よ・・・養成所?!
私はよく分からないまま礼を言いソファーに座った。
すると一輝さんが提案をしていた。
よく聞き取れなかったがクラスがどうのとか…なんのことだろう?
社長は私を見て一言。
『うちの養成所に入らないかい?初めは戸惑うだろうけど、君の歌唱力ならやっていける』
へ?!
私は作詞が出来れば十分なのに…一輝さんを見ると、実力を認めて貰えたんだよという。
よく分からないけど、是非お願いしますと言ってしまった。
『ボイストレーニングもしてないのに、日頃よく唄を歌っていたのかい?』
私は顔を横に振った。社長は笑顔だ…社長は私をどのクラスに入れようか悩んでいるらしい…一番下からお願いします。言いたいけど言えないこの空気…
『とりあえずAクラスに入ってみるか!作詞も出来る、曲の提供あればカバーより良いね。通用しそうだ』
私は立ち上がりよろしくお願いしますと頭を下げた。その後社長はスケジュール表を事務の子に持ってこさせるから此処で待っていなさいと出て行った。
…沈黙。
大体この5人で沈黙になると…その後はうるさくなる確率が高い。
『ハニーやったね!!!!社長直々にAクラスだよ?!凄いじゃん!唄も才能あるなんて…やっぱ車で聞いたときに思ったよ~!』
あ~やっぱりうるさくなった。…でも、このうるささが癖になりそう…私も自然に笑になる。
『でも社長さんは優しいんですね?Aクラスって一番下ですよね?』
そんな言葉に皆が固まる。
幸樹さんがゆ~っくり時間をかけてクラスの説明をしてくれた。
『Aクラスは一番上でデビューの声が掛かってもおかしくないクラスってこと!』
あ…えっと…はい。
場違いになって終わるんじゃないかな…続けて説明は続いた。
『常に自分を保っていないと、いつランク下のクラスに下げられるか分からない。だから自分との戦いだけど、夢を叶えられるならどうってことないっしょ!柚姫がんばれよ!』
っちょ…幸樹さん、他人事の様に笑ってますよ。
完全にこれからの事を想像して笑ってらっしゃるんじゃないんですか!!
社員さんがスケジュール表を持ってきてくれ、笑顔で帰っていく…そんな貴方も何を考えてるの!!
養成所の内容も知らずスケジュール表を見る。
んーよく分からない…。雅さんと一緒に眺めていた。
『レッスンは何処でやっているんですか?』
『Aクラスのみ此処だよ。ダンスもあるから頑張れよ?声が掛かればデビューもできる!気を抜いたら下のクラスに落ちる』
…はぁ。何もかもペーペーだもん… すぐランク下がるのが分かるな…
ヴォイストレーニングにダンスレッスン…え?演技?!
一輝さんは私の頭をポンポン叩いて外に出て行った。
スケジュール表を見て唖然とする…一日の流れがハード過ぎる。
部屋の奥では幸樹さんと直人さんが何か真剣な話をしている。
それを私と雅さんは遠目でみながら話を続けた。
『このクラスはトップクラスだからダンスも頑張らないとな。ハニーの歌唱力は十分ある。…ダンスと演技か…出来る?』
私は激しく首を横に振った。
『やるって言ったけど…自信がないというより緊張が凄いです…』
涙目で雅さんをみると笑顔で頭を撫でてくれた。
隣の雅さんが溜息をついた。
『やっぱりさ…人が成功するには運と出逢いなんだね。明日からレッスンだよ。初日だし送ってあげるよ。ハニー頑張ってね』
彼の頭を撫でる習慣はもう慣れたので笑顔でお願いしますと言った。 …ありがとう雅さん。