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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
3章 より良い生活を目指して
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エミエの契約

毎度の優雅なモーニングコーヒータイム。

爽やかな朝はコーヒーを片手に思案するのに持って来いの時間だ。

…ここ、管理者の間は何も変更しない限りいつも爽やかな青空の訳だがそれは置いておこう。


完成した契約書の最初の使用がまさかのドラゴンだったことは予想外だが、効果に関しては非常に納得のいくものだった。

なんせ人種や亜人種の使用を想定していたがモンスター相手にも効力を発揮するという事が検証できたのだから。


モンスターといえども知能があり、意思があり、心がある。

ファンタジーでも最初は敵として相対していたものが仲間になるというのは王道だ。

これからはモンスターに関しても駆除対象ではなく、場合によっては救済対象と見るのが良いな。


今のところ救済メールはまだ入っていない。

であれば、今日も溜まっている案件の処理日と行こうか。


今のところの案件は…

1、エミエとの契約

2、元奴隷達の引っ越し

3、有能秘書の採用

4、オースの街潜入ミッションインポッシブル


書き出す毎に変わる気がするのは気のせいとして、4は先日の件が大きく関係している。

それはドラゴンからの依頼の件だ。

例えば卵を盗まれたドラゴンが依頼してきました。

そのドラゴンに追われた冒険者が依頼してきました。

という2重になるパターンだ。


基本的には自分の正しさから前者を助けるだろう。

だが、逃げた冒険者が更なる被害者を産むパターンだって予想出来る。

今回は放って置けばオースの街に逃げ込み、街を巻き込んだ対モンスター戦になるかもしれない。

こうなってしまえば私自身は大勢の中から誰を救い、誰を救わないか…

つまりは街の人々を守るために被害者である1を殺すか、原因を作った多を殺すか…という事を明確に示さなければならない。

その為にも街の情報や冒険者の動向など情報収集は欠かせない。


…まぁ、結局は自分の正義感に従って成り行きに任せるだろうけどね。

思案はこれぐらいにして活動を開始しよう。




ログハウスから出ると赤い鱗が特徴的な全高10メートルほどのドラゴン…ハチがえっほえっほと走っている。

余談だがドラゴンも2足歩行で走るときは手を振るんだな…。


"主よ、出かけるのか?"


息が切れているのかわざわざ念話を寄こしてきた。


"あぁ、所用でちょっと出てくる。昼飯は冷蔵庫に入れておいたからチンして食べてくれ"


"うむ、数日中にはスリムになった我を見せてやるから待っておれ!"



なんとこのドラゴン、現代生活にさらっと順応してしまった。

・風呂は良いな、難点は本来の姿で入れない事だが…

・この『チン』というのは便利だな!いつでも熱い飯が食える!(もちろん電子レンジね?

・ボタン1つでお湯が出るというのが素晴らしい!

・何より異界の飯が美味い!

などなど

最後だけは私の管理者権限有りのアイテムボックスに由来するから簡単には真似できないし、この魔法のログハウス(自称)も同様だ。

何処からか電気、ガス、水道etcを引いているおかげで従来の近代的な生活を維持できている。

もしかして私がハチを堕落させた……?


気のせい気のせい!


