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初めての仕事 その2

目を開けるとそこには広がる青空。


周囲を見渡すと空と地面の境界線が見える。


円径土台の中心に椅子がありそこに座っているようだ。


イメージするならドラゴ〇ボールZの神様の神殿のようなものだろう。


ダイブ型というのは凄い。知識と実感では確かに違う。

これはゲームだというのにリアルに感じる。


風が頬を撫でてゆく。太陽のまぶしさも感じる。


自分の手に視線を移す。


にぎにぎ…。


何だこれすげぇ、思った通りに動く。語彙が死亡するほどの衝撃だ。


手の甲をつねってみる。


すげぇちゃんと痛い。語彙死亡2回目。


「具合はどうだい?」


後ろから社長の声がする。


振り向くと光の玉がふよふよと浮かんでいた。


「話には聞いていましたがダイブ型というのは凄いですね、まるで『現実』のようです。」


「そうだろ、そうだろう!ウチの自慢さ!」


社長も鼻高々といった感じだ。


「まずは初回だからボクがサポートとして付くよ。あと知識としてインストールしているが念のために解説をしよう。」


――――――――――――――――――――



ダイブ型MMORPGアナザーアース


近年発達してきたダイブ型…五感使用型のオンラインゲーム。


よくある中世風の世界観に剣と魔法のダークファンタジー。


勇者や魔王、人間や亜人、モンスター等が入り乱れて存在する世界。


何よりの特徴がNPCが個々にAIによって疑似人格を持ち暮らしている事が最大のウリだ。


どこぞの勇者のように強盗紛いの家捜しは出来ない。


NPCを殺したり害したり犯罪者となりまともなプレイは出来なくなる。


逆にNPCと仲良くなれば好意を寄せて結婚も可能だが今はまだ未実装。


――――――――――――――――――――


「ここまではOK?」


「はい、加えて私はゲームマスター…――神の半身としてこの世界を管理する…という設定ですね。」


「よしよし、それでは次に行こう。そこにターミナルがあるだろう?」


(指が無いのに)指さされたほうを見ると神殿という場所には場違いな机とノートPCが置いてある。


「これ、もう少し世界観に合わせた見た目には…」


「あははは…ちょっと実装を焦っていてね。どうせ管理者しか入れない区域だからいいかなーって。」


なんとも杜撰というか大ざっぱというか。


「さぁ!見た目はともかくターミナルを起動してくれ。」


椅子から立ち上がり、デスクへ向かう。


何を意識したわけでも無く『日常の動作』がそのまま再現できる。


デスクに座り、PCを起動させる。


どこからどう見てもwind〇wsです。本当に…


「では、君の基本業務を説明しよう!」


要約すると以下のようになる。


1、住民はAIと思わず『人格を持った知的生命』として接して欲しい

2、住民から助けがメールソフトを通じて届く

2、住民の元に出向き、詳しい要望を聞く

3、内容を精査し『助けても良いし助けなくても良い』

4、助けない場合も別段、罰則は無し

5、助けた場合には"神像"をプレゼントし、祈りを捧げて貰う

6、メールが来ない場合は自由にプレイして良い


大まかにこのような感じ。


「少し質問させてください。『助けなくても良い』んですか?」


「やっぱり気になるよね、質問に質問で返すのはよろしくないが少し考えてくれ。ずっと助けて貰えると知った人は努力するだろうか。

困ったら助けてもらえば良いや…と考える人が出てくるのは目に見えるだろう。もちろん全ての人がそうで無いことは知っている。

しかし、人…この世界では人間種に限らないが誰でも堕落するのだ。最悪のパターンとしてGMの力を悪用しようと考える奴が出てもおかしくない。」


「…」


なるほど、と思った。

人格を持った知的生命として接するという事はいうなれば、相手も思考するという事だ。

仮に「戦争に負けそうだ!助けて!」と来ても元をたどれば自分からの侵略が元だったり、酷すぎる内政によるクーデターもあり得るだろう。


なんと自由な世界なのか。


「理解して貰えたかな?」


「すみません、もう一つだけ…なぜ今日面接をしただけの私なのでしょうか。」


「君が自らの正しさで行動できる人だから。人間は不完全な存在だ。人によって、立場によって『正義』と『悪』は容易に入れ替わる。

ボクが作った世界に欲しいのは『自分の正しさ』で動ける人だ。」


「それによって偏った管理になったとしても…でしょうか」


「うん、実験だとでも思ってくれれば良い、とりあえず1週間試してみてよ。きっと君は断らないと思うよ。」


「…善処します。」


社長が何をもって私を『自分の正しさ』で動ける人と見たのかは分からない…が仕事は仕事。

今できることをこなすべし!


『ユーガッメール』


まるでタイミングを見計らったかのようにメールが入る。


「ちょうど初仕事が舞い込んだね…といっても助けないことも考えられるから初仕事になるかどうかは君次第だね」


大まかな内容が記載されている。


件名:救急

内容:救助対象の回復


私の初仕事は――とある村の娘からだった。

こんなつたないチラ裏を読んでいただきありがとうございます。


初めて感想とブックマーク頂きました。

この場を使いお礼申し上げます。

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