幸せのカタチ
キッチンに居る仁美さんと話しながら水を飲んでいると雅さんが大きな声を出して走ってきた。何をし出すかと思えば私の手を引き部屋に連れていかれた。
『ハニー?曲聞いてくれる?パソコンで作ったんだ!』
幽霊事件の時の歌詞に曲を付けたらしい。
てっきりしみじみしたバラードだと思っていたら明るい曲だった。自分の詩に曲がこんな風にアレンジされるとは思っていなかった。
音楽が聞こえたのか?幸喜さんと真人さんも次々にやってきた。両人共にうちらの曲にぴったりだなと頷いている。
『しかも、今までと違うから一輝が唄うならイメージが広がりそうだ』
三人は喜んでくれた。
『そんな直ぐにできちゃうんですか?』
『衝動だからね…』
自分の作詞した物が認められたと思い背中に羽が生えて飛び出しそうだ。雅さんの部屋を走り回っていた。
すると、噂の一輝さんがうるさい!と入ってきた。皆が訳を話し、私のワクワクした姿を見て一輝さんが曲を聞き始める。
私たちは緊張していた…。
四人でどうだった?と伺う。
一輝さんは何やら考えて…時間をくれと部屋を出て行った。幸喜さんは今までに無い反応だと言う。
雅さんは私の手を取り
『これで、認められたら作詞家デビューだよ!』と笑い合った。
その頃、部屋に戻った一輝は曲よりも歌詞をしみじみと読んでいた。
『これは衝動で書いたのか?今もそうなのか?』
題名は『幸せのカタチ』
俺も衝動で奇跡を書いたしな…考え込んでいる。
『あの時はあいつ自身、何を考えていたんだ?想っても届かない相手は俺か?いや、さっきはあんなに喜んでたしな…想いが届いたのか?」
『あの日なにがあった?メールで言い合いになった位だしな。まさか他に好きな奴が?いやいや、あいつは俺が好きだ。…好きなはずだ』
その時、背後から一輝が抱きしめられた。
「紙とにらめっこしているの?」
一輝は柚姫だと思いこの歌詞さ…と言うと優子は紙を取り上げた。
『作詞…坂上柚姫ってダサいあいつ?』
その言葉に驚き紙を取り上げ睨み付けた。
『何の用だ』
優子は一輝の肩に手を置きながら甘えている。
『優子には冷たいのに、あの子の面倒は見るの?』
『私と一輝に何かがあって熱愛発覚~!なんてなったら、私のこと助けてくれる?』
一輝は呆れ果てた。
『お前と何かあっても、俺はなにもしないしたくもない。それにお前自身の仕事に支障が出るだろ』
嬉しそうに心配してくれるのねとウキウキしている。
一輝は優子に冷たく言葉を発した。
『あいつに怪我させたのか?』
優子は動揺して答える。
『あの子が教えた訳?今度は泣きつき?卑怯な女…許せない!』
優子は一輝の部屋を歩き回る…
一輝は試しに質問をした。
『…もし、逆の立場なら俺に言うか?』
優子はハッキリ言った。
『そりゃすぐ言って相手に文句言って守って欲しいわ』
甘えながら話している。
一輝はすぐに優子を自分の体から離す。
『柚姫は、自分から言ってない。俺に心配かけたくないのか迷惑かけたくないのか。あいつは強い。お前はただの男好きだな。失格だ』
優子は呆れながら椅子に座った。
『結局…私は失格で、あの子は合格な訳?』
優子は柚姫に負けたと悔しがっている。
『んで、お前のせいで怪我させたのに謝らないのか?』
『一輝が迷惑していたから…私は一輝を守りたかったの。だから、今回は許して?』
一輝の肩に抱き付く。
『しつこい。もう帰れよ』
優子は笑顔で話す。
『帰らないわ。今日はあの子の部屋に泊まろうと思ってるから』
一輝はまた睨み付ける。優子は冗談よ?またね一輝と部屋を出た。