正夢
玄関に着くと、知らない女の人が立っていた。
…凄く綺麗な女性。
ただ…見た目で不機嫌なのが分かる。
ん…?
あれ…?
もしかして今朝の夢に似てる…
…正夢になった。
仁美さんは驚きながら私に女性を紹介してくれた。
『こちらは優子さん、女優さんをしてるのよ』――
私の紹介をしようとしていると
優子さんは私の目の前にヒールの音を響かせて近寄って来た。
『一輝の熱愛相手の坂上柚姫ちゃんでしょ?』――
明らかに不機嫌な優子さんは、私の周りをクルクルと回る。
『ネットで貴女の住所とかは既に広まってるわよ?早く引っ越さないと…一輝のファンに痛い目に合わせられるわね?残念ね』
私は優子さんの言う事を静かに聞いていた。
しかも、相手を見下した言い方しかしない。
しばらく様子をみよう・・・
『地味な子ね? 一輝はこの子の何処が良いのか理解に苦しむわ…』
静かにしているからなのか…
私が大人しい子だとでも思っているのか?
次第に私の腹の虫も居所が悪くなり頭に血が登りそうだった。
ここで怒ったらこの人と同じ… 負けない。
『優子さん?その人を見下す性格を治さないと一輝さんに振り向いてもらえないんじゃないですか?』
一瞬…優子さんは目を反らした。
自分でもわかってるのかしら…?
『坂上柚姫。よく聴きなさい?私と一輝は深い関係なの。忙しくて中々逢えなくて寂しいの。邪魔しないで』
優子さんは私の肩を力強く押した。
私はバランスを崩して地面に倒れてしまった。
――キャッ!――
痛い…
仁美さんはすぐに私を起こすのを手伝ってくれた。
手からは血がタラタラと流れている。
あぁ…
怪我しちゃったか…
優子さんは自分のしたことに気づき声をかけてきた。
『だ…大丈夫?』
私は無言で立ち上がり強く言い放った。
『優子さんって優しいって有名なのに…乱暴ですね!止血するので中に入ります。まだ話があるなら幾らでも話しますよ?』
救急箱の場所を聞いて一人で家の中に入った。
仁美さんは優子さんと何かを話している。
玄関からドタドタと仁美さんが走ってきた。
『柚ちゃん大丈夫?内出血してるし…血も出てるわ…優子ちゃんにはよく言っておいたから』
二人で溜め息をついた。
『まだ、始まったばかりですね…』
私は仁美さんに聞いてみた。
『一輝さんと優子さんは深い関係なのですか?』
溜め息をつき、私の手を握っている。
『事実を知っているけど…私からは話せないの。それは、世に知れ渡ったら一輝くんも優子さんも大変な事になるから。でも、柚ちゃんも一輝くんとは友達でしょ?優子さんも柚ちゃんも同じ立場よ』
仁美さんは私の頭を撫でながら優しく声を掛けてくれる。
『今の家は残念だけど引っ越ししなきゃね。業者に全部頼んで数日預かって貰って家を探さないとね』
肩ががくんと堕ちてしまった…
『今日買った洋服きてみなよ。写真撮るから!お楽しみ!お楽しみ!』
私の部屋に入ると置き手紙と共にノートパソコンが置いてあった。
何だろう?と覗きこむ。
『柚姫へ 俺のノートパソコン余っているから使っていい 一輝』
優子さんが言っていた話が気になる…
『私の住所…載っているんですかね?』
仁美さんとパソコンで調べる事にした。
【Crystal Rose カズ熱愛相手】
私と仁美さんは勇気を出してエンターを押した。
すると週刊誌の写真が載っている。
私の顔はモザイクが付いているが熱愛相手の住所が色んな所に書き込みされている。
どうしようと顔を合わせた…。
さっひとまず忘れて、ファッションショーよ!