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村の変化と眠りへ

 既に村は初秋というより中秋か、晩秋の兆しだ。


 最後に村に来たのはいつだったろうか。

 少なくとも3ヶ月か…あれ? 半年くらい…?

 転移先はいつもの教会なのだが、外に出ると驚きの光景が広がっていた。


「な、なんじゃぁこりゃぁ…」


 まず、道があった。

 ただ土を踏み固めただけでなく、表面が慣らされた石で正しく石畳と言うべき道。

 もちろんそれだけではない。

 道の脇には花壇もあり、視線を移せばベンチや遊具こそ無いが整備された広場もある。

 確認の為に振り返るがそこにあるのは見慣れたアダム村の教会そのもの。

 遠目に見える村人は額に汗し、腕をまくりと精力的に仕事に励んでいるので転移先が違うとは考えにくい。


「ってことはこの何か月かの間に整地して、整備までした…ってことだよな」


 なんという事でしょう。

 素朴な雑草を抜いただけの平地に掘っ建て小屋、厳しい環境に晒される山村…。

 それが村人の努力(+アダム補正)により今では町と言っても良いぐらいに整っています。

 思わずナレーションを入れるぐらいには感動した。


「ウォォォォォォン」


 響く狼の遠吠えは山間の盆地に良く響く。

 そして私目掛けて走ってくる灰色の大小2頭の狼。

 以前助けたフォレストウルフの白い…アルビノ種だったかなー―のグレイとハクだ。

 大小と言ったがハクの方は母親を越える勢いで大きくなっている。

 私の前で止まるとグレイは尻尾をフリフリ、ハクは周りをぐるぐると…もーしょうがないなぁ!!


「おー、グレイもハクも久しぶりだなぁ、ワシワシワシワシ、お? ここがええのんかぁ? ここか?」


「ゥオン…ウォン…わふん…」


「ウォンウォンウォン!」


 どでかいフェンリルのシロとは違い、正に犬をモフるという状態。

 惜しむらくはまだ冬本番ではなく換毛途中でモフリティが最大限に達していないという事だ。

 ……真冬にもう一度来ようと密かに決心した。


「モフモフはこれぐらいにして……出迎えご苦労。村長の所へ案内してくれるか?」


「ウォーン!」


 肯定、とみていいだろう。

 私は変わった…いや、進化した村を眺めつつ村長の元へと向かった。








「おお、アダム様いらっしゃいませ」


「突然すみません」


「あらあら、今お茶を入れさせますので少々お待ちくださいね。2号ちゃーん!お仕事よー」


「本日はどういった御用でしょうか…と、その前に。虹の任命おめでとうございます。アダム様の活躍はこんな北の片田舎まで届くほどですよ。そんな方の守護があるからか少しずつではありますが村民も増えていまして、いやはや…交易も順調と。至れり尽くせりです」


「こそばゆいですな…順調である事は結構な事ですがね。っと今日は下準備に来た訳でですね…」


「何かなされるので?」


「いやぁ、個人的な事なんですが少しの間、休みを貰おうと画策してましてね」


『オ茶ヲドーゾ』


「どうも。まぁ、何か月も音信不通でふらっと寄るような私が休みとか言われてもって心情でしょうけど――って今の何!?」


「え? あぁ、2号ですか。何て言いましたかね…エミエ式ゴーレム2号カジテツスペシャル…リミ…何とか?」


「エミエ式ゴーレム2号機カスタム・カジテツスペシャルエディション・リミテッドモデルですっ!」


 ドアをバーンと開け放ち、登場したのはエミエ・ラヴレ。

 以前あれこれあって保護した王国の宮廷魔法士だが…目の下にはクマ、頭は寝ぐせにネグリジェでスケスk…。


「ちょ、身だしなみぐらい整えなさい!」


「あら、アダム様でしたか。ご機嫌麗しゅう…私の可愛いゴーレムの話が聞こえましたのでつい」


 てへって感じで誤魔化してもダメ!

 絶対に引きこもりの研究まみれの生活してたでしょこれ!

 ちょっと前も引きこもり癖あったけどここまで酷かった記憶は無い。


「あらあら、エミエちゃん。殿方が居るのにその恰好はいけないわぁ…2号ちゃん。いい機会だからエミエちゃんをお風呂に、その次は昼食の準備をお願いね」


『カシコマリ』


「ぎゃぁぁぁ!風呂は嫌!夜に入るから!まだ刻印の途中なのにぃぃぃーー!」


「そんな事言って…どうせまたすっぽかすんでしょ?どうせなら綺麗にしてアダム様に見てもらうべきね」


「…うぐぅ…」


 台風一過のように現れたエミエは奥さんに連れて…というよりもゴーレムの脇に抱えられて連行された。

 あの言からするに相も変わらずゴーレムに一心不乱な生活を送っているようだ。


「…私がお願いしたとはいえご迷惑をお掛けしているようで…」


「いえいえいえ!生活態度は……目を瞑るにしてもゴーレムは素晴らしいものですよ」


 それは私も思った。

 完全な2足歩行型のロボット。

 それも会話から命令を判断し実行するなど現代日本ではまだ完成していない。

 魔法と言う技術体系もそうだが、ゴーレムバカといえるエミエの能力も抜きんでているのだろう。


「確かに出来は素晴らしいようですね。2号という事は他にも?」


「ええ、全部で4体います。ウチの2号と、農作業用の3号…後は警備用の4号、5号ですね」


「へぇー…前に見たときはもっと大きくてがっしりした造りでしたが…かなりスマートな感じですね」


「エミエさん曰くですが、仕事に合わせて機能を制限しているので簡易版でも使えるとか。全部乗せはロマンではあるが現実的ではないとか何とか言ってましたね」


 魔力結晶の大きさによって出来る事と出力に制限が出ると、過去に聞いた気がする。

 渡してあったデカい奴は1号機用だと思うのでこっちの2~5号はもっと小さい魔力結晶で動くのだろう。

 人の体躯と左程変わりは無いが、線は細く、球体関節を用いる事で可動域は広く、且つ滑らかだ。

 女性を小脇に抱えても支障がない程度にパワーもあるとなれば使い方は無限だ。

 前に飲み会で見せたアクションフィギュアを参考にしたのだろうか…。


「便利…ではあるが商品にするにはちょっと難しい商材だなぁ…」


「そうですね。今の所はエミエさんの技術とこの村の製造技術でも何とか実現可能ですが、大国ならもっと量産も容易かもしれません。何よりこの技術が外へ漏れれば農奴や兵役の仕事に打撃を与えかねません」


「一定の技術さえあれば量産可能なゴーレム…。そこら辺の素人を集めるよりは余程マシな即席の軍隊が出来る。危険な技術だ」


「その辺りはエミエさんも考慮済みらしく、この村の中でしか活動できない制約を付けているとか…詳しくは教えてもらえませんでしたが」


「……私の素人考えより、エミエの方がそういうのには詳しいでしょう。考慮済みであれば私からは言う事はありません」


 ゴーレムに関しては私など比べるまでも無くエミエの方が詳しい。

 加えて私の為に力を使う事を誓約しているので裏切りも考えなくても良いだろう。


「所で…アダム様は任命式で陛下に会われましたか?」


「はい…と言っても玉座から皆に向けてのお言葉を賜ったくらいですけど」


「ご様子はどうでしたか?」


「ん~…初めて拝謁しましたが結構なお年を召されているようでしたね。元気そうではありましたが戻り際には補助が付いていたようなので体の衰えも相当かと」


「そう…ですか」


「何か気になる事でも?」


「いえ、大した事ではないんです…。この辺りも一応は王国の領地ですが、こういった知っている方から近況を聞くぐらいしか陛下の話は耳に入らないもので…」


 あの柔和な陛下は国民に慕われているんだなぁと思った。

 確かにここから王国へ普通の手段で行くには少々遠く、村長が村を開けるには長すぎるかもしれない。

 そういう意味では陛下の姿を見られないのはもどかしいものがあるのだろうか。







 その後はアダムの家へ行き、メイド3人娘の労いとゴート、キルトの武器新調に加えてビルドへの新素材支給。

 村の先生役のミルレートには小学校低学年用の教科書とドリル(翻訳済み)、やっぱ耳長種なのでと弓を授けた。

 どれも現特色ランクと同等かちょい上の装備だが村を守るという意味では使えるだろう。


 そしてまた少しの間、留守にすると伝えたら晩には飲み会が始まった。

 ええい!毒を食らわば皿までだ!

 皆から貰った信仰ポイントを使って食材から酒から乾き物からと大盤振る舞いだ。

 これでみんなの気持ちが高まるのであればwin-winだろう。


 そうして、賑わしくも楽しい夜が明けると私は静かに床に入るのだった。


 ちなみにシロについては村にお願いしようとしたが「畏れ多い」「過剰では…?」との意見で取りやめとなった。

 ごめんな、暇だろうけど管理者の間で私が寝ている間の護衛を頼むよ…。

 ここに至って向こうに一時返すという考えに至らない私であった。

今にして思うと5章なっげぇ…。

とりあえず200話までにはケリ付けたいな。

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