1/2
働くとはなんぞや
巷では人知れず山奥にあるとも、各々の心の奥底にあるとも謂われる桃源郷。
そこには一組の老師と弟子が暮らしておりました。
2人は今日とて人知れず問答を交わしておりました。
「老師・・・労働にはどのような意味があるのでしょうか?」
「そうさのう弟子よ。そなたは日々働いておるの?」
「はい。桃源郷に暮らす身なれば、銭貨に触れることはありませんが
日夜自然よりの恵みを摘んではここへ持ち帰っております」
「ではそなたはなぜ恵みをここへ持ち帰る?」
「それは老師とともにそれを食み、より多くを語らうためです」
「ふむ…労働とは労わり人が動くと書くのう」
「その心は?」
「労働とはつまり弱者を労わるため、
ひいては自分以外の利益のために動くことではないかと考えておる」
「なるほど。では労働とは善なる心によって行われるのですね!」
「そうさのう。ただそれは働く側から見た一面でもある。
多くの場合、労働とは対等な関係にない。働かせる側が対価を払わず
労うことで人を動かすとしたらそれは善心とはいえんかもしれんの」
老師御年八十八歳「ワシ老師、働いたことはまだない」