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締まらない

「うははははは、罰と来たか!まさか本当に正義の味方とは恐れ入ったぜ」


 これも定番の流れだ。

 あれこれあって5分もしないうちに彼らの態度は一変する。


「もうそろそろいいでしょうか?」


「…すみませんでした。罪を償わせて下さい……もう許してください…」


「「「抵抗してすみませんでした」」」


「最初からそう言ってくれれば私も楽なんですがね」


 何をしたかは口外しないが、私もこの2年程はこういう荒事が大半を占めるようになった。

 私も戦いの場であれこれと実験をして"手加減"が上手くなった、ということにして欲しい。

 傍から見ると猟奇的とか常軌を逸した風に取られるが…自らこそ強者!俺がルール!って連中はある程度痛い目を見ないと素直に罪の意識を感じてくれないのだ。

 大人しく罪を償う方が苦痛を感じなくて楽なのにね、双方にとっても。


「そしてっと……もしもし?」


『はい、こちら冒険者ギルド本部アダム様対応室でございます』


「あ、私です。救護と捕縛をお願いします。場所は―――」


 これも変化というか最適化の一つだろう。

 なるべく直接的なやり取りは控えたが、どうしても人手が必要な時というのは出てしまう。

 特にこういった救助の際に無法者+救護対象…それが子供の場合だ。

 ある程度に年齢を重ねているか、大人であれば自らの足で帰ったり、そのまま復讐したりと選択肢もあるが子供だとどうしてもそれが狭められてしまう。

 そんな時に痒いところに手が届く冒険者ギルドだ。

 個々の戦力はそれほどでなくとも幅の広さは目を見張るものがある。

 何よりもギルドで救助すれば私が表に出なくてもいい!


「あぁ、うん、そうそう。3パーティぐらい頼むよ、統率はまたアルミレオさんにでも頼んで。あ、ギルマスにもよろしく言っといてね。報酬はいつものところから」


『畏まりました。その…』


「…何か?」


『アルミレオ様より言伝がございますが…その…内容が少々、あれでして…』


「別に気にしないから教えて」


『では、失礼いたします。おほん……"てめぇアダムこの野郎!こっちにばっかり面倒事押し付けやがって!たまには顔見せろ!そして奢れ!報酬山ほど出してるからいいだろ、とか言うなよ? こういうのは気分の問題なんだよ。こっちはお前の弟子の面倒も見なきゃいけなくて大変なんだよ!ちゃんと担当の姉ちゃんに聞いとくからな!絶対だぞ!!"……との事です。他にもカインド様からも伝言を預かっておりますが…』


「ああ、うん…そっちはいいや。アルミレオさんにはこの仕事が片付いたら本部で会おうって伝えて。カインドには内緒で」


 オペレーター、もとい担当受付嬢迫真の演技にちょっとだけビビった。

 戦闘狂は放っておく。

 どうせ『あれからもっと強くなったんだ!ヤろうよ!!』って感じに決まってる。


『畏まりました。どうか私自身の安寧のためにもお早い帰還をお願いいたします。』


「あいよ。通信終了…っと」


 どうにも戦闘面に特化したカインドよりもアルミレオさんのほうがこういった事柄に慣れている。

 器用貧乏といえば言葉は悪いが、よく言えば隙が無いのだ。

 特にこういう護衛とか保護となれば武力だけでは片付かない。

 それに加えて複数パーティともなれば率いるだけの知力と統率力も必要だ。

 適材適所ってやつだが、貴重な戦力をあれこれと便利使いしていたようで私も気づかされた。


「あの…」


「ん?」


 場にそぐわない幼い声だと思えば先ほど助けた兄弟の兄のほうだった。

 弟は兄の背中に隠れてこちらの様子を伺っている。

 向こうで心が折れている連中も気になるようでチラチラと視線を移している。


「助けてくれてありがとう…ございます。あの…ポーションの代金は、きっといつか払いますから…。もうあそこには戻さないでください…!お願いします…」


「…おねがいします」


 どのような境遇にあったのかは知らないが、まだまだ幼さを感じさせるのに自決を決意させるとは相当な環境にあったのは想像に難くない。

 もちろん特級ポーションの代金など貰わないし、酷い環境に戻す訳もない。


「心配せずとも代金など不要だ。君らもじきに両親の元へ帰れるだろう」


「ほんと!?」


「本当だとも。数日後には私の仲間が助けに来て、家に帰してくれるだろう」


 兄弟で抱き合い、よかったと、両親に会えると感情を爆発させた。

 そうはしゃいでいる姿が年相応に思え、なおさらこのような境遇をもたらした当人らに怒りが湧いてくる。

 こういう弱者から絞るような連中をのさばらせては置けない。


「さて…あーゆーのは組織的なことが多いし、ちょっと会話でもしようか」


「あのっ!」


「?」


「ありがとうございました! 良ければお名前を教えてください」


 別に隠す事でもないし、もう何百回と同じことはやってきた。

 なのに、今だけはどうしても格好を付けたいと思ってしまった。

 子供の前だからだろうか。

 それとも自分の中で区切りが着いたからだろうか。


「そうだな…。名前ではなく私の職業で答えようか…私こそ、世界の管理人だ!」




 締めとしてはイマイチになるが補足しておこう。

 管理人だ!と言い切った私の決め顔を兄弟はぽかーん…として見ていた事を。



長らくお待たせしていました。

これにて一度、幕とさせて頂きます。

苦節…苦節?1年と9ヶ月ほどのお目汚し&処女作という体たらくでしたが、最終的には総合評価:959pt、評価者45人、ブックマーク登録:287件となりました。

この場でお礼を申し上げます。


他の投稿に関してもまだ続ける予定ですし、書きたいなという題材もありますのでまた別の物語にお付き合いいただけますと幸いです。

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