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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
3章 より良い生活を目指して
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変わった依頼

脇役視点が8割です。

「ハァ……ハァ……」


もうあそこから離れて5日目だ、街までは急いでもまだ3日以上掛かるだろう。

隠れながらであればもっと長く見なければならないが食料は予定していた日数を超えたためほとんど残っていない、だがここで諦めては全てが水の泡だ。


仲間2人と大金をつぎ込み手に入れた隠蔽効果がコレでもかと込められた魔法装備…それらを掛けて手に入れたものは金剛龍と呼ばれるドラゴンの卵。

大きさは人の頭より大きいぐらいの金剛石…ダイヤモンドの塊だ。

宝石としての価値も去ることながらドラゴンの生まれるための生命力も込められている事で魔法触媒としても超一級品。

この卵1つで一財産どころではない。

国によっては召し抱えて爵位まで貰えて死ぬまで遊んで暮らせる。

つまりはそれだけの価値ゆえの危険さ…俺自身の資財とかけがえのない仲間2人の命で卵を抱えながら逃げてこれたのは賞賛されるべきだ。


…その称賛も街に生きて帰れたら…な。


街に入りさえすれば卵から溢れ出る生命力を隠す術もあるし、手強いと言えどもドラゴンを迎え撃つ防壁もある。

この森のなかでは準備していた隠蔽装備しかない…今の装備ではこれほどの生命力を隠しきれない。

いずれ見つかりドラゴンに殺されるだろう。

オースの順回路から遠く離れた山岳では冒険者との遭遇も期待できない。


「悪いケイド、アニーズ…別れてから2日ほどだが…会うのはそう遠くないかもしれない…。」


冒険者と言うものは自分の体、知識、経験…つまりは自分に関わるものが全てだ。

多少の運は有るだろうがつまり教会の連中みたいに神に祈ったりはしない。

都合が良すぎるとは思う。

窮地に陥った、今のような状況だけ神に祈るなど。





たまには祈ってみるものだ……。

目の前に突如として人が現れたのだ。

こんな人里離れた森のなかには不釣り合いな純白の礼服…のような服装に光がほとんど差し込まないのに輝きを放つ銀髪。

どうみても冒険者ではないし、仮に教会のお偉方であれば尚更こんな場所にいるものか。


「おお…神よ…」


体が自然と跪くき、頭を垂れる。

これでもそれなりの年齢と経験を重ねた俺だ、簡単に頭を下げるなど相応の事がなければするわけがない。

体が自然と…ということは本能は相手の力量を既にわかっているということだ。


「…汝は救いを求めるか?」


ははっ...ダメもとの祈りが本当に届いていたらしい。


「貴方は…?」


「我はアダム、生ける者の救済者也。」


支配者然とした言葉…仕事を受けた貴族も似たようなしゃべり方をしていたが重みがまるで違う。

あちらは家柄や財産で着ている言わば上っ面、この方の滲み出るような気迫…オーラとでも言えばいいのか、逆らう事すら馬鹿馬鹿しく思えてくる。

従者と思える小柄な人物すらどれだけの実力を持っているのか測れない。


「俺を...助けてくれる…んですか?」


「契約を満たすのであれば対象になりえるだろう。」


「契約…?」


そう言って1枚の紙を差し出してきた、見た目はただの誓約書のようだが…これは魔法のスクロールだ。

魔法が使えない前衛職にとっては手軽に魔法を使える数少ない手段の1つだ。

手軽にと言っても効果によって価値は銀貨1枚程度から金貨に至るまで様々…渡されたスクロースの効果は『沈黙』だがそれだけなら銀貨数枚程度。

気になったのはスクロールの質…いつも使うのは羊皮紙に効果が込められた初級から中級クラスのものだがこれは上級かそれ以上の質であり、つまりはそれだけの強制力も秘めているというわけだ。

これだけのスクロールを使いながら効果は『沈黙』のみということに違和感は覚えるけれども内容は祈るだけだ…これで命が助かるなら安いものだ。


「内容は…分かった、契約するので助けて下さい…」


「よかろう、契約書にサインか血判をするが良い。」


身近に書くものなど無いのでナイフで親指をちょいと切り、血判を押す。

スクロールと自分の体が光り、契約が結ばれたことが分かる。


「契約はここに成った。汝を――」


言葉は紡がれなかった。

理由はすぐに分かる。


上空に羽ばたく光の塊…直視できない程のまばゆさを持ったドラゴン、金剛龍に見つかった。

太陽を乱反射させる透明な翼に背中に生えた金剛石の棘、角と顎が一本の突撃槍のように尖った頭…間違いない、卵を守っていた親だ。


キアァァァァァァァ!!


咆哮が腹に響く、正直ちょっと漏れた。


「あ…あ…見つかっちまった…」


「…従者よ、ちょっと遠くに離してくれ。」


「少々お待ちを…」


小柄な人物が空に浮く。

おいおいおい…飛行魔法が使えるってことは相当な力量の持ち主だぞ。

それに怒れるドラゴンの前に身を晒すってどんなことか分かってるんだろうな、何にせよ無事じゃすまないぞ…。


「ドラゴンは従者に任せるとして…契約を結んだとはいえ我は自身の『正義』を重んじる。その為、貴方のことを聞かせてもらおうか。」


「いや、あんた落ち着きすぎだろ!あいつ殺されるぞ!?」


従者がドラゴンに殺されるとはこれっぽっちとは思っていないのか、はたまた底抜けの阿呆なのか。


「無用な心配だ、アイツを殺せるものが居たら是非雇いたいものだ…それに見ろ、ドラゴンはどこに行った?」


見上げるとドラゴンの姿は見えず、先程までの威圧感を感じず咆哮は聞こえない。

会話している間にどっかに連れて行ったのか?


「なんだよ…本当に神様か何かかよ…」


俺はずっと追われていたことから解放された反動か、腰が砕けもう立っていられなかった。


「改めて、話を聞かせてもらおうか?」






俺は可能な限り話せることは全て話した。

冒険者になって20年、何とか緑ランクまでは登ったがもうこの先には行けないこと。

ぽっと出の新人に1年足らずで同ランクに上がられたこと。

もう引退を視野に入れ儲け話や引退後の稼ぎを探していたこと。

そんな中で仲間が金剛龍の卵の話をどこからか仕入れてきたこと。

金剛龍の卵が手に入れば今までの冒険者生活の稼ぎの十数倍が一気に手に入ること。

もちろんそんな簡単な事ではなく準備に貯めていた資金をほぼ全てつぎ込んだこと。

順調だったのは巣に着くまで…巣に入ると当然、親が卵を守っていたこと。

1人が親龍の注意を引いて、俺が回収してそのまま逃げる手はずだったが…囮役はそのまま殺されたこと。

逃げている最中にもう1人も犠牲になったこと。


そして、今俺が1人でここまで逃げてきていたこと…。


「…状況は理解した。そして嘘も今のところは無いのも確認できた。」


確かに嘘は言っていないがそれをどう判断出来るのだろうか、そんな魔法は記憶に無いが…


「そこで汝に提案がある…その卵を親に返す気はあるか?」


「馬鹿を言うな!これは今までの人生と仲間2人の命を掛けた結果だぞ! はい、分かりましたと返せるか!」


つい感情的になってしまった。

冒険者になってからずっとパーティを組んでいたケイドとアニーズ…20年来の仲間を失って成果無しで生きていたらそれこそ笑いものだ。

そこまでして生き残って自分だけが優雅な余生を送るのも忍びないとは思う。

しかし、あいつらの死を犬死で終わらせるほうがもっと耐えられない。


「今卵を返すなら貴様の命までは奪わない…と向こうは言っているぞ?」


こいつは今なんと言った?

返すなら俺の命までは奪わない?

向こうが言っている?


「モンスターと会話できるなんて世迷言も良いとこだ!」


「……多少なりとも人語を解せるゴブリンやオークと会話が出来ないと?」


「人語を話せる事と意思を交わすことは別だろうが!」


「では人語を解せなくても意思疎通は可能だとは思わないのか?」


「確かに強いモンスターの中には高度な知能を持つ奴は多い…だがいくら知能が高くとも言葉が解せなければそれは不可能な話だ。」


「それは汝らには不可能、という話だろう。我を『人』の範疇に収めるな。」


従者の実力すら不明な段階ではあるが、この…人?は少なくとも金剛龍を物ともしない従者を従える身ということは…?

少なくとも…考えたくは無いが金剛龍よりも上という人を超えた領域にいると仮定しておこう。


「…あんたなら金剛龍と意思疎通できると?」


「正確には私ではなく、従者が意思疎通して私に伝えてくれている。」


「マジかよ…」


意図せずつぶ呟きが声に出てしまった。


「我は別に冒険者という職業を貶す為に来たわけではないが、少し自分の行いを顧みてはどうだ……子供を攫われた親はどんな感情を抱く?」


子供が攫われたのなら助けを求めるだろう。

街の衛士や自警団…場合によっては冒険者ギルドに依頼を出すなど差異はあれども子供を救おうとする親がほとんどだろう。

つまり、こいつはこう言いたいのだろう。


『お前は子供を攫った』と…。


だが俺は冒険者だ、そしてモンスターは敵、害獣と同じだ。

敵の子供を攫って何が悪いのか。

ドラゴンが増えればそれだけ森が荒れ、被害は回りまわって人の住む街にも影響を及ぼす。


「納得していない、という顔だな。」


「当たり前だ…モンスターに意思があるとしてもそれを気に掛ける冒険者はいねぇよ…」


「そうか…残念だ。」


目の前からアダムと名乗っていた人が消えた。


「卵は返してもらったよ。」


いや、消えたのではない…恐ろしいほどのスピードで背後に回られたのだ。

腰からは卵を入れた消えていた事からかすめ取られた…人の領域にある技じゃない。


「かっ…!」


「『返せ』などと筋違いな事は言うなよ、お前は盗人でこの卵の本来の持ち主…いや親はあの龍だ。」


「じゃあ俺はこのまま仲間を殺されたまま生き恥を晒して街に帰れって言うのか!?」


「そうだな、だからあの龍は『卵さえ返してくれれば貴様は殺さない』と言ったのだ。余程、モンスターのほうが道理を知っているな。」


「ぐっ…!!」


ここまでコケにされてはもう黙っていられない。

相手がどれだけ強くても譲れない物というのは誰だってあるもんだ。

短剣を2本引き抜き、1本は逆手に持ち構える。

腰に卵が無くったことで動きに制限は無い。


「……これが最後の警告だ。剣を収めて街へ帰れ、そうすれば命は助かる。」


「へっ、仲間も死に、資財も使い果たした…もう卵を持って帰るくらいしか未練はねぇ…よっ!!!」


相手は構えてもいないし、どれだけ早くても身のこなしは素人同然。

距離にして2歩半、この距離での奇襲は避けられない!

左手の短剣を投げつけ……短剣を避けない!?

真っ白い服に短剣が突き立――立たない。刺さらない!

残った右の短剣を相手に向け―――ゴォッ


俺の意識は風の音を聞き、そこで途切れた。






― ― ― ― ― ― 





私の目の前には血に塗れた男が1人…名前は聞かなかったがレイナードという冒険者だった人。

金剛龍の鋭い角に胸を貫かれている。

血に濡れたダイヤモンドの角が光を乱反射し、不謹慎だがルビーのようだと思わず感嘆してしまった。


「"襲われていたので見かねて突き刺してしまった"だそうだ。」


「君の手を汚させてしまったな…すまない。」


「"害虫を潰しただけ、気にしないでほしい"だろうだ。」


私は袋から金剛龍の卵を取り出し、親龍に渡す。

渡すといっても受け取る手があるわけではないので口の中に置いてあげる。


「"助かりました、アダム様 契約は果たします"だそうだ…」


「よろしく頼む、それと…その男の仲間の死体がどこかにあると思うが分かるか?」


「"1体は私の巣に、1体は麓に…案内します。乗ってください"だそうだ。」




― ― ― ― ― ― 




それから私はレイナードと2つの死体を抱えオースの街に向かった。

アダムのノーマルな姿がバレるといけないので剣神・建御雷神一式を着こみ荷車を引いて門番に話をする。


「金剛龍に殺されたと思われる冒険者を回収してきた、この街のギルドに所属しているはず。引き取りを頼む。」


「分かった、冒険者の身柄はこちらで引き受けるが…規則でな、貴殿の名前やこの者達との関係を記録させて欲しい。」


冒険者の遺体が運び込まれることはしばしばあるのか、門番は手慣れた対応だ。

しかし、ここでアダムの名前を出したり関係を怪しまれて時間を取られるのは不味い。


「私は旅の者、金剛龍が住むという山の近辺で襲われている所を目撃しただけだ…大方、卵でも盗もうとして殺されたのではないか?」


「…確かにこの胸に空いた大穴、こっちは焼け焦げて炭化…こっちは…半身が……」


すまない、ちょっと席を外す…と門番が1人居なくなる。

正直な所グロいなんてもんじゃない。

今は耐性のおかげかどうとも思わないが、まともな神経なら吐きたくもなるだろう。


「…私の無実が証明されたのならこれにて失礼する。」


「あっ、ちょっと待って!」


静止を振り切り、透明化や各種隠蔽系魔法を使用し姿を隠す。


これにて『ドラゴンからの救助依頼』は果たした…冒険者が犠牲になったが、説得の仕方か対応か…いずれにせよ反省点だ。

もう少し上手く立ち回れていたら生かすことが出来たのだろうか…。


だが、生きているだけの人生に価値はあるのだろうか。

仲間に先立たれ、自暴自棄気味に卵に固執した冒険者…レイナードの言葉が少しだけ心に残る。

ハチ「我の役目これだけ!?少ないぞ!!」


あ、いつもよりちょっとだけ…ほんのちょっとだけ捻った内容です。

面白いと思ってもらえれば幸いです。

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