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私を取り巻く天使達  作者: mint
夢に向かって
42/65

面接





―― ピンポーン ――



誰か来たんだな… ッハ!!! 今日は引越しの荷物が来る日だった事を忘れていた。



『仁美さん!引越しの荷物が届くの忘れてました~~~!!』


私は玄関を開け、引越し業者の人に部屋まで荷物を運んでもらった。仁美さんは私の部屋を覗きあらあらといった様子で見ている。



『何処から手をつけようかな…?』



ダンボールに埋もれながら考えていた。考えようにも行動しなければ始まらない… 

手の届く所から片付けをしないと…開けていくと久しぶりに見た自分の荷物に懐かしさを覚えた。

一ヶ月くらいしか経って居ないのに… それだけ密度の濃い日々を送ってきた事を実感させられた。

片付くに連れて自分の部屋になっていく。



ふと見ると、一輝さんと一緒に撮った写真…綺麗に写真立てに入れて箱にしまっていた。



『…懐かしい気がするのは私だけかな?一輝さん、貴方に逢って私の人生に羽が生えましたよ。 私の人生どうするつもりですか?』




そんな写真を見ながらテーブルの上に置いた。何気なく残りのダンボールを見ると…見慣れた本が沢山入っている。

あとこれだけか… それは今まで私が書き上げてきた詩の本達だった。

ダンボールの中に引き詰められている本を眺め一人想いに更けっていた。



私は今まで家族に恵まれて居なかったと思って過ごしてきた。子供の夢を押しつぶして、親の欲望を擦り付ける…嫌で嫌で仕方なかった。だから、家出と同様で上京してきたんだ… 自分の字をなぞりながら読む。懐かしいなと本を閉めテーブルに置いた。

自分の作詞した物がCrystal Roseの曲になり、世に届けられる。4人が奏でるステージを観に行きたい… それにこれから…私は夕日に向かって話しかけた。



『私は何になりたいんだろう?昔からの夢を目指しているのかな…?』

膝を抱えて悩んでしまった。



はぁ…



ベットに座りながら外を眺める。もう太陽が沈みかけている…この窓からの眺めは素敵…高台にある家だから眺めやすい。今まで雑貨屋で働くことで過去の事を忘れられていたんだ。

一輝さんに出会って、デートして、写真撮られて、ここに住み込んで…そのまま此処に居座ってしまった。


将来の夢か…小声で窓の外に向けて呟く。

すると何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。



『作詞家か…詩集だしてみたら?今までの詩…寝かせておくのも勿体ないだろ?』



隣は一輝さんの部屋だ。

少し首を出して隣の部屋を見た。

『聞こえたんですね…?ていうより何時から居たんですか?』


『此処からの眺めは綺麗なんだ。特に夕日がな。そんな良い景色に何処からかため息ばかりきこえてくる。お陰でこっちにも重い空気が伝わりそうだ』


はぁ… そんなに聞こえるため息をついてのかな…


『一輝さんは…いつから歌手になりたいと思ったんですか?』


返事がない…

『答えてくれないですか…当たり前ですよね』

夕日の風に当たりながら眺めていると一輝さんの声がする。




『初めは本気で歌手になろうなんて思っていなかった。趣味の範囲で出来れば満足だと思った。だけど、仲間が居たか此処まで頑張れた。俺一人なら此処までこれなかったと本気で思う』

質問に真面目に答えてくれた…。


『皆、良い人です。素敵な仲間に恵まれてるんですね』


『あれ?お前あいつらと仲間の約束したんじゃないのか?三人にはそう聞いたんだけど?』


…あぁ、昨日の話だ。


『あ、はい。私を仲間に受け入れてくれました。とっても幸せですよ!人として認められたわけですもん』


私は満面の笑みになっていた。

『その仲間はなんていってたんだ?』


どう話すか考えていた。


『…作詞家になれるって。でも、そんなに其方の世界は甘くないと思うんです…今回は皆さんが私の作詞した物を受け入れてくださったから…』


一輝さんのため息が大きく聞こえる。


『お前なぁ…才能があるから曲にしたんだよ。才能が無かったらそれまでだ。俺らは安い仕事はしないさ。柚姫…お前作詞家になりたいか?』


私は素直になろうと決めた。

『昔からの夢だったし、この間の作詞も…今日引越しの片付けで昔に書いた詩を読んでいたら…やっぱり作詞家になりたい想いは変わってないって実感したんです。私を元の道に導いてくれた一輝さんには感謝してます』



『だったら、俺らを踏み台にしろ…そしたら、こっちの世界でも通用するかもしれない。お前のやる気次第で才能を買われたら、他の歌手の作詞も出来るかもしれないしな』



はぃ?!



