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私を取り巻く天使達  作者: mint
Crystal Roseとの共同生活
30/65

バレてしまった私の過去

慌ててキッチンに戻り、水を飲みながら一息ついた。



『過去の話を聞かれちゃったな・・・詩に興味ないって言ったのが嘘ってバレてしまったな・・・』



後悔しながら部屋に戻ろうと階段を登ると一輝さんが部屋の扉の前に立っていた。

一輝さんは何も言わず、私を手招きして一輝さんの部屋に入った。

しばらくの沈黙のあと・・・不意に聞かれた。



『さっきの話は事実か?』



私はどう弁解をしようか・・・

どうしたら許してくれるか…

そんな事を考えながら返事をした。



『話の内容は事実ですよ。…詩なんて興味ないし書いた事もないって嘘ついてごめんなさい。…思い出すと辛くて忘れたかったんです』



ふとクマの置物を思い出した。



『あの…一輝さん? クマの置物有難う御座います。凄く可愛いです』



一輝さんは紙に何かを書きながら話をしている。

きっと作詞でもしているのだろう。



『置物に命が宿るのか?』



私は立ち上がり部屋にある飾りを一つ一つ眺めていた。



『ほら、木も草も花も生きているじゃないですか。空も太陽も宇宙も…人が丹誠込めて作った物にも命は宿ると信じています』



一輝さんのフッという笑い声が聞こえた。

『お前って…意外とロマンティックだな』



私は続けて話しをした。

『クリスマスに貰ったクマのぬいぐるみも心があると思うし、昨日の置物も手作りでしょ?一つ一つ作ったものには心が宿るんです』


一輝さんは手元から目を離すと私を見た。


『何故、手作りだと分かった?』


やっぱり一輝さんか。


『それくらい分かりますよ…雑貨屋で働いているんですよ?それに一輝さんの作った歌詞にも心は宿っていますよ。私の心に届いたし…他の曲もきっと心が宿っていると。じゃないと、人の心は掴めませんよ。一輝さんは才能に満ちています…その才能をもっと世に出さないと勿体ないです』



私は力なくベットに腰を掛けた。

やっぱり才能って生まれつきなのかな…

私には向いてなかったのかな…

気づけば、目の前に一輝さんが立っていた。

ふと見上げると急に抱きしめられた。



――っえ?!――



力の篭った一輝さんの腕の中は私の悲しみを癒してくれている…

そんな感じがした。

耳下でふと馬鹿な柚姫…と笑っている。

私は朝の出来事も気になり、ついでに聞いてみた。



『あの朝なんですけど、私の部屋にきましたか?』



一輝さんは急な質問で困っている様子だった。


『あぁ、俺と幸樹が入れ替わりで起こしに行ったけど?』


…へ? 

一輝さんの後に幸樹さん…?

私が気づいたのは扉が閉まる時。


その後に誰も部屋には来ていない・・・

…何故幸樹さんが私にキスをするの…?


返答がないのが気になるのか私の顔を覗き込んできた。



『いえ、扉の閉まる音がしたので誰だったのかなって・・・』



私の心の中はとても複雑だった。

でも一輝さんには言えない・・・言ってはいけないと思った。

やっぱり幸樹さんがキスをしたんだ…



『詩…書いてみなよ。読んでみたいな…柚姫の心の宿した詩を…それとも俺に読ませられない物か?』



私は慌てて顔を横に振った。

お互いの顔が至近距離…思わずキス…と言ってしまった。



『ぇ?! なっ何でもないです』



恥ずかしくなり部屋の外に出ようとした時、腕を掴んで私を抱き寄せた。

こうか?と言いながら一輝さんは顔を近づける。

驚きと恥ずかしさでおかしくなりそうだった。



『あ・・・あの~!!!』



すると・・・ 一輝さんは笑い出した。

へ・・・? 

大丈夫だよ、しないからさとニアニア笑っている。

馬鹿にされた…

此処に来てからなんなの・・・

さっきの優しい言葉はなんだったの・・・?

なんで私を抱きしめたの・・・?

私は一輝さんを睨みつけ、弄ばないでください!と勢い良く部屋を出た。




私が飛び出した部屋の中で一輝は紙に【クマ100点】と書いて笑っていた。

部屋を飛び出し自分の部屋に入りそのまま座りこんで泣いていると



『ん?どうした?』



振り返ると真人まさとさんが居た。



『いえいえ何でもないですよ』



部屋の扉を閉めた。

・・・・ふぅ

弄ばれていたのかと思い凄くムカついた…数日間色んな事があった。

一輝さんとお店で出逢ってから楽しかった事… イヴにデートをした事・・・

素敵な曲をプレゼントしてもらった事… 色んな事が頭を過ぎる。

私は思わず枕を叩いていた。

何が赤い糸よ…涙が止まらない。


しばらくの間、クマのぬいぐるみを抱きながら放心状態になっていた。

するとリビングの方から仁美ひとみさんの声が聞こえた。



『柚姫ちゃ~ん、そろそろ買い物行きましょう』



そうだった。買い物行く約束をしてたんだ…涙を拭きながら部屋を出た。

丁度、幸喜こうきさんと出くわしてしまった…

あ、まずい・・・ 

朝の事もあるし気まずい… 

泣いてた跡もバレバレだ・・・

案の定、私の顔を覗き頬に流れていた涙を幸樹さんが拭き取った。



『泣いているの?』



私は事実を語れない。

語ってはないけない。



『何でもないですから…心配なさらず』



ぺこりと頭を下げ行こうとしたら

幸喜さんが私の腕を掴み三階に連れて行こうとする。



『仁美さん、ちょっと待ってください』



幸樹さんは仁美さんに聞こえるように言うと私を部屋の中に招いた。



『何かあったから泣いてるんだろ?俺はなんでも聞くよ?』



私は壁際に追いやられ…

幸喜さんの顔が近い…

自分の気持ちの動揺と幸樹さんの行動に驚いたのが混ざり合い



『同情ですか? 優しさですか? 朝、キスしたのは幸樹さんですか?』


『同情で自分の部屋に入れるか?柚姫ちゃんが心配なんだよ。朝は寝顔を見ていたらついね…ごめんね』



また涙が溢れてきた。



『何でこんなに優しくしてくれるんですか?』



『…それは柚姫ちゃんを初めて見たときに、助けなきゃって思ったんだ』



優しい眼差しで私を見つめてくる。 胸がドキドキする。

『一輝と何かあったのはわかるよ?あいつは冷たい奴だ。どんどん傷付くのは柚姫ちゃんだよ?』



私は流れる涙を拭きながら



『ごめんなさい。色々ありすぎて頭がゴチャゴチャで…』


幸喜さんは私の頭を撫でながらいきなりごめんなと…

こんなに優しくされると困るよ…大丈夫です。

きっと慣れればと笑顔で答えた。

部屋を出ながら買い物に行ってきますねと言う



『俺はいつまでも待てるから』



私は頭をぺこりと下げ仁美さんが待つリビングに降りて行った。

買い物いきましょ?と仁美さんと腕を組んで家を出発した。













二階の部屋から一輝は私達を眺めていた。

同じく三階の幸喜も・・・

雅と真人も眺めている。

買い物に行くみたいだなと横目に話しをしていた。


『柚姫ちゃんは友達だよね? ま…まさか、一輝の恋人じゃないよな?』


雅は笑いながら答える。


『これから面白くなりそうだな』


笑っている雅さんを見て真人は真剣に聞いている。

『お前・・・何か知っているのか?』



さぁ?と雅は笑みを浮かべ珈琲を飲んだ。


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