「桐原翔」
蝶って見たことあるだろう?ヒラヒラ舞ってさ。
・・・ああ、そうか。君は都会育ちなんだっけ。
もったいないね、あんなに綺麗なモノを見たことがないだなんて。
まあいいよ。いずれ君も目にするだろうさ。
アスファルトの上を舞う蝶を
はらはらと桜・・・の葉が舞い、まだ慣れない制服を着て歩く新入生を年期の入った門が迎える。
真っ黒なロングヘアを丁寧に二つに結び、度の弱い黒縁眼鏡をかけてその人混みに紛れ込んでいくその姿は、いかにも謙虚そうな文学少女(悪く言えば陰キャラ)である。
桐原翔
きりはらつばさ。いくつになっても初対面で読み方を尋ねられるのは、単に漢字のせいではないと思う。
目の前にいる影の薄そうな女子に「翔」の字をどうしても結びつけることができないのだ。こういった名前はもうすこしきりっとした、スポーツ万能な男子に与えられるべきではないだろうか。
入学式といえば桜の花が舞うイメージが浮かぶが、卒業シーズンにあらかた散ってしまうので、新入生を迎える正門の桜は葉桜ということになってしまう。
またどうせ自己紹介で少し驚かれるのだろう、そんなちょっとした憂鬱を抱えながら通路に沿ってあるくと、ようやく体育館が見えてきた。
県立白羽高等学校
私服通学の許可、独自のカリキュラム、交通のアクセスが良いとあり、県内ではなかなか倍率の高い高校である。家からも近いということでなんとなく受験し、なんとなく受かってしまったこの学校に、翔は別段期待など抱いてはいない。
なにも起きることなく、平凡な日常が続いてくれれば良いのだ。
こんばんは、四ツ谷りるれと申します。
今回は、どろどろ学園モノを書かせていただこうと!
学園とは言っても、ちょっとズレたところが出てきますよっと
青春はキラキラしたものばかりじゃないと思うので
たまにはバッドエンドでもよろしいのでは。
「クレシェンド」と並行しての連載になりますが、何卒おつきあいいただけるとうれしいです。