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名乗り

「な、なんじゃこの宝石は!?」


「…凄く…綺麗」


「へぇー珍しい色合いだ。七色に煌めき、角度で表情を変える宝石なんざ今まで見た事ねぇな」


「流石、僕が認めたアダム君だ」


 宝石持っている事とお前が認めた事関係無くね?と野暮な突っ込みは置いときます。

 私が出した宝石はオパール、虹色といえば代表格ともいえる宝石だ。

 信仰ポイントで買えるオパールとしては最上級品だ。

 その分、支出も半端なく高かったけども…必要経費だよな?


「私の故郷では割と有名な石です。安価ではありませんがね。これを加工して頂き、私は虹を名乗りたいと思います」


「虹!? お主その意味は分かって言っとるのか?」


「…何か特別な意味があるのですか?」


「知らんかったのか、まぁ仕方あるまいか……特色にならねば分らん事柄でもあるしの」


 確か使いの人からは青でも蒼天や蒼穹のような違う意味になれば使えるという話だった。

 であれば七色や虹…模様で言うならタイガーアイを用いて『虎』も使えるのでは?


「虹というのは七色の集まりじゃ。これは誰しも知っていよう。問題はそのなり様なのじゃ…空高く、万人に見え、追いかけれども届かず、時間と季節で多様性に富む」


 エルネティアさんが何を言わんとしているのかくみ取れない。

 昔から国語の授業とかで「この時の作者の気持ちを~」とか「何を伝えたいか」という問いが非常に苦手だった。


「はぁ…分からんって顔しとるのぅ。つまりは『他色を束ね、誰も届かぬ頂きに居る』と公言するようなものじゃ」


「……あぁ! つまり全ての冒険者の頂点だと…大それ過ぎて誰も使えなかった訳ですね」


「そうじゃな。まだ冒険者ギルドという組織は創立から100年程度と比較的若い。だがそれでも規格外と呼ばれる者は幾人も居た…ここにおる者らもそうじゃが、それらの中でも使う者はおらんかったのぅ」


 まるでずっと見て来たような、懐かしさを感じる言い分だが、恐らく真実なのだろう。

 さっきチラッと見えたがエルネティアさんはきっと耳長種だ、若い見た目に反した年齢であれば小僧、ガキ呼ばわりも頷ける。


「別にその色を使うなとは言わんが…」


「なら構いませんね。お願いします」


「お主、話を聞いておったのか?」


「しっかりと聞いてましたよ。その上での結果です。一応私なりの理由を上げるとですね…今の話では虹を使わないのはその有り様が大仰で、畏れ多い。だけどもその使わない理由はあくまでも暗黙の了解の上で使われていない。特色のメンバー以外にこの話を知る者はほぼ居ない。であれば問題無いと思いますが?」


「若さよのぅ…剣の腕はそこそこかも知れんがあまり己を過信すると他の特色の不信を買うぞ」


「ははははは!いいじゃねぇかギルマスさんよ。俺は別に構わないと思うぜ」


 アルミレオさんはあっさりと了解してくれた。

 長く組織を守っている方は中々に改革や革新的な事柄は受け入れにくいのかも知れない。


「僕も特に無いね。何色だろうと名乗ればいいじゃないか」


「私も…別に…」


「小僧…お前らもか」


 うぬぬぬぬと眉間に皺を寄せて悩むギルドマスター。

 多数決であれば既に決しているが組織人としては譲れない何某かの懸念事項があるのだろうか。

 もしかすればこの場に居ない3名が関係しているのかも…。


「…一応、虹が使われないのは適した宝石が無いというのもあるがそれは既に解決されとるし…んむむむ…」


 敗訴確定ともいえる独り言。

 折れるのは時間の問題か。


「ええい!己で選んだ道じゃ、面倒事は己で片付けるなら認めてやる!」


「己に降りかかる火の粉ぐらいは払いましょう」


「本当に比喩じゃなく火の粉になりそうだけどな!」


 アルミレオさんの言だと現実に火の粉が降り注ぐという事か?

 色を選ぶことが災害を呼ぶとでもいうのだろうか。


「この宝石は私が預かろう、数日中に宝飾品に変えて任命式と共にギルドから与えるという形で『虹』の任命とする。詳しくは追って連絡するゆえ、王都観光でもして大人しく待っておれ」


「了解です」


「ではこれにて新たな特色メンバー、『虹』のアダムの顔合わせは終了とする。特に新人のアダムは後で職員から特色故の特権や責任を聞いておくように。以上、解散!」


 やっぱり特権を持つ以上、責任からは逃れられないと。

 それはどこの企業でも世界でも変わらないよなぁ。






「なぁなぁアダム君よぉ、いっちょ俺と手合わせしてくれねぇか?」


 エレベーターで階下に降りる際にアルミレオさんが打診してきた。

 何か戦闘狂とは言わないけど戦いたがる人多すぎない?


「剣の坊主が認める腕前を少し見ておきたいんだわ、どうだ?」


「銀の、ずるいぞ! 僕だってこの前の負けを清算したいんだからな!」


「…構いませんけど出来れば人目に付かない場所でお願いします…」


「へっへっへ、そう来なくっちゃ!」


「…私は教会へ、戻る」


「ノリがわりぃなぁ、新たなメンバーの戦力把握は大事だろ?」


「…大体、感じた。 この人、化け物。 勝負とかの次元じゃない」


「おめぇがそんだけ喋るほどかよ…」


「何せ僕を倒した男だからね!」


 いやだからカインド、お前の評価はどうでもいいんだが…。

 それにしてもこのノワールという娘、中々侮れないかもしれない。

 少なくとも私の中のランキングでカインドとアルミレオさんよりは上に立った。


「それでも試してみたくなるってのが男だろぉが!」


「…勝手にどうぞ」


 コツ…コツ…と静かに去るノワールさんを見送る3人。


「んじゃま、練習場に行くか!」






 冒険者ギルド王都本部の2階に作られた大部屋が練習場らしい。

 広さは大体テニスコートぐらいで高さは5メートル程…これ外観から感じるよりも大きいな。


「先輩からの優しい説明だが、ここの部屋は防御系の魔法で2重、3重に固められてるから上級魔法だってちょっとやそっとじゃビクともしねぇ。そして上級ポーションも常備されているから備えもバッチリだ」


 ぐっぐっと屈伸し、関節を伸ばすアルミレオさん。

 足から腰、腕と入念なストレッチからのナイフを2本取り出しての軽い素振り。

 無精髭に似合わず流麗という言葉が相応しいと感じてしまう。


「えーと…つまりはなるべく本気を出せ、と?」


「そういうこった。もうギルマスからの説明で知ってるだろうが俺は速さが売りだ。それがバレてる以上は奇襲、不意打ち、汚い手とあらゆる手段で勝ちに行くから…間違っても卑怯なんて、言うなよ?」


 説明と言い、これから不意打ちします宣言といい、根は優しい人だ。

 ギルマスとの会話から以前はパーティを組んでいたようだし、冒険者としてはベテラン中のベテランなのだろう。

 カインドを基準に考えても『強さ』という意味では負ける気はしないが、『経験』では圧倒的に及ばない。

 手を抜くわけじゃないけどなるべく長引かせて勉強させてもらおう。



やったー!ちょっとポイント増えてて嬉しいマン!

まだまだ自分の書きたいと思える話には遠い部分があるとは思いますがお付き合い頂ければ幸いです。


書き溜め分放出。

次は……6月初め頃にでも…。

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