予想外の歓迎
恐る恐る家に入る…
『お邪魔します…』
リビングにはメンバー全員が揃っていた。
私は慌てて頭を下げた。
『ご迷惑をお掛けしました!』
数日前に逢った雅さんは笑顔だった。
『おー! こんなに早く再開できるとは!』
立ち上がってハグをしてきた。
その勢いで倒れそうになる…皆が驚いて立ち上がった時に一輝さんと目が合った。
笑顔を送ったがクールな顔つきで私を見ていた。
心のもやもやが消えない。
どうしたら良いんだかわからない…
助けてくれるのが彼氏の務めじゃないの?!
確かに友達と説明しているなら仕方がないのかもしれない・・・
そうすると他のメンバーが口を開いた。
『あいつの熱愛報道で相手が家にくるのは初めてだよ。家の前に記者とファンが沢山居たんだって?大丈夫かい?』
一輝さんとは裏腹に心配をしてくれるメンバー達…
『安心していいよ。俺たちは熱愛報道ばかりされているから慣れている。しばらく此処にいると良い。俺らは大歓迎だからさ!』
部屋に案内してくれた、そこは私の部屋より広い綺麗な部屋だった。
『初めてくる家だから不慣れで大変だろうけど…皆支えるから安心して良いよ』
肩をぽんと叩かれる。
メンバーの幸樹さんは耳元でふと話す。
『あいつはクールな性格だから冷たく接してくるだろうけど気にするな。あいつも本当は明るいはず…隣の部屋はあいつの部屋だから何かあったら聞けば良い。じゃーおやすみ』
私はこの騒動で此処まで来て一輝さんの変わりように辛くなってしまった。
客間のベットに横になる…
・・・・・・・・・・・・・・。
作戦会議…
自分の部屋をそっと出て一輝さんの部屋の前に居る。
あのまま冷たい一輝さんだったらどうしよう…?
それとも、笑顔を見せてくれる一輝さんなのだろうか…?
不安にかられながらも扉をノックした。
…………トントン。
返事がない。
『一輝さん…少しいいですか?』
すると中からいいよと返事が聞こえたので扉を開けた。
一輝さんはベットに腰を掛け、何かを考えている様子だった。
『柚姫ちゃん。横に座りな?』
私はそっと横に座った。
彼は私の手を握り…なにを言うも無く只々時間だけが過ぎていく。
ふと彼の顔を見つめると急に彼の体に包まれた。私を抱きしめた彼はため息をついている・・・
一輝さんも大変なんだよね…
『ごめんね…』
『俺はクールな性格で通している。だから、二人の時の様に優しく接することができない。勿論、冷たい事も言うと思う。だけど、気持ちは変わらないし…柚姫ちゃんの気持ちも知ってる。だから、騒動が収まるまで此処に居て良いから。メンバーもお手伝いの人も承知してくれている』
私は抱かれたままの状態で彼の胸に頭を埋めた。
『あのまま…冷たい一輝さんになってしまうのかと思いました…』
一輝さんはゆっくり優しい手で私の頭を撫でていてくれる。
『柚姫ちゃんの前では笑顔になれる…素直にもなれる。俺の気持ちを忘れないでくれ』
私は笑いながら一輝さんの顔を覗き込んだ。…お互いの顔が至近距離なのに今更気がついた。
『一緒に寝たいけど、そうもいかないな』
そんな彼の言葉に二人で笑った。
目を見つめていると…これってキス…?
私は不自然に目を瞑った。
彼の吐息が私の唇に伝わってきたその時。
部屋の外から雅さんが私を呼んでいる声が聞こえた。
私は驚きと恥ずかしさでとっさに彼の部屋を出た。