私と彼のピンチ
――ベットに座り込み考える――
優しい一輝さんにも驚き… テレビの中でみた雅さんに直接逢ったのも驚いた。
カメラのフラッシュにも驚いた…
赤い糸の告白も驚いたし…
雅さんの頭を撫でるという行動にも驚いた。
頭を撫でられるなんて犬みたいだわ。 でも…誰が写真を撮ったんだろう?
その後、一輝さんは仕事が忙いらしく… 一日数回のメールと数分の電話を楽しんだ。
店長が休憩から戻ってきて、お店の裏側に呼ばれた。
――柚姫ちゃん、これ見て?――
差し出された写真は紛れもない先日、一輝さんが私の頭を撫でている瞬間の写真だった。
題名には「CRYSTAL ROSEのカズ一般女性と熱愛」と書かれていた。
私は何も言えず、店長と話をしていても気持ちが空回りしている。
――でも、雅さんもいたのに…――
店長さんは驚いて口が空いたままになっている。
…そりゃ そうですよね・・・
――柚姫ちゃんなの?! お似合いじゃないよ。
相手は歌手なんだし、彼女の優子がいるんでしょ?――
私は肩を落とし落ち込んだ。
…雑誌を両手に持ち、その場にしゃがみこんだ。
柚姫ちゃん仕事よと、お店の中から声が聞こえる…
とりあえず、雑誌は後から見るとして仕事をしよう。
仕事をしていても写真が忘れられない… 仕事をしているのかしていないのか…
笑顔が全く出来ない心境だった。
その頃、私の荷物の中に入っていた携帯には、一輝さんから電話が何度も鳴っていた。
そんな事も知らず、仕事を終えてシャッターを閉め挨拶をして家路に向かった。
普段は人気のない道なのに人が沢山居る。
家に向かって最後の曲がり角を曲がろうとした所、10人近くのカメラマンの様な人達が待ち構えていた… それに女の子が何人も…
急に焦りだした私の心は居てもたってもいられない状況に陥った。
―― どうしよう… どうしよう… どうしよう…――
そうだ一輝さんに電話をしようと携帯を開い見る。
日頃あまりならない携帯に着信履歴が15件以上入っていた。
相手は…一輝さんだ。
私は近くの公園に避難し電話を掛けた。
――一輝さん?携帯を荷物に入れっぱなしで…ごめんなさい――
一輝さんの反応が無い。怖いよぉ… 携帯を握る手が震えているのが自分で分かる。
――一輝さん?――
間を置いて声が聞こえてきた。
――柚姫ちゃん?雑誌みた?――
一輝さんの声で心が安心した。
――熱愛報道ですよね…記事は見ていませんが、写真だけは店長に見せられました――
一輝さんは深い溜め息をついている。
――迷惑を掛けてすまない。柚姫ちゃんは迷惑じゃない?――
特に写真を撮られただけだし…熱愛でもないから良いかと思った。
――私は大丈夫ですよ。 一輝さんには傷がつきましたね…彼女の優子さんも――
一輝さんは呆れた口調に変わり、私を馬鹿にしてる言いかたをした。
――優子は彼女じゃないんだ。前にも言ったけど深い関係なだけ。
その説明もしたいけど…今は時間ない。
この記事の事で社長に聞かれていて本当のことを言いたいんだ――
ん・・・・?
公園に座りながら夜空を眺める。電話先の一輝さんは急いでいる様子だった。
本当の事ってなんだろう・・・
――ゆっくりと思ったけど…こうなった以上改めて言うよ?
柚姫ちゃんよく聞いてくれ―
私は静かに一輝さんの次の言葉を待った。
――俺の彼女になってくれるか?――