元奴隷の家と心地よい?睡眠
公爵邸に奴隷を連れ、今度は正面より堂々とお邪魔する。
門番を通じて「公爵に至急話があると伝えなさい。無理な場合は執事でも構いません。」と使いを出す事も忘れない。
やはり上に立つ人たちの姿は勉強になる…自分も上から目線で話すのが基本になりつつあるので今後もちょくちょくお話させて貰おう。
「お待たせしましたイヴ様、旦那様はお休みになってられるため私が聞かせて頂きます。」
「そうですか、昨日からの事を考えれば仕方ありませんね…貴方も疲れているところ悪いのだけれど少し付き合ってくださいな」
「お心遣い痛み入ります…ですが我々などに遠慮なされませぬよう」
「わかりました。さっそくですが、公爵家の土地を少々貸して頂きたいのです。」
「どれほどの範囲をご所望ですか?」
「そうですね、家が1軒建つぐらいが望ましいですが…裏庭を見せて頂いても?」
「承知致しました。どうぞ、こちらに…」
執事に促されるまま邸宅の脇を通り、樹木の小道を抜けた先は開けた野原と言って良いほどの土地だった。
邸宅の背後は城壁の一部になっており左右の貴族邸とは柵と植えられた木々によって遮られ程よいプライベートな空間に仕上がっている。
大きさを適度に表すには郊外のスーパーの駐車場…とでもしておこう、端には簡素ではあるが池があり、観賞用の魚が泳いでいる。
「こちらはお子様方の運動の場として用意されていたのですが、お嬢様はもう外で活発に…という御年でも御座いませんので事実上使っていない土地になっております。」
「大きさは充分、周りからの視界も遮られている…理想的な環境です。」
「お褒め頂き光栄の至り…」
「ではここを借りても?」
「お好きにお使い下さい。旦那様には私の方から後程報告を致します。」
「よろしく伝えてください。」
「ああ、それとメイドを2、3人お借りしたいのですが都合付きますか?」
「問題なく…アイン、ツヴィー、ドリィ。」
執事が名前を呼ぶとさっと3人のメイドが並んだ。
「アインです…」若干灰色掛かったショートカットの大人しそうな娘、おおよそ15歳?
「ツヴィーです。」セミロングの黒髪に3人の中では一番背が高い…高校生か、もうちょい上な感じ。
「ドリィです!」目に眩しい金髪のポニーテール、活発な印象を受けるこれは17くらいかな。
「この3人をイヴ様専属と致します。ご自由にお使いください。」
「ありがとう、遠慮なくお借りしますね。」
「「「よろしくお願い致します。(!)(…)」」」
では奴隷達の家を出そうか。
種族が違う6人でしかも男女混合…最初に出したログハウスのような大きな1室ではまずいだろう。
条件としては風呂・電気・水道は当たり前で個室が種族毎としても4部屋以上…。
合致するのは5LDKのコテージ(大)だ。
奴隷達もメイドたちも指示待ちなのか手持無沙汰な感じで待っている。
ハチは日の当たっている所でごろごろと寝転んでいる…自由なドラゴン様めぇ…
「公爵から借りたこの敷地内に君たちの家を建てようと思う。少しの間ではあるがそこで暮らしてほしい。」
「はいッ質問です!」と元気な声を出したのはドリィ。
「今からここに建てるのですか?短期間であれば使用人用の部屋を使えば済むと思うのですが…」
「答えは『そっちのほうが簡単』だから…です。」
その言葉と同時にアイテムボックスよりコテージ(大)を選択し、池に被らないように配置を決めて…設置。
丁度転移のエフェクトと似たような青い光が射したと思えばそこに木造のコテージが現れる。
周りの樹木とあまり手入れが行き届いていない野原と池…なかなか良い光景じゃないか。
「はい終了。みんな入りなさい。」
「「え?」」
「「は?」」
「「…!?」」
疑問と驚愕といった所だろうか。
皆を促しコテージの中へ入ると玄関からすぐに広めのリビングと奥にキッチンがあり、さらにその奥に個室だろうと思われるドアが並んでいる。
リビングには簡易な照明やテーブル、ソファーなどが並んでおり、キャンプ場のコテージを彷彿とされる。
…いつまで経っても椅子やソファーに誰も座らないものだから命令して座らせた。
「メイドの3人には奴隷…いや、もう奴隷では無いからなんと呼ぼうか…」
「しもべか下僕とでもお呼び頂ければ…」
例の黒猫亜人っぽいのが案を出してくるが下僕にしたつもりは無いよ?
