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AUPへようこそ  作者: 谷中シノン


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第30話:二人

「……お前は……一体何者だ……?」

 緑の瞳を光らせる葉倉の視線が、黒服の人物へと向かっている。


 「僕は──」

 

――――――――――――――――――――――――

 

 「……ここから先は、俺の出番だ」

 低く響く声に、場の空気が一瞬で張りつめる。

 そこに現れた黒服の人物は、以前井原を銃で売った黒服の人物で間違いなかった──

 

 「おい!他にも居たんなら言えや!!」

 繰原が菊上に怒鳴っている。

 「いや、そんな……僕ら以外の足音や物音なんてさっきまで無かったはずだ……」


 「ちっ……役立たずが。……で、誰なんだてめぇは?」


 「昔から同じだなお前達は……。俺は──」

 黒服が一歩踏み出す。



 

 ――「「七国遊人。お前達と同じ、能力者だ」」――


 ―――――――――――――――――――――――


 「……七国?行方不明と聞いていたが」葉倉が呟く。


 「物真、待たせたな。作ってくれたこの黒服、かなり便利だ」


 「もう一人のお前が居なければ、その光学迷彩を完成させるのに、あと半年はかかっていただろうな」


 「その黒服も……物真の手によるものか。なら……壊すまでだ」

 葉倉の緑の瞳がギラついた瞬間、彼の掌が一直線に七国へ伸びた。


 「甘いな」

 七国は一歩踏み込み、掌をかわすと同時に相手の右腕を掴みあげる。力強く体をひねり、葉倉の体を横へと投げ飛ばした。


 「ぐっ……!」

 空中で体勢を崩した葉倉に向かって、七国は腰のカセットリードを素早く右手のアドバンスアームに差し込む。

 

 《カセットリード フウライノガレン──キドウ》


 次の瞬間、右手の前に渦巻く風の波動が展開され、弾丸のごとく葉倉へ叩きつけられる。

 轟音と共に吹き飛ばされた葉倉は、背後の鉄骨に叩きつけられ、火花を散らした。


 「……っ、やるな……!」

 口元から血を拭いながら立ち上がる葉倉。

 足元に転がる瓦礫を拾い上げ、破壊の力を流し込む。

 ゴリゴリと音を立てながら瓦礫の形が変わり、鋭利な刃となる。


 「壊すことを応用すれば……組み替えることだってできる!」

 刃のように変貌した破片が次々と七国に向かって投げつけられる。


 「──なら、こちらも新しいもの見せてやる」

 七国は落ち着いた声でカセットを差し替える。

 

 《カセットリード ゲンソウノスタミィースリー キドウ》


 光が収束し、七国の前に星形のバリアが展開される。

 刃は次々と跳ね返され、火花は散るがバリアはびくともしない。


 「防ぐだけか」葉倉が嫌味に微笑む。


 「いや?そう焦るなって」


 「……スターライト」

 七国はそのまま星のエネルギーを強く押し出す。

 バリアが形を変え、鋭利な星形の光刃となって宙を飛ぶ。

 まるで光の円盤が回転しながら葉倉を切り裂かんと迫った。


 「……ッ!」

 葉倉の目に、初めて本気の警戒の色が浮かぶ。


 星形の光の円盤は葉倉の頭上を通過し、後ろの壁に刺さって消えた。

 

 「当てる気は無かったか……」


 「当たり前だろ。あんなん食らわせたら死ぬだろ。人殺しになるのは勘弁だ」


 「舐めやがって…!」

 葉倉の指先が瓦礫の破片に触れるたび、ガリガリと音を立てて形が変わっていく。やがて彼の手には、金属片を歪に融合させた刀のような刃が生まれた。


 「凄いな、そんなことまでできるのか」

 

 「破壊して創る……これが俺のやり方だ」

 緑の瞳がギラリと光り、葉倉は一気に間合いを詰める。


 「なら、こちらも応えてやる」

 

 七国は落ちていた木片の棒を拾い上げ、新たなカセットに差し変える。


 《カセットリード パワリロくんポケット キドウ》


 パイプが淡い光を帯びていく。


 「そんな棒きれで何ができる……」

 

 七国が構えるや否や、葉倉の刃が鋭く振り下ろされる。


 ガキィィン!!

 火花を散らしてぶつかり合う歪な形の刀と棒きれ。


 「硬い!?……なるほどな、物質の硬度を上げるのか」

 葉倉の腕がしなやかに動き、連撃を繰り出す。刃は左右から舞うように襲いかかり、七国の身体を切り刻まんと迫る。


 「っ……!」

 七国は反射的に棒を振り回し、刃を弾き返す。

 「正しくは“バットの硬さにする”だけどな」

 カァン!ガァン!と連続する金属音。まるで打撃戦のラリーのように、攻防が加速する。


 「野球でもやってたか?反応は良いな」

 葉倉が嗤いながら刃を振り下ろす。


 「遊びでしかやったことはないかな……。」

 七国は低く構え直し、風を纏わせたかのようなスイングで刃を弾き飛ばす。


 刀身が火花を散らし、壁に弾かれた。だが葉倉は崩壊の力で瞬時に刃を組み直し、再び振るう。


 「何度でも壊して組み直す……これが俺の闘い方だ!」

 鋭い突きが七国の胸を狙う。


 七国は咄嗟に棒を横に滑らせ、弾く。

 「カンッ!」と小気味良い音が響くと同時に、葉倉の腕が僅かに跳ね上がった。


 「……ッ、この手応え……!」

 七国は追撃に移ろうとしたが、