バックミラーの視線
そう言えば真人さんを見てない…
『真人さんは出かけたんですか?』
仁美さんは笑いながら教えてくれた。
『真人くんは偉いから、毎年ちゃんと実家に帰ってるのよ?他の人はね~…?』
『今日のレコーディングには来るよ』
『レコーディングって何時からですか?』
食べたら行くぞと言うので急いで食べる。
部屋に戻り…久々にワンピースを着て化粧もしっかりして髪型もばっちし!
リビングに降りると皆も準備が出来ていた。
私を見て三人は各々私に言う。
『デートに行くような格好』
自分のワンピースを見て考えたけど…これ位良いじゃない?
三人に向けて頬を膨らませているた。
『私はこれでも女の子ですからね!』
ふと一輝さんが私に近づき、何をするのかと思えば私の頬をつねった。
―― イタタタタタ!!! ――
『女が気安く男の部屋で寝るか?』
『それは訳があった事で…』
出かける時間になり黙って着いて行く事にした。
今はどの車に乗っても危険だ危険!
雅さんがハニーうちの車に乗りなよ!と呼んでいるが乗るわけにはいかない。
戸惑ってる私を見かねたのか?
幸樹さんが皆で一つの車で行こうと提案。
安心した…どの車に乗っても怖い…危険人物から昇格しなければ。
運転は一輝さんだ。私は後ろの席で流れる景色を眺めていた。
そうそう…始まりはこの車だ。
誰かが唄のは好きか?と聞いてきた。外の景色を眺めながら適当に答えた。
『一人で唄うくらいで…皆さんに比べたら下手ですよ』
幸樹さんに数枚のCDを渡される。
『知ってる曲ある?』
ふと見ると懐かしいアニメの主題歌が入っていた。
『うーん。…これ!アニメの主題歌ですよね?好きだったから覚えてますよ』
すると運転している一輝さんが歌えと言う。
はぃ…? なんでそうなるのー? 罰ゲームですか…
バックミラーで一輝さんと目が合う。
『あの…今ですか?』
一輝さんは何も言わないで冷やかな視線を浴びせてくる…
はぁ…
『一輝さんの視線が痛いです…唄いますよ~!ただ一曲だけですよ?』
直人さんは音楽を流し… 雅さんはノリノリ…
―― ッハ 此処に居る人達は耳が… アッー!どうしよう ――
雅さんに歌詞を渡され、外を向いて唄った。
イイよ…馬鹿にすればいいじゃない!笑って馬鹿にすればいいじゃない!そんな事を思いながら唄い終わった。
…ふぅ。
雅さんに歌詞カードを返すと頭を撫でてくれる。ん?馬鹿にされない…笑われないじゃない…どうゆうつもりで歌わせた訳ですかね…?
バックミラーで彼を見ると後でもう一回唄ってもらうからなとサラっと口にした。
『何処でですか?!』
三人は笑っているが、一輝さんはシラけているようだった。ヒヤヒヤしかしないドライブに朝から疲れきってしまった。