「…この者らの世話を頼みたい。家の中の使い方を説明しますのでよく聞いて下さい。」
さすが公爵家のメイドだ。
冷蔵庫やらガス、水道、電気…風呂やシャワーの説明をさっと一度しただけで把握出来ていた。
メイド曰く「これ、大きさはともかく公爵様の設備より高度で小型です…」とのこと。
もしかしたら魔法を使った冷蔵庫やコンロなどあるのかもしれない。
種族毎に1室を与え残った部屋はメイドたちで使ってくれと指示した際には小躍りしていた。
「予定では2週間から1か月…おほん、30日くらいまでの間にこの者らの処遇を決め、迎えに来ますのでそれまでお願いします。」
「「「畏まりました。」」」
そうだ、公爵に土地とメイドと後は食費などの費用を送らねば…
「それと執事さんを呼んで頂ける?」
「畏まりました、直ちに…。」
アインがポケットから呼び鈴を出し、チリンと鳴らす。
このコテージで鳴らしても聞こえないだろう…
と思っていたがそうでもないようだ…魔法の呼び鈴?
コテージのドアがノックされ「失礼します…」と執事さんが入ってきた。
「いやはや…一瞬で家が建つなど、昨夜から驚かされてばかりです…失礼しました。ご用件を伺います。」
「公爵に土地やメイド達、あとはこの者らの食費として幾何かの金品か相応の物を送ろうと思うのだが正直な話、何が喜ばれるか分からないので相談に乗って欲しい。」
「お気になさらずとも宜しいと思われますが…」
「こちらにも面子というものがあります。それに世の中には只より高いものは無いという言葉もあります。」
「その言葉は初めて伺いましたが…なるほど、一考させられる言葉ですね。贈り物の件は…そうですね…。」
腕を組み、髭を擦る。
ナイルミドルがやると中々様になる…これはイケオジにハマる女性がいるも分かる気がする。
将来的にはこんな『出来るおじさん』を目指したい。
「旦那様は今回の事でご家族の身を守るという事にご執心されるかと…であれば魔法効果の付いた装備などは如何でしょうか。」
「なるほど…やはり聞いてよかった。ありがとう、参考になったよ。」
「お役に立てて光栄でござます。」
身を守ると一言で言っても守り方は千差万別だ。
ありったけの鎧を着こみ物理的に防御を高めるのか、魔法効果に対する耐性を付けるのか、『障壁の指輪』のように敵意を持った攻撃を遮断するのか…そもそも戦わずに逃げるのか。
今回の案件に当てはめるなら貴族令嬢に鎧を着こめと言っても無理な話だ。
魔法効果を高めても集団に囲まれれば対応は不可…指輪も同等。
であれば、危険な時に逃げる…選択肢としてはこれに決まりだろう。
仮に逃げて、従者はどうするのかと言えば見捨てると思うがこれを非難するのは別の話だ。
贈り物としては『転移』や『完全隠蔽』のような逃げるためのアクセサリーを探そう。
思考していて気づかなかったが元奴隷、メイドが微動だにせず私を見ている。
もしかして…
「…メイド達、まず皆を順番に風呂へ、そして清潔な服と食事を。元奴隷達はメイドに従いまずは生活に慣れ、英気を養いなさい。」
「「「はいっ」」」
メイドは手分けして風呂、衣服、食事と行動を開始した。
もしかしてこれからも指示しなきゃいけない?
これは私の意をくんで動ける人が欲しいなぁ…課長とか係長みたいな地位の…思えばあの課長も上司と部下の板挟みで私にあんな仕打ちをした…?
いや、それはないな。
断言できる。
何にせよ、この者たちを放っては置けないが管理者の間に連れて行くのは憚られる…。
…これも秘儀を使うしかないなー。
「では、また来ます。」と言い残しハチと管理者の間に帰ってくる。
時間的には丸々12時間の活動だ。
疲労はしないがやはり精神的に堪えるものはある。
ヴァルキリー装備を解除し、ベッドにダイブする。
「主よ、いや父さん?」
その設定そういや有ったね…地方の街に行くはずが最初に王都に入ることになり急遽違う演じ方をしていたせいで失念していた。
「報酬のお菓子はまだか?まだか!?」
この腹ペコドラゴンめ…パーティ用の詰め合わせやポテチの特大でも食ってろと、どさどさと出す。
目を光らせさっそく手を伸ばしている。
そうだ、こんな時こそ寝れるか試してみれば良いじゃないか。
さっそく設定から『耐性解除』を解除して…ポチっとな。
途端に凄まじい疲労感と眠気に襲われる。
「うおっ…ハチ、私は少しの間寝る…から、頼……む…」
私の意識はベッドの柔らかさを感じつつ闇に落ちる。
「うむ、分かったぞ」バリボリバリボリ
能天気な声とお菓子をかみ砕く音は聞こえない。
当初の目標であった総合評価が100ポイント超えました!
ブックマークに評価、ありがとうございます。
次で一応、2部のメインが完結になります。
今後ともお付き合い頂ければと思います。




