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神罰、執行

「君たちの指揮官はどこですか?」


「あ…あ…!」


 ガタガタと震え、目の焦点は合わず、しまいには泡を吹いて気絶してしまった。

 …怒りに任せてスキルを開放したがこれでは話をすることも出来ないらしい。

 度合いを数段落として別の者に問いかけた。


「指揮官は?」


「たす…助けて…」


 答えないという事は用済みですね。

 体と頭が永遠の別れを告げ、血の雨が降った。


「次は君です。指揮官は?」


「あ…あっち…です」


 指さす方には村の入り口がある。

 まだまだ敵兵は腐るほどいるらしく、威圧の範囲外にいる指揮官は部下をまとめ、こちらに攻勢を仕掛けようとしている。

 村には入り口があそこしか無いので恐らく本拠地、陣営が向こうなのだろう。


「ありがとう…君は最後のほうに回しましょう」


 自分の村、というのは少しおこがましいがここまでされて、生かしておく理由は…俺には無い。

 あと負傷していたゴートらは教会に籠った女子供を人質にされ、嬲られていたこと。

 敵は『教会』であること。

 ノワールとの一騎打ちがあったが、配下の者の裏切りで殺された事…。

 この出来事にノワールが関わっていたことは少々驚いたが、ゴートらの助言でノワール自身に対する怒りは無かった。

 だが殺されたことは俺の怒りを再燃させるには充分だった。


「シロ、この森から逃げようとする者は殺せ。細かい事はグレイと話せばわかるだろう」


『了解したぞ』


 馬鹿でかい白い狼の出現に戦慄する兵士らだが、一飛びで森に姿を消した事で安堵している様子だ。

 目の前から消えて安堵させるほど俺の心は穏やかでは無い。


「召喚…ハチ、来い」


 魔法陣より現れる子供の姿。

 もはや何が起きているのか理解が追い付かない有象無象が襲い掛かるが、さっと刀を一振り、二振りして分解してあげた。

 召喚されたハチは現状が理解できていないようだ。

 とりあえず襲い掛かる輩を殴り飛ばすにとどめて居る。


「おい、ご主人。これはどういうことだ? 飯は?」


「俺にも詳しい事は分かんないけどな、どうやら俺たちはコケにされたらしい。飯は全部終わったらな」


「ほぉ?我らをコケにしたと…ではやってもいいのか?」


「手加減しろとは言わないが、殺し過ぎて俺の分を失くすなよ。見せしめも兼ねて本来の姿で暴れてもいいからな」


「本当か!?やったるぞー!」


「俺はこのまま敵の指揮官にお礼参りに行く。雑魚は任せる」


「おうよ!」


 ハチの人種形態が赤く染まり、陰が大きく、大きく伸びていく。

 それに伴い本体のほうも膨らむように大きくなり、最終的には一つの姿となった。


「あっ…あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あれは…たすっ…助け…」


『ククク…貴様ら、我らに手を出した事を後悔しながら焼け死ぬが良い!』


 喋るたびに口から洩れる火の粉とただそこにいるだけでたじろぎ動けなくなる威圧感。

 赤い体躯に鋭い牙、丸太のような尻尾、大空をはばたく大きな翼。

 俗にドラゴンと呼ばれる最大の脅威に絶望し絶叫し、してもしきれない後悔が兵士達を襲う。








 範囲探索を掛けつつマップを見るとうんざりするぐらいの人の数。

 マップが赤く染まり、どこに向けて攻撃しても当たるのでは?と思うぐらいだ。

 かといって鳴神をぶっ放して消し飛ばすのは楽に殺し過ぎてしまう。

 どこの無双ゲー?といった感じで人を文字通り切り開きながら奥へ進んでゆく。

 ある意味達観しているというか、人を殺しているという感じがしない。

 俺はどこで人間としての感覚を忘れたのだろう。


 義務感なのか、狂信なのか、これだけ目の前で人が切り飛ばされているの向かってくる奴は一向に減らない。

 もう、慈悲とか…いいか。


「炎神"加具土命"」


 火系統の最上級魔法、名前は日本由来の神様だがここでは単なる攻撃手段でしかない。

 俺の頭上に火に包まれた幼児が出現し、泣き叫ぶ。

 それだけで俺を中心にざっと100メートル程度が火の海となった。

 赤く染まる世界で誰もが酸素を求めるが、呼吸をすれば肺が焼かれ、呼吸困難と火傷の痛みにのたうち回る。

 だが、この暴力は範囲内においては何よりも平等だった。

 生物、無生物問わず残らず炭化し、崩れ去った。


「やっと静かになったな…でも思ったより楽に殺しちゃったかもしれないな」


 そうだ。

 こいつらは憎い敵だ。

 魔法の的程度に使ってやればいいじゃないか。

 そうだ、そうしよう。



「雷神:"武御雷"」


 俺の纏う武具の元ネタにして、またも日本由来の雷と刀の神様。

 背後に立った髪が長く、ふくよかな男性はこれまた古めかしい青銅の剣のようなものを振るうとたちまち暗雲が立ち込めた。

 稲光が走ると、一人…また一人と反応が消えた。

 光の速度を躱せるもの者など無く光れば一人が焦げ、また一人が絶命した。

 加具土命とは違ってこっちは識別機能付きらしい。

 …人がどんどん死んでいるのに便利だなぁとしか思わなかった。


「水神:"蛭子"」


 どうやら最上級系統は日本由来のが多いらしい。

 形容しがたいスライムのような、ウミウシのような何かが声を上げると山の中なのに津波が生まれた。

 無差別で範囲は一番広いが威力という観点では低めかもしれない。

 折れた木に巻き込まれ、この冬の寒さも相まって溺れ死ぬという意味では苦しさを味わってもらえるかも。






 幾度か実験を重ねていると森が少し開けた。

 木製の柵に数多くのテント…ここが裏切った部下がいるという場所だろう。

 やはりここも敵対する意思が固い者が多い。

 道中で既に、どれだけ甘く見ても2000人以上を消しているのに戦意が衰えていない。

 ここまで来ると狂信者というより強制的に従わせているのだろうか?