…Crystal Roseを踏み台になんて出来る訳が無い。

一輝さんのその言葉に驚きを隠せない。


『Crystal Roseを踏み台にってどうゆう事ですか!』


私の質問を無視して一歩的に会話をしてきた。


『その昔に書いた詩を読ませてくれないか?前に見せられるって言ってたよな。リビングに持ってきな』

そういうと、一輝さんの窓が閉まる音がした。



ふぅ…一輝さんは本気でそんなことを思っているんだろうか?

一輝さんが本気で思っていたとしても…他のみんなは…?

そんな、優しいから言えるんだ。そう思いながら何冊か選んでリビングに降りた。

すると一輝さんだけではなくメンバー全員が居た。


『…なんで皆が?』


雅さんは待っていたよ!と言いながら抱きついてきた。


『待っていた?』首を傾げ聞き返す。


一輝さん以外の三人は声を合わせた。

『さっきの会話、俺らも聞いてたんだ。一輝に抜けがけはさせないよ』と笑っている。


皆の前に座りテーブルに詩集の本を置いた。

『てっきり一輝さんだけかと…って踏み台にって皆さん思っているんですか?』


幸樹さんは私の本を選びながら聞いてきた。

『俺ら仲間だろ?自分の夢を叶えたくないのか?』


いやいや…いくら仲間でも自分たちのグループを踏み台にして夢を叶えろって無茶な…


私は4人に向けて大きな声をだして聞いた。



『…優しさですか?同情ですか?』



皆は笑っている。

どうゆう事なのよ…一輝さんは呆れて開いた口も塞がらない状態に見える。


『お前さ…いい加減自分の才能を認めて自信を持てよ』


私は納得のいかない顔を浮かべた。


真人さんはゆっくり説明してくれた。

『勿論、才能があっても努力は必要だよ?それに挫折する時もある。スムーズにいく時もあれば挫折するときもある。でも夢を叶えて行けるなら前進出来るんじゃないかな?』



…こんなに自分を認めてくれる人達が居るなんて幸せ者だ。考えてるだけで自然に涙が溢れてきた。

嬉しい… 心から嬉しい…


私が突然泣き出したのを見て驚く四人達。何か、キツイ事を言ってしまったか?と心配してくれる。

私は泣きながら四人に話をした。


『いえ、自分をこんなに認めてくれる人が居ると思ったら幸せで…私も頑張れるんだって思えて気付いたら安心して涙が…』


一輝さんをみたら笑顔で居てくれた。雅さんは不意に私を抱きしめ頭を撫でる。


『よしよし、いい子…いい子…』



…よしよし …いい子? …いい子?


私の脳裏には雅さんが犬をあやしている…そんな風景が浮かんだ。


『ちょ… 泣いているのに笑わせないで! しかも私は犬じゃないんだから~!!!』


皆は凄く笑っている。こんなに笑っている姿を見るなんて初めてかもしれない。


そして皆が本を読み始めた。

私は面接官に読んで審査をしてもらっている気分だわ…何も言わず静かに読んでいる姿はいつものうるさい4人の面影がなく、本当に真剣に読んでくれている。仁美さんも来て何してるの?と本を触りだした。仁美さんには私から話をした。


『あ、私が昔書いた詩を読んでもらっているんです…緊張で胸が張り裂けそうですよ』


私の言葉に首を傾げ、私にも読ませてと本を嬉しそうに読み出した。

ふと真人さんは好きなのに付箋しようと言った。


『なんで、これ詩集にしないの…?勿体ないものばっかりだ』


お世辞お世辞…幸樹さんは確かに…好き嫌いはありそうだけど読み始めたら止まらない。

一輝さんがふと私の顔を見て

『写真も撮っていたんだよな?あるなら持ってきな』


私は大人しく部屋に行きアルバムを持ってリビングに戻る。恐る恐る…机の上に置く。


幸樹さんが詩集を見ながら質問してくる。

『これ良い…恋愛経験あったの?』

私は驚いて横に顔を振った。

『いえ?恋人たちを眺めていて書いた物とかですかね?』


皆がそれを読み始めた。各々に話をしてくる。


直人『これ失恋してないと書けないよ…?』


雅  『凄い世界観だね。Mistressにお似合いだな』


一輝『三行の詩もあれば歌詞に出来る物もある。絵本に載せられる物ある。どちらにせよ寝かせて置くのは勿体ない』


すると雅さんが後ろから抱きついてきた。


『Mistressに提供しようか?あいつらと仲良いし!電話をしてみようか!』


はぃ?!?!?!?



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