表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を取り巻く天使達  作者: mint
柚姫のすたーと
63/65

過去を背負うということ

『先に屋上に行きますね』


私は先に屋上に登った。



2月下旬の外は寒い。

その代わりに星が綺麗に見える。


ん?満月の月が割れて見える…目おかしいのかな?それとも疲れかな…


後ろから雅さんの声が聞こえた。


『ハニー?どうしたのさっ』向かいの席に雅さんは腰を掛けた。



私は珈琲を差し出した。


『星が綺麗じゃないですか…雅さんと見たくて』

雅さんは部屋からでも見えるじゃん!とわらっている。


『雅さん?真剣な話なのでちゃんと答えてください。…誰にも言わないって約束するので』



私がいつもより真剣に話をしているのに負けたのか、雅さんも真面目に話をしてくれそうだ。

目を見て話そう…雅さんは何を聞かれるのかドキドキしている様子だった。


『美月さんの事ですけど。彼女…雅さんに追いつくために、肩を並べて歩けるように本気で頑張っているんですよ?何故、美月さんの事を避けるんですか…?』



雅さんは話にくそうにしている。


…それもそうだ。

屋上の入口の手前で皆が隠れてロバの耳の状態になっているからだ。

私はわざとらしく大きな声を出した。



『あ~、星が綺麗だなー。どうやらこの家にロバの耳が沢山いるみたい!探しに行って捕まえないと!』

皆を見ると驚いて階段を降りていった。




―― この家の皆は面白いな ――




雅さんは皆が覗いていた事に気づいていなかった様子で驚きを隠せなかった。

二人で笑い合い…私は雅さんが話出すのを星を見てゆっくり待った。


『ハニーが真剣に聴くなら、俺も真剣に話すよ。だから誰にも喋らないと約束してくれるか?』


私は笑顔で頷いた。


…?


珈琲カップを握る雅さんの手が微かに震えている。

そんなに寒いのかな?

私は雅さんの両手を自分の手で包み込んだ。

少し恥ずかしいけど此処に誘ったのは私だし。



『俺の初恋の相手は美月なんだ…』



―― へ? ――



『中学の時に軽音部が同じで、女は唯一あいつとだけ話せた。本気で好きだったんだ…』

…好きだった。過去形か…何があったんだろう?


私は顔色を伺いながらゆっくり聞いた。


『好きなのに何故…?』

ふと私の手を今度は雅さんが包こんだ。



『言い方を悪くしてしまうと…軽い女だったんだ。

そんなの知らなかった…フラれたら次…フラれたら次…って感じで。

俺はそんなの知らなかったからさ…卒業前に聞いたんだ。

今思えば若気のいたりだろうし今はそんな奴じゃないと思ってる』



…尻軽…


そうなのかな…?



『あいつに告白したんだよ。そしたら何て言われたと思う?

俺…それなりに人気だったんだぜ?

告白もされてたし…好きな奴がいるからって断ってたけど』



そりゃ…貴方は今でも格好良いですから…



『…それで何て言われたんですか?』



『あんたみたいに女をフル男は最低だ。

このままし大人になっても好きにならないし、友達としては良いけど男として最低ランク。

そんな奴は見たくもないって言われた。

んで俺は…美月がいつか俺を好きになっても相手にはしないからなって約束をした。

だけど、美月本人がそんな事ありえないから約束すると言われたよ』




沈黙が流れる…




『初恋だったから余計ショックだったのか…?

好きじゃない奴に告白されて断るのは仕方ない事だし、好きな人に人格否定された気分になってさ…

随分落ち込んだ時期があったよ。それから数年間は女と関わりを持たなかったし、好きになることはなかった。同じ事を言われるのが怖いのか…反射的に避けてしまう様になってた。ふとした時に女の子に手を触られたんだ…その時に本当に怖かった。自分でもおかしいって思って病院に行って相談してみたんだ』




【女性恐怖症だって言われた…】


私は衝撃すぎて言葉がでなかった…



『あの女の子良いなって遠目から思った事はあったよ。仕事で異性と話すこともあるからね?

だけど信用できる人には逢わなかった。自分が避けてるだけなのかもしれないし、今でも女性恐怖症なのかもしれない…』




…うん。雅さんは本当の事を話してくれたんだ。

それだけでも嬉しいな…

って!!!




『あの…雅さん?私もいちを女ですけども…何で受け入れてくれたのです?』


何故か私がオドオドしてしまっている。



『勿論初めは怖かったよ。同じ家に居るって思うだけでね。でもハニーを見て思ったんだ。

純粋な子なんだなって…。ハニーにだったら心を開いても大丈夫だって確信した』




―― チョ!告白されてるみたいじゃない!!! ――




なんか恥ずかしくなってしまい顔を見せられない。

私は顔を隠しながら雅さんに言う。



『あの…告白されているみたいなんですけど』


雅さんは私を見て首をかしげている。



『ん? 告白? 今更なに言ってるの…もうしてるんだけどな~』と私の頭を撫でる。



『それに仲間じゃんか!と私の手を握る。いつまでも…何があっても受け入れて…それが仲間の明かしだ。あ、俺はいつでもハニーを受け入れる準備は出来ているよ』

私は笑顔が溢れた。




『仲間って良いですね。凄く安心します…でも、私は誰を好きなのか?

仲間のメンバー皆大好きですよ。ただ恋愛って考えると…』

話を続けようとすると口に指を当てられた。



―― ストップ ――



『ハニーは今自分の事を頑張ってる。だから恋愛の事は先々に考えたら良いんじゃないかな?

俺はいつでもまってるけどね~』



『あ、あとさっきの話は誰にも内緒だからな。言ったら本気でハニーを嫁にするから』


心を開いてくれる人が此処に居る…実家に居るときより安心。



『私も嬉しいです。雅さんが心を開いてくれて頑張ります!いつまでも仲間で居てください」』



『おいおい。手握られて、そんな事言われるとドキドキする。それに先に心を開いてくれたのはハニーの方だよ。過去の事話してくれたじゃんか!』



あー…アクビを見られた時の話か…2人で楽しく笑っていた。



私はふとある話のセリフを思い出した。ちょっと遊んでみよう。



『星は生まれたり消えたりしますが、月はいつまでも居ます。なので月に誓います』



案の定、雅さんは驚きながらも笑っている。いつもの彼だ…



『いや…月は欠けるから気持ちが上がったり下がったり…。

何が良いかな?太陽は沈むしな…ペットでも飼うか!』




―― ペット?! ――




なんでそうなるのか分からないが…癒されるだろうな…

みんなに聞きにいくか!とリビングに降りた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