お願いだから消して!!
少し経ってから台所では仁美が片付けていると一輝が水を飲みにきていた。
『仁美さん、柚姫の手の怪我…転んだだけ?』
仁美は驚いてはぐらかす事に必死になっていた。
『玄関の前で転んだのよ?』
『でも、優子の名前が…あいつ優子と逢ったのか?柚姫が隠している限り俺は言わないから教えてくれないか?』
仁美さんは真面目に話をした。
『そんなに聞きたいの?一輝くんは柚ちゃん好きなの?』
一輝は真剣な眼差しで優子が関係しているのか?としつこく聞いていた。
『せめて、柚ちゃんに本当の事話したら?』
腕を組んで考える一輝はまだ無理だな…
一輝は諦めて部屋に戻ろうとした所、仁美が話し出した。
『実はね…買い物の帰りに優子ちゃんが家の前に居たの。柚ちゃんに喧嘩ふっかけたのよ。…でも柚ちゃんも負けてなかったわ。優子ちゃんが柚ちゃんを突き飛ばして怪我しちゃったのよ。かなり出血てたから、止血するのに中で幾らでも話すって言ったのよ?でも、優子ちゃんは柚姫ちゃんに、私と一輝は特別な関係で忙しくて中々逢えなくて困っていると…とりあえず邪魔しないでよって伝えて帰ったわ』
幸喜は隠れて聞いていた。
『柚姫ちゃん…落ち込んでいたから、ファッションショーの写真撮ったり、無理やりグラビア写真撮らせたり…すぐにバレると思わなかったわ』と呆れる。
『一輝くん?柚ちゃんのグラビア写真どうだった?』
『普通のグラビアよりましだな』
仁美は笑いながら聞き返した。
『普通のグラビアより?』
一輝は部屋に戻り椅子に座る。自然にため息が出る。
『柚姫が口をわらないと…優子には文句言えないな。にしても、グラビアとは大胆なやつだ』
携帯の待ち受けを見ながら笑っていた。
『…早く詩をみせてくれ、命の宿した詩を』
その前に引っ越しか…柚姫が俺と作詞したら面白くなりそうだな。
ずいぶん巻き込んでしまったな…一輝は自分を責める。
私は写真の挽回をしないといけないと想い、まずは雅さんの部屋に行く。
ドアをノックすると中から返事が聞こえた。
『柚姫ですけど、入って良いですか?』
雅さんの歓迎は予想通りだった。
『おーグラビア女優じゃないか』
ニコニコと笑いながらパソコンの前に座った。
私は雅さんの横に座り、お願いをした。
『あの、写真何ですけど…消して頂けませんか? 』
それを聞いた雅は首を傾げ、そんなに嫌なのか?
私は顔を横に振って恥ずかしいだけだと申し出た。
雅さんは私にパソコンの画面を見せた。
それは、グラビア女優の写真と私の下着姿の写真を見比べる形で並べられている。
『どっちが綺麗だ? 』
真剣に聞かれても…困るんですけど…
こっちです…とグラビア女優を指す。
雅さんは考え…グラビア女優と一番綺麗に撮れた私の写真を並べた。
私は悩んだ…指をゆっくり自分の写真の方を指すと…雅さんはキラキラした目をしている。
『流石だハニー!認めたな!』
私の手を取って騒ぐ。
『認めたので削除してくださいよ!』
騒いでいる雅さんに手を合わせてお願いした。
『自分で認めたんだから、消せないよ』とノートパソコンを持って逃げる雅さん。
完全に馬鹿にしている…私は呆れ果て雅さんのベットに座った。
『消さない程、面白い写真ですか?』
くるりと回って私を見た。
『俺が見た中で一番の最優秀作品だな』と頭を撫でられた。
そんな事で頭を撫でられたくない!
『このエロチックな顔付き…普段見せないからな!』
まだまだ、誂う雅さんを引っぱたきたくなったが我慢した。
人生の汚点だ!と雅さんのベットに倒れ込んだ。
雅さんはすかさず横に座り私の首筋を触る…
――ッヒ――
『なんなら、もっとエロチックな姿をさらけ出せるんだけどな…』
顔を近づけてくる…
私は雅さんの行動の驚きで声が出ない。
『あ…あの雅さん…??』
『狙いは誰だ…?まだ決めてない?』
私に言い寄ってくる…
本気でやめて…そんな雅さんの肩を誰かが止めた。
『ドアが開けっ放しで話が筒抜けなんだよ。やっぱり馬鹿な奴らだ!』
と呆れているのは一輝さんに幸喜さんに真人さん。
雅さんは笑っている…
幸喜さんはというと抜け駆けしようとは卑怯な奴だ!と雅さんを追いかけている。
全員揃っている…その場で大きな声で皆に言った。
『皆さん?あの写真は消去して忘れて下さいね!』
部屋を後ずさりし…急いで自分の部屋に戻る。