「君たちの指揮官を出せ。あとノワールの遺体もだ」


 無意識にノワールも出してしまったが、多少なりとも同僚として思うとこがあったのだろうか。

 彼女は彼女なりに誠意を尽くそうととした結果、命を失うに至った。

 であれば、弔うくらいはせねばなるまい。


「…出てこないのであればこちらから探すまで。退かぬ者は切り捨てる」


「ぬぁぁぁ!―――」

「ちぇすと―――」

「ファイアボー――」

「ホーリ――――」


 誰も喋る気が無いのであれば喋らせるつもりも無い。

 ただ刀を振るい、道を開けるだけだ。

 誰もが首を、腕を、胴を分かたれ血の海沈んだ。


 刀で切り殺すのも考え物だな。

 びちゃびちゃと足が汚れるじゃないか。






 教会の陣地に押し入り、指揮官を探して開いた4つ目のテント。

 ああもう…。

 どうしてこう最悪な気持ちの時に醜悪な物を見せられるのか。


 吐き気がする程の邪悪っていうものを痛感させられる。


 テントの中に充満するのは栗の香り。

 半裸の男が3人。

 そこにある幼い体躯の遺体。

 戦いで汚れたのか、穢されたのか…それは見まごうことなき長い黒髪。

 純白の鎧を纏っていたと聞いたが、今は雪とも思える白い肌色しか見えない。

 脱がされ、テントの隅に威厳も無く投げすてられた鎧。

 そして、見えるのは慰み者とされた結果。

 ノワールの目は開いているが光は無い。


「命を賭して戦ったノワールをそう扱うのか。お前らはそうなんだな。そうなんだな?」


 陣地が強襲され、悲鳴も、絶叫も聞こえているだろうにこいつらはそうなんだろう。

 どれほど夢中になっているのか俺の存在に気づかず腰を振っている者までいる。

 とりあえずそいつは頭を握り、


「いだだだだだ!何!?順番をまも――」


 くしゃっと潰して差し上げた。

 割って入った不審者と目の前の惨劇に、逃げようとする二人だが逃げる悪い足は既に踝から先が無い。

 痛さを我慢しながら腕で這う姿は滑稽とも言える。


「楽に死ねると思うなよ♪」


 きっと俺はこれ以上なく、にこやかな笑みだったと思う。








― ― ― ― ― ― ― ― 








「はい? 私の聞き間違いしょうか…暗部が全滅した?」


「はい。間違いございません。先ほど全員の応答が消えました」


「教会には女子供の戦力にならない者しかいなかったのでは?」


「そう…報告を聞いています…」


「…隠し戦力? それは薄い。元からこっちが本命? それならば一騎打ち自体が芝居…? それも無いな。でなければあいつらはリンチされ続ける理由がない……憶測で思考しても仕方ありません。まずは情報です。急ぎ教会へ向かい確認を――ー


 この青天に落雷の音が響き渡る。

 それも遠雷でなく、ごく近隣に落下した故の地響きすら伴っている。


「…雷でも落ちましたか? 見張りからは?」


「今確認させ――」


「しっ失礼します!!緊急です!!」


 口から泡を飛ばしながら兵士が許しも得ずにテントに入ってくる。

 ソーモンは状況が状況だけにそこは気にしなかった。


「落ち着きなさい。正確に素早く丁寧に喋りなさい。はい、どうぞ」


「はっ…物見櫓からです。村付近で未知の魔法を確認しました。規模からするに軽く数百人は死んだかと…」


「はい?」


「…なんと…」


「ちょっと待ちなさい。数百人ですか? 確実にそうなのですか?」


「…目測ですので確実とは…村の入り口と教会の合間くらいから一直線に青い光が走って…山まで…。そこに布陣していたおおよその人数から算出しました」


「ちょちょちょちょっと待ちなさい、村から山までですか!? 見間違いでは無いんですね?」


「確か…です」


 ソーモンは得られた情報をまとめるが荒唐無稽に過ぎる。

 だがあり得ない話ではなく、未知の魔法という線は充分に有る。

 人種、亜人種、耳長種、土精種…種族毎に使える魔法も限られ、隠匿されている部分もある。

 それでも数百人規模で殺せるような魔法は歴史上数えるほどしかない。

 そして現在、その力を行使できるのは一人だけ――特色ランク、灰道グリムゲルデのみ。


「ここにグリムゲルデが…? それはあり得ない。奴は南方で目撃されている…」


「急報!急報!」


 悩むソーモンに新たな情報が追加される。


「アダムと名乗る者が現れ、こちらへ侵攻!既に…ん人がやられたと…」


「急いでいるのは分かりますが、正確に、ちゃんと発言しなさい。時間の無駄です」


「およそ…すぅ…はぁ…に、二千人が…犠牲に」


「「「は?」」」


 その「は?」に立場も生まれも関係なく、誰もが理解を拒むものであった。


ええいままよ!

今は駆け抜ける時!

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者の趣味とアタマの悪さ全開だな。 駄作。
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