一輝さんって…
一輝さんは私の自宅の前まで車で送ってくれた。
そこで、お互いの連絡先を交換しぬいぐるみを貰った。
車を降りる前に、一輝さんは私の頭に手を置き…一言呟いた。
――また、逢おうね――
私も笑顔で頷き、いい夢を見てくださいと言いながら降り、手を振った。
彼の運転する車が見えなくなるまで余韻に浸っていた。
家の明かりを点け、自分の部屋を見渡す…
急に一人になったんだ、と何処からか寂しさが湧いてきた。
――やっぱり、一輝さんに恋をしているんだ――
自分の気持ちにやっと気づけたけど、一輝さんはどう想っているんだろう。
私の質問とに【同じ気持ち】って言っていたし…
でも答えてくれなかったな…
そんな考えをしながら、シャワーを浴びベットに入る。
今日の出来事は、自分の人生の中で記憶に残る・・・
そんな想いで眠りに入った。
次の日、クリスマス本番。
昨日のデートが頭から離れず、仕事中にも関わらずニコニコ笑っていた。
…今日も呆れる程のプレゼントの数。
でも、昨日とは違って世の中の幸せな女の子になれた感じで素直に嬉しかった。
仕事中ズボンに入れている携帯のバイブが鳴っている。
こんな昼間に誰だろう?
私の嬉しい笑顔に店長が気づき、話しかけてきた。
――柚姫ちゃん、なんか嬉しい事あったの?――
言うべきか・・・でもやっぱり嬉しいから…
――昨日、王子様に逢ったんです――
案の定、店長がその話に食いついてきた。
どんな王子様なのよ~としつこい。
私は頬を赤くしながら話を続けた。
いつも来るお客さんですよ。よく喋っている人わかりませんか?
ニコニコしながら話している内容を聞いている店長の顔が冷たくなった気がする。
――あの歌手の人ね。 あの人すごく冷酷らしいわよ?
ファンの子に対してもかなり冷たいらしいわ。
でも、このお店に居るときは笑顔よね?実際はどんな人なんだろう…
あっ女優さんと付き合っているみたいね――
――女…女優さん?!――
仕事中にもかかわらず、驚きで大きな声を出してしまった。
――そうそう、よく週刊誌で密会写真乗っているわ。優子っていう女優!――
え… 一輝さんは歌手なの…?
しかも、女優さんが彼女…
でも… なんで…?
あんなに優しい人が冷酷なんて… どうゆう事なの…?
――ん? 彼が王子様なら何かあったの?――
胸がズキスキと苦しい。
彼を少しでも知れたと想って浮かれていた自分。
でも、彼はもっと偉大な人だったことに動揺を隠せずにいた。
――いえ、たまたま道で逢って話しただけですよ――
作り笑顔が精一杯の私に店長は気づかずに他の場所に言ってしまった。
心の中で同じ事を自問自答する。
一輝さんは歌手…? しかも性格悪い…?
そんなはずはないよ… 昨日はあんなに優しかった。
でも彼女が居るなんて…
だから変装していたのかな…
心のもやもやが取れない。
好きな人が歌手だなんて… 次元が違いすぎるし、彼女も居るんだ。
■ 諦めよう ■