朝からは呼びかけても意識が無い。


ハァハァと短い呼吸を繰り返すだけで目が覚める様子も無かった。


「私はどうなっても構いません。差し出せるものは全て差し出します!」


私には流行り病の最初の症状が出始めています。


あと数日で高熱が出てそれからは…1週間と持たないでしょう。


私の先が見えない命で2人が助かれば儲けもの…というよりこんな願いが聞き届けてくれる悪魔でも出てくれれば多少は救われるだろう。


祈りだけで流行り病が治るなら苦労はしない。


世の中に魔法もあれば癒しの奇跡もある。


だが、こんな村には魔法も癒しも使える人は当然居ない。


種族として悪魔族というのも存在しているらしいが当然見たこともない。


そして、どうだ…結果は何も無し。


響いたのは私の空しい決意。この先、弟が死に、母が死に、私もいずれ後を追うだろうという事実。


「もう疲れちゃったなぁ…」


父が流行り病で1か月ほど前に旅立ってしまった。


そのあとを追うように弟と母がが流行り病にかかり、体調を崩した。


よく面倒を見てくれた隣のおじさんや雑貨店のおばちゃん、畑の事を教えてくれたおじいちゃんも

みんな流行り病を発病した途端に冷たくなった。


「病気で死ぬのと自分で死ぬのはどっちが苦しくないのかなぁ…」


教会のまだ無事な椅子に寝転がる。


ただでさえ薄汚れた服が埃でさらに汚くなるが知った事じゃない。




心は体に直結する。



孤立無援で戦っていた少女はもう折れ、家族同様に死を待つだけになっていた。




――――――――――――――――――――――――




"娘よ…"



いけない、寝ちゃってた?


誰もいないはずの教会の中で私以外の…村人でもない聞いたことの無い声がする。


これは夢?


"娘よ。答えよ…我を呼んだのは汝か?"


もう夢でも何でもいい。どうせ私はまもなく死ぬのだから…


「…きっとそうです。神様でも悪魔でも良い、助けて――と祈りましたから…」



"娘よ、目を開けよ"


夢にしてはえらく鮮明に聞こえる。

それに男性とも女性とも―中性的?で透き通った声…


「…目を開けよ。リリアナ」


!!

幻聴じゃない!?

今ははっきりと聞こえた。

それに名前を呼ばれた!?


目を開くと暗い教会の祭壇の前に一人の…男の人?女の人?どっちだろう。

髪がすごく長い人――が立っていた。


少し割れたステンドグラスを通して月の光が入ってきている。


光の中に立ち、この世のものとは思いえない神々しい姿。


少なくとも村の人じゃない。もしかして神様?


「先に名乗って置こう、我が名は……アダム。」


整った顔も長い髪もすごくキレイ…着ている服も見たことが無い…司祭様が来ているような礼服に見えるけどどうも違うみたい。

それと月光の中にいるのに存在そのものが光をまとっているかのように見える。


という事は…少なくとも私なんかが想像できないぐらい凄い人?神様?天使様?


とりあえず失礼が無いように平服しよう。


貴族様が村に来た時みたいに頭を床に着ければいいかな?


「…」


短い沈黙が訪れる。


さすがに許しもないのに声をかけて殺されちゃうのはやだなぁ。


「ごほん…私は貴族や王族ではない。汝の助けを聞きここに降臨した。」


聞いた?私の願いを聞きって言った!!


私の願いは確かに届いていた!


少なくともこの瞬間、私は自分の死というものを忘れた。


「恐れながら…私の家族を助けてください!」


「よかろう、だが我は全知全能ではない…助けることが出来るかどうかは詳しく見てから判断しよう。そして助けることが出来た場合は対価を貰おう。」


このとても綺麗なアダム様は悪魔だったのだろうか。

私一人の命で足りるといいなぁ…。


少しでも見てくれている方がいるようで励みになります。


遅筆、乱文かと思いますがよろしくお付き合いお願いします。

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