束の間の休息…の準備
立つ鳥跡を濁す。
最後の最後に盛大にやらかして、結局普通の馬車でオースへ帰還しました。
鮮烈でも何でもねぇじゃん!タイトル詐欺じゃん!という方は『クルルァ!作者ァ!』と罵ってください。
などとメタっぽい事は置いといて本筋に戻りましょう。
結局その日の午後の馬車で帰路につく事となり、商人やら貴族やら移動を予定していた人は意図しない方面からの情報に右往左往し、予定を早める者たちは大忙しだったらしい。
なんせ特色2名が同行…護衛として付く訳ではないが戦力としては居ると居ないでは計り知れない差がある。
突発で決まったキャラバンを求めて切符は超高騰し、普段の5倍から10倍の値が付いたとか。
終いにはキャラバンの後に馬車を同行させて安全のお零れを貰う者達まで加わり、総勢100名くらいの大移動となった。
当然それだけの規模になれば腕利きの護衛も多く配置され、特に問題も起こらずオースへとたどり着いた。
「やっと着いた…長かった…」
「ここ、オース。初めて、来た。空気、王都と違う」
意外にもノワールさんは教会の王都支部付きの為に教会を留守にするわけにもいかず、冒険者としての肩書で近隣へ出る事は有っても都市間の移動は片手で数えられるほどらしい。
心なしかわくわく、そわそわしている風に感じられる。
「ノワールさん、この後の予定は? 私はギルドの支部長に挨拶した後は少し暇を貰おうと思ってまして」
「…教会に行く。あとは未定」
「そうですか、それでは良い休暇…じゃないな、良い日々を」
「ん、そっちも」
オースまでの道中はやはり長く、嫌でもノワールさんと会話する機会があった。
弁明しておくが決して嫌な訳ではないぞ?
挨拶から日常会話、暇つぶしの雑談、ちょっとした鍛錬などなど…だ。
寡黙と思っていたが、どうやら人見知りの気が強く、距離感を測りかねているように感じた。
とっかかりさえあれば後はどうとでもなるもんだ。
ってなわけで、冒険者ギルドへやってきました。
「しばらく休みをください。いえ、休みます」
「それは構いませんが…具体的にどれぐらいですか?」
「…詳細は伏せますけど私にも分かりません。1週間かもしれませんし、1ヶ月かもっとか…」
「せっかくオースに戻って来たというのに……彼女らが悲しみますね」
「……ただ休むのもあれなんで、ちょっと引継ぎしていきますか」
「そうして貰えるとこちらとしても助かります」
冒険者ギルド、オース支部長のギモンさんに許可を頂いて久々に耐性解除する事にした。
2ヶ月くらいも不在で大丈夫だったならもう1ヶ月くらいええやろ!
それにしても…ギモンさんちょっと太った?
幸せ太りかな?
「という訳で…唐突ではありますが、私は暫く休暇を取る事となりました。そこで皆さんにはより一層の働きを期待して…プレゼントを用意しました!」
「武器っすかね?それとも金っすか?」
「…久方ぶりの再開と思えば別れの話…。いいえ!ここで耐えてご期待に添えるのが臣下の務め!何なりとお申し付けを!」
「アダム様の代わりなんて荷が重いんじゃないかなぁ」
「貰えるものは何でも貰っておくの~」
三者三様、素直でよろしい。
あとフルーさん、祈りは貰うけども臣下にした覚えは無いんだが…。
「まずマルダには新しい武器と装備、回復用のポーションとか収納袋も付けてセットで。」
「ヒャァァァァァ!? 新しい槍だぁぁぁぁ!?」
久々の登場と新しい装備でキャラがブレまくっているが気にしない。
前に渡したミサイルランスが玩具に見えるほどに能力マシマシな槍――雷矛マイムール。
説明書きではウガリット神話のバアルが使用した矛で…何でも命じるだけで飛んでいき、相手を倒すとか…ファン〇ルか!
あれ?バアルってソロモン72柱にもいないっけ…?
まぁいいや。
身を守る手段として、筋力が増す手袋や足が速くなる靴、各種耐性が付いた軽鎧など…装備だけ見れば超々一流だろう。
「そして君達にはこれらを」
竜玉の首飾りと魔結晶の指輪。
俗に言う魔法使い系御用達のINTアップにSPアップだ。
出すところに出せば、金貨うん百枚はいくんじゃないか?
「…! 必ずやご期待に沿う活躍をお約束します!」
「えーと…ありがとうございます、がんばります!」
「アダム様太っ腹~!」
「うむうむ、良きに計らえ」
有給の為の抜け穴を塞ぐ対策も出来たし、ステータスだけ見れば装備によって彼女らの戦闘力は倍になったと言っても良い。
つまり2倍働ける!(暴論)
はい、次!
1週間ちょい掛けて帰った王都へその日に戻るという暴挙。
この方法は限られた者しか分からないから良いんだけどね。
「ほう、アダム殿にも休暇が必要でしたか」
「便利と不便は表裏一体ですから…この体も少しは休ませないといけないのです。そこで少々お願いが…」
「お手柔らかに願いますよ」
コーウェルさんに頼んだのは口裏合わせ。
この世界における通信はまだまだ未熟と言っても良い。
魔法という技術があるにしろ、金と権力が合わさるところにしか即座に伝わる連絡手段が無い。
今の所、私が知る限りとなれば冒険者ギルド間と特定の貴族、あとは王族にあるとか無いとか。
つまりは即座に情報を流せる位置にあるコーウェルさんにはいざという時に『アダム君は私的に調査を依頼している』とか言って貰えれば万事OKって寸法だ。
「口裏を合わせるぐらいは構いませんが、本当の有事の際は連絡は取れるのですか?」
「…私自身もはっきり名言出来ませんが恐らくは無理かと」
「そうですか…可能な限り善処しますがね。最悪の場合に備えてあの従者の方などはお借り出来たりは…?」
「ハチですか? 今はちょっと里帰りしてまして……もう一匹なら居るんですが…」
「…匹?」
「えっと…ギルド本部のマスターから拒否されるぐらいには扱いに困る奴ですが」
「…当家の力の及ぶ限りでやらせて頂きます」
「よろしくお願いします」
やっつけ感半端ないけど何もしないよりマシ!次ぃ!
ただいまー、アダム村だよ。
王都よりは秋感が強く、既に山は朱から散り際へ移行しつつある。
肋骨山脈と呼ばれる山々のてっぺんはもう雪に浸食されていた。
「のどかだなぁ……っと和んで居られないんだった」
村長への挨拶とエミエの近況、元奴隷たちなどなど見るべき、話すべき内容は山ほどある。
ちゃっちゃと回ってちゃっちゃと休もう!
余談だが、この村ならグレイもハクもいるし…シロも置いて貰えないかな?
ハチも帰っちゃったし一人(一匹)で管理者の間にいるのは相当に暇だろう。
うん、そうと決まれば村長に話す内容に追加しておこう!
「そして…これらは何だ?」
目の前に広がる光景は見知ったアダム村では無かった。
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