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けじめ

総合評価 908pt

評価者数:40人

ブックマーク登録:281件 (2019/8/22 8:25)


皆さま、ありがとうございます。

大台の1000PTが見えてまいりました。

錠剤を口に含ませ、水を飲ませる。


「……」


「あぁ…救いを、ありがとう――」

「大司教様、感謝…いたします…――」


 私の目の前でノワールは自分を穢した2名に止めを実行した。

 渡したのは強力な麻酔成分…これでほどなくあまり苦しまずに逝くことができるだろう。

 憎しみ、というよりは哀れみの感情だろうか。

 もしかすればノワールの遺体に悪戯したことによりアダムが激昂し、この悲劇を招いた原因の一端は自分にある…とでも考えているのか?

 だとすればそれはお門違いだろう。


「どれもこれも…私の自己満足か」


「終わった」


「そうだな…埋めてやるか?」


「…うん」


 死後にまで非難を受けるのは流石にやりすぎだと思う。

 だから他の兵士らと同じく土に還した。


「そろそろ、身の振り方…決まったか?」


「もう、ちょっと…。 アダム、聞いて、いい?」


「いいぞ。私に答えられる事なら何でもな」


「アダム、何者? 神、様?」


「あー……」


 何でもと言ったが、直球に過ぎるわ…。

 教会がここに来たという事は、既に私の正体なり力なりを脅威と判断して攻めて来た節がある。

 …後でソーモンを少し締め上げるか。

 特にノワールには顔見世の段階で何かしらに感づいていた気配もあるし、もう隠しても仕方ないな!(思考放棄


「んーとだな…正直に言えば私も分からん。通称は『管理者』と言うみたいだが、そう言った職業も無いし立場もない。ある人から仕事として請け負った…というのが正しいかな」


「管理、者…? でも、その信仰、は、本物…。なぜ、扱える?」


「何故って言われても…そういうものだからなぁ…」


「本来、なら、教会…のみ、にその、扱い、知る」


 私の存在がどうこうってことよりも何故信仰ポイントを使えるのかって話が気になっているのか?

 分からん…

 そもそも私はMMORPGとしての感覚で扱っている節が大きい。

 スキルポチ― → スキル発動ってな感じだ。

 それが使えないとなれば、取得していないか、触媒・アイテムが足りないか、MPが不足とか。


「そうだ、逆に…なんだが。信仰の力を使って何が出来る?」


「? 回復、解呪、解毒、身体強化、など、など、最上位、なら蘇生」


「……終わり?」


「…(コクリ)」


 彼女に限らず信仰ポイントはMPに等しいのかもしれない。

 それも回復系統専用の。


「じゃあ信仰の力で…家を建てたりは?」


「………は?」


 何言ってんだコイツみたいな表情止めてください。

 何かこう、私の中の新たな目覚めを引き起こすような…。


「私の信仰の力は便利でね。昨日も見てただろうけどあの家を生み出したり、食べ物を出したり…と便利使いできるのさ」


「……常識外。でも、納得。力の、総量、減ってる」


「…良く分かるな?」


「私、目が、特別………だから、アダム、信仰の力、異常。教会に、報告、した」


「…そうなのか」


 個人のステータスを覗く方法はあるが、ある程度の力量差や故意に隠された場合は覗くのが非常に困難だ。

 レベルや名前、装備は見えてもスキルなどは覗けない。

 だがそれでもノワールの目なら信仰の力が可視化されているという事か?

 そして今の言からするにノワールの報告から教会が本腰を上げた…と。


「だから…この、戦争…虐殺は、私が、引き金」


 やはり、自分が責任の一端を担っている、と考えていたようだ。

 それを言ったら私がここに来たこと自体が引き金じゃないか。


「…そうか」


「私、殺す?」


「何で?」


「え?」


「教会の大司教様は死んだんだろ? ならここに居るのは単なる村娘だ」


「そう…ありが、とう。心、決まった」


「お?」


「教会に、仇は無い。でも恩、ある。けじめ、着ける。終わったら、ただの娘で、生きて、みる」


「そっか」


 これほどににこやかな笑顔のノワールを見たのは初めてかもしれない。

 いつも仏頂面というか無表情な顔しか知らない為にその笑顔は非常に眩しかった。









― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 









「みな…よく集まってくれました」


「法皇猊下の御為とあらば、地の果てからでも参りましょうぞ」

「そうですな。ノワールとムタードゥも参加出来ればよかったのに…」

「あの遠征で奮闘中だろうとも」


「イヴォワ大司教のいう通りじゃ…まずはかの前線で戦う者らへ祈りを…」


 ここに会したのは教会の首脳部たる面々。

 枢機卿を退き、引退した身ではあるがそれでも絶大な発言権を持つリ・ウール・ドレ法皇。

 集まったのはあの戦いに赴かなかった面々…枢機卿は火急の要件で欠席するという事だった。


「…痛ましい事です…」


 この方はいつも人の生き死にに心を痛める。

 だからこそ第一線を退いていただき、安穏とした日々に、教会への圧力緩和の為に尽力して頂いている。


「法皇猊下に置かれましては、頭を悩ませるような報告しか出来ない我々をお許しいただければ…」


「正に…我らの不徳の限りでございます」


「今、第2派遣に関して協議中でございます。今しばらく時間を頂ければ必ずや朗報を―――」


「ならぬ」


「は?」

「え?」


「今…なんと、おっしゃられましたか?」


「ならぬ、と言いました」


「な、何故ですか!?」

「あの邪教を放っておけば何れ…いや、今でも既に大きな脅威です!」

「何卒、ご許可を!」


「相手の素性も調べず、自らと違う信仰を持つ…それだけで邪教と判断し、此度の侵攻を実施したそうだな」


「調査は入念に実施しております!」


「では…アズゥーよ、その邪教の首魁の名は?」


「アダムと名乗る、現特色クラスの冒険者でございます」


「では、フシア。そのアダムと名乗る者が信ずるものはなんぞ?」


「…我らの信ずる神以外…でしょうか」


「ならばノワゼットよ、此度の討伐軍全滅の原因は?」


「なっ…!?」

「「「!?」」」


 討伐軍からの報は1日1回、必ずオースを経由し、各部に届けられていたが1週間程前より定期連絡が途絶えていた。

 1日遅れであれば怠慢もあるだろう。

 2日遅れであれば過失や事故もあるだろう。

 3日遅れであれば通信宝珠の異常もあるだろう。

 だが、それらも当然ながら二重、三重の控えがある。

 連絡を椅子に座って待つだけの連中は常に気を揉んでいた。

 そこに青天の霹靂の如く、予想もしない方からの新情報である。


「全滅ですと!?」

「ど、どこからの情報でしょうか!」

「敗走では無いのですか!?」


「…今は言えませんが、非常に信用の出来る筋です。順を追って話しましょうか…フシアよ」


「…はい、何でございましょうか」


「お主の副官がノワール大司教を謀殺したと伺いました。真実ですか?」


「は?」


 誰もが驚きに次ぐ驚きで金魚のように口をパクパクさせている。

 これが組織の重鎮とは臨機応変で、用意周到で無ければならない。


「私は真実か?と問うているのです。回答を」


「いえ…存じ上げません…。ですが、もしそれが真実であるならば私の不徳の致すであります…」


「そうですか…では、身を引きなさい」


「な…!」


 身を引け、とはつまり責任を取れという事に他ならない。

 ならば、謀殺が真実という証左でもある。


「お待ちください!何を根拠に!?」


「……そろそろ良いでしょう。お入りなさい」


 薄暗い部屋に有って、なお輝く黒い艶髪を揺らし、教会の総本山で僧服を纏わない彼女が――法皇の部屋から現れる。

 この場は秘匿された教会の最奥にして、関係者以外は絶対に入れないとされる本部。

 ここに正装で無く、まして法皇の部屋からともなれば少なからず状況が見える者も出てくるが、それは明確な矛盾だ。


「ノ、ノワール! 生きているじゃないか!」


「良かった…この数日連絡が無くてヤキモキしていたのよ」


「…もう、教会の、ノワールは、いない。大司教は、ソーモンに、殺された」


「…ッ!」


「だが…君は生きているじゃないか?」


「説明、めんどう。アダム、任せる」


 この場で聞く筈の無い呼び名が自称死者から飛び出した。

 そしてまたも法皇の部屋から銀髪の男が歩いてくる。

 手には鎖を持ち、何か、を引きずって。


「どうも、教会のお偉方の皆さん。ご紹介に預かりました貴方達が仰る邪教の教祖…アダムと申します。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、虹のアダムという名前も併せ持っております。どうぞ良しなに」


 色男、二枚目、それでいて中性的な印象を持つが、その男の慇懃無礼さが今は非常に不気味であった。


お空のラブライブにFGOのカジノにプリコネのあれやこれや…イベント周回忙しいっちゅーねん!

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