そして物事は優先度順に処理するのが大切です。

差し迫った順番で行くなら、元奴隷の件、そしてエミエの契約かな。

やはりいつまでも公爵に預けっぱなしというのは気が引けるのだ。


と言っても昨日の今日でアダム村の村長ゲイツに「連れてきたよー」というのも酷だろう。

ならば最初にアダム村…まだ自分の名前が付いた村名というのは違和感がある。

最初に村に言ってこれから連れて来る旨を伝え……ならその時にエミエの件も片付ければいいじゃない。






― ― ― ― ― ― 





いつもの廃教会だが、若干の違和感を覚えた。

以前までは晴れた日は屋根に空いた穴から陽光が射しこんでいたが今はそれが少ない。

壊れた椅子が片付けられており修復の為に手が加えられ始めたことが分かった。


「うんうん、こういう目に見える変化は喜ばしいものだ。」


しかし、同時に問題点も見えてくる。

修復のやり方が甘いのだ。

私とて元はOA機器の営業サラリーマンだから専門的な事は言えない。

それでも、継ぎ接ぎな長椅子に塞いだだけの屋根を見ては"修理"というより"応急処置"という言葉の方が相応しく感じてしまう。


「あまり村長にあれこれ細かい事を言うのも気が引けるし…どうしようか…」


思案しつつ足は村長の家に向けるのだった。



まだ日は高く、昼までは間がある。

村長は畑に出ているだろうし、直接お邪魔させて貰おう。

…私を見つけた村民が相変わらず拝んでくるがスルーしておこう。


トントントンとノックすると中から「は~い」と間延びした声は聞こえる。

この声は奥さんだな。


「あらまぁ、アダム様ようこそおいで下さいました。夫は今、畑に出向いていますが…お呼びしましょうか?」


「いえ、今日はエミエさんに用事があって来ました…中に?」


「はいはい、どうぞ中でお待ちください。今呼んできますので…」


パタパタと駆けていく奥さん。

まるでおさかな加えたドラ猫を追いかけるようなゆっくりと、ただほんの少し駆け足のような微笑ましさ。

奥さんだけ呼びに行かせて自分は何もしないというほどお高く留まっているつもりは無い。

お茶とお菓子をテーブルに並べて会話の段取りを整えておく。

ほんとアイテムボックスに何でもあって助かるわぁ~。


お茶に選んだのはPMの紅茶、こっちの世界で紅茶のようなお茶を公爵に頂いたことからきっと無難だろうという判断。

お菓子は…何が好まれるかわからなかったのでお徳用詰め合わせパックだ。

受け皿にがさがさと流していると奥からエミエと奥さんが現れた。


「勝手ながらお茶を用意しました、よければどうぞ。」


「あらまぁ、見たことのないお茶にお菓子ね、ご相伴に預かりますね。」


「私も…頂きます。」


お菓子を頬張り、お茶で口を潤す。

「美味しいわ~」と顔が綻んでいることから結果は上々といえるだろう。

エミエもハムスターのように無言でお菓子をポリポリと啄んでいる。

私たちはしばしの談笑を楽しんだ。




「エミエさん、これをどうぞ。」


私は未記入の『約定のスクロール』を提示した。

この前作成した『沈黙の』を使わない事が意味することは…


「…自分は自分で縛れ…と言いたいのですか?」


「えぇ、試すようで悪いですが貴女の覚悟を見せてもらおうかと思いまして。」


つまりは彼女がどれだけ自分に重い枷を嵌めるかという事だ。

村長が出した「村を守る」というのもいい例だろう。

黒幕に誘導されたとはいえ、彼女はこの村を襲った張本人であることに変わりはない。

村に溶け込むためには「自分は無害である」という証明が必要になるが信用は1日にして成らず。

手っ取り早く済ますには枷を嵌め、絶対に村民に手が出せません、と第3者に証明してもらう…それが白紙のスクロールの役割となる。

それが人道的にどうなのか…というのはまた別問題だ。


「分かりました。」


エミエは既に意思を決めていたのか、さらさらと文章をしたためていく。



"私、エミエ・ラヴレはアダム様を唯一の主とし、生涯に渡り忠誠を尽くします。

そして自身への戒めとして以下の項目を掲げます。


1つ、アダム様の庇護下にある者を力ある限り守ります。

1つ、ゴーレムに関する全てはアダム様の為に使用します。

1つ、日々の祈りを欠かさず、信仰を捧げます。


これらを守れなければ、私は『石化』の魔法に掛かることを了承します。"



「…このような内容では如何でしょうか?」


「良いも悪いもありません。これは貴女の覚悟の証です。」


スクロールに『石化』を込め、あとは彼女のサインを待つだけだが、彼女は一切躊躇することなくサインした。

エミエの体とスクロールがぼや~っと光り、契約が結ばれた。


「…おめでとう、エミエさん。これであなたは晴れて村の一員となれました。」


「ありがとうございます!それではゴーレムを作っても良いのですね!?」


「あ、あぁ…そういう約束だったね…」


アイテムボックスから以前見せた魔力結晶(大)を取り出すと目にもとまらぬ速さで奪い取られ、脱兎のごとく部屋に持ち帰った。

イヤッホーゥ!ゴレちゃんの復活だぁ~~~…とドップラー効果を残しながら消えていく様はまるで新作のゲームを買った子供のようだ…。


「ゴーレムへの熱意は分かっていたがこれほどとは…あ、奥さん。このエミエのスクロールは村長さんに預かって頂けませんか?」


「分かりました、責任をもって夫に渡しておきますね。」


スクロールをくるくると丸めて、あの卒業証書とかをいれる入れ物…ポンってやると気持ちのいいアレに入れて奥さんに手渡す。


「それと、伝言もお願いします。"今日の夕方にでも移民を連れてきますので家を建てる場所を用意下さい"と。」


「はい、移民を連れて来るから家を建てる場所…ですね。確かに。」


「お茶とお菓子は置いていきます、残りは皆さんでどうぞ。」


「あらあらまぁ」と破顔させてたので良かった良かった。





「アダム様!」


村長宅を後に…しようとしたらリリアナに捕まってしまった。


「な、何かな?」


いつもよりちょっと強めな剣幕に少々威圧されてしまう。

王都で戦ったグレーターデーモンより11歳ほどの少女の方がよほど怖い…。


「アダム様がお忙しいのはまだ子供の私にだって理解は出来ます。」


「…はい。」


何故に私はこの少女に頭を上げるような姿勢になっているのだろうか…


「ですから、アダム様がうちにお昼を食べに来れなかったことも仕方ないと思っています。」


ずずいっとリリアナが眼前に迫る。


「ですが! アダム様の代わりはゲントでは務まりません…ええ!務まりませんとも!」


キューピッド作戦は失敗に終わったらしい。

この剣幕から察するに食事会もきっとお通夜状態だったのでは無いだろうか。


「それはすまなかった、今度は時間が出来たときは私から伝えよう…それでいいか?」


「はい、お待ちしてますね♪」


泣いたカラスがなんとやら。


…すまないゲント君、あとで何かしら埋め合わせはしよう。

会話がメインで進展がががが…

もうちょっと捻った内容を考えれる頭が欲しい。

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