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恋多き青年と、わたしの婚約  作者: 雨傘 はる


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4/4

わたしとあなたの、愛だの恋だの


「きみがいない世界では、呼吸の仕方もわからない」


エステルは、麗しい翠色を見つめながら、頬が熱くなるのを自覚した。

美麗なお顔で、なんて甘やかな台詞を吐くのだ。この婚約者は。


「ごめんね、エシィ。嫌なところばかり見せた。婚約者がよそ見しているなんて、不快だったよね」


全然気にしてない、なんて言っていい場面でないことだけはわかる。

エステルは賢く沈黙を選び、淡蒼の髪を撫でてあげた。

甘えるようにすり寄る年上の男に笑いながら、少し背伸びをして撫で続ける。


「きみがそんなに小さいことも、細いことも、全然気づかなかった」


悔やむように呟いたクリストフの長い腕が、エステルの身体を柔らかく抱きしめる。

今まで、こんな風に触れ合ったことはない。心臓が壊れるほど暴れて、息が苦しい。


「許さなくていい、エシィ。ただ僕は、きみの夫になりたい」


「もちろんよ」


「うん……きみは、()()()()()()だから頷くんだろう。だけど、僕は()()()()()望んでいると、覚えておいてね」


「…………」


クリストフの言は、よくわからない。

エステルにとって彼との婚姻は、もうずっと昔から訪れると知っていた将来だから。


色っぽく首を傾げた長身が屈み、そっと額に口づけを落とす。

驚いて見れば、わずかに潤んだ翠色が幸福そうに微笑んでいた。


「愛してるよ、エシィ。いつの日かきみの心に届くよう、努力し続けるね」


「……ねえ。わたしは、あなたが大切よ」


そう。たとえば、どうしても恥ずかしくて呼べない愛称を、こっそり練習するくらいには。


彼と歩いていく人生を、一瞬も疑ったことはないのだ。

これを愛と呼ばずに、何をそう呼ぶのか。エステルにとってのそれは、信頼と同じ自然さでここにある。


「あなたとのこれからを、楽しみに感じているの」


きっと、穏やかで柔らかな日々だと、信じている。

つらいことや苦しいことも、クリストフと一緒に乗り越えていける。だって、今までもそうしてきた。


「わたしには、あなたしかいないわ。あなたもね」


他の誰かに興味をそそられたことも、目を惹かれたこともない。

ただ、色っぽく麗しい恋多きこの男を、一番近くで眺めていた。

エステルには持ち得ない厚情さや和やかさを見ているのが、とても幸せだったから。


「まったく……無自覚にそういうことを言うよね、エシィは」


仕方なさそうに笑った婚約者の指が唇を掠めて、わずかに瞳が躊躇って、諦めたように離れる。

その一連の仕草がおかしくて、エステルは踵を目いっぱい上げて薄い唇に口づけた。


ぎょっとするクリストフは、今まで見たことがないほど顔が赤くて、やっぱりおかしくて笑ってしまう。

心臓がバクバクとうるさいけれど、こんな顔を見られるなら勇気を出してよかった。


「……エシィ、婚姻前だから」


「そうね?」


「あんまり……ええと、こういうことはやめよう」


抱きしめながら何を言っているのか。

また笑ったエステルに、悔しいような苦しいような表情のクリストフがため息をつく。


「…………覚えといてよ、ほんと」


「ふふ。勉強し直しておくわね?」


「エシィ!」


慌てて身体を離したクリストフの腕を惜しみながら、エステルは思う。


────大丈夫。大丈夫よ、クリフ。


わたしたちの愛だの恋だのは、そう軽々しいものではないわ。

十年以上の年月をかけて、成長や変化を共に経験しながら、確かに積み上げてきた重厚さがある。


だから、わたしたちは大丈夫。

人生の終わりの日、きっとあなたとの歩みこそ幸せだったと、わたしは笑うのでしょう。











お粗末様でございましたm(*_ _)m

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― 新着の感想 ―
末永く爆発してほしいカップルでした お幸せに!!!!!
エステルの方が何枚も上手でしたな〜〜!! 一生ブンブン振り回されると良い……!!
色々遊んできた男が最後は改心するなどズルい。 それでは、モテない男は何をしても勝てないじゃないか。 というのは冗談で、何だかんだ彼の事を信頼していたんですね。
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