レッスン初日
レッスン場の扉をあけると10数人の人が居た。
更衣室と書いてある部屋に行く途中に頭を下げながら移動した。
どっからか、あんな子下のクラスに居た?などと声が聞こえてくるけど、気にしないで着替えよう。
己の事を考えて練習…
着替えてレッスン場に行くと凄く綺麗な人や可愛い人…そしてカッコ良い男性もいる。
場違いの様な気がするけど、しょうがないから自分の事だけを考えよう…
最後尾に座り周りを見渡した。
此処はダンスレッスン場とボイスレッスン場が隣同士で行き来出来る様だ。
ストレッチを見よう見真似でやってみた。
するとトレーナーの人なのか、私を見つけるなりみんなに挨拶をと言ってきた。
『初めまして、坂上柚姫です。今日からこちらのクラスで皆さんと一緒に練習させていただきます。よろしくお願いします』
ふと目の前にいる男の子に聞かれた。
『どのクラスから上がってきたの?』
私はトレーナーさんに目をやった。どう答えていいのか分からない。
それに気づいてくれたのか、トレーナーさんが答えてくれた。
『彼女は作詞家です。主にCrystal RoseとMistressの作詞をしているのかな?ダンス経験はないようだから、みんなより出遅れるだろうけど、歌唱力は皆と同等かその上という評価が出ている。仲良くしてあげてね』
そう話して貰えたので頭を下げて後ろに下がった。
前の方から聞こえてくる…こうゆう世界は戦いなのね…
『作詞家がなんでこのスクールに?社長とかあのグループにごますったんじゃ?おかしい話でしょ~』
…そりゃ、こっちも驚きの連続で困ってたんだよ!!!
…でもやるって決めたんだもん。
私は肩を落としているのを見かねたのか、トレーナーさんがフォローを入れてくれた。
『此処に来る理由は皆それぞれでしょ、他人の批判をする前に自分の事を考えなさいよ。それにクラス下げられたいの?そんな悪い心をもった人をデビューさせたくないんだけど!』
その言葉にみんなは静まり返った。どんだけ影響力のある人なの!!
『ボイストレーニングは坂上から始めようか、ある程度の声出ししてから昨日何を唄ったか聴いてるから、それを唄ってもらうわ』
そうトレーニング室に一人にされるとモジモジしてしまう。
外では各自ストレッチなりをしてなさいと言っている。
トレーナーさんの言う通りにボイストレーニングを始める。トレーナーさんの言われる様にできる限り頑張った。ふと外を見ると視線が痛い。
…わかってるってば!
私はCrystal Roseのメンバーが俺らを踏み台にと言ってくれた言葉を思い出していた。
昨日の唄った曲を唄う事になり、自分なりにアレンジをしてみてと言われた。
歌詞を見ながらトレーナーさんに強弱や感情の出し方を説明して、感じたままに唄った。
外には私の歌声が聞こえてる様だが、誰がどう言おうとも気にしない。前に進めれば私はそれだけで嬉しい。
ボイスレッスンが終わり、外にでる。
ダンスレッスン場でストレッチの続きをしていた、私の後に入った人の歌声も凄く魅力的だった。
…やっぱ浮いちゃうんじゃないかな…
すると女の子が隣に移動してきた。
『ねね?Crystal Roseの雅のファンなんだけど、どんな人なの?』と質問してきた。
どう答えたらイイんだ…?
『雅さんは明るくて元気だし…それに真面目な面も…』と笑顔で話す。
その女の子は笑顔で頷いていた。今の説明で納得なの????
女の子は手を出してきて握手をした。
『私の事は美月って呼んで?彼らと同級生なのよ』
―― ッハ! ――
以前、仁美さんから聞いていた美月さんってこの人なの?!
なんで此処に?!思わず口にしてしまった。
『え?!あの美月さんですか!』
美月さんも驚いた様子だ…
『私の事知ってるの???』
私は恐る恐る頷いてみせたが、その後にどう説明したらいいのか分からず…
『仁美さんに聞いたので…』と苦笑いするのが精一杯だった。
『ちょ!あの家に行った事あるの?!しかも私の名前が出るって結構通ってる感じ?』
あー…ドツボにはまった。
しかたないか…事情を説明した。
『一輝さんの熱愛報道で家に帰れなくなって、そのまま住んでいるんです。絶対内密ですよ!』
美月さんは暫く固まっていたが、次第に笑顔になり抱きついてきた。
『やった!私たち仲良くしよ?あの家に入りにくくて雅に逢いに行けなかったの!応援してね?』
…あははは。でも美月さんは話した感じだと悪い人には思えなかったから安心した。
休憩中に雅さんにメールをした。
『雅さん?美月さんんと同じクラスですよ!雅さんのファンだから応援してねって言われましたよ!』
すぐに返事がきた。
『まじで?!あいつ苦手…めっちゃ抱きついてくるし…ハニーなんとかして!』
…これぞ板挟み。
それに、私には平気で抱きついてきてるじゃないの!
『私には抱きつくのに!!!』
メールを送り、レッスン場に戻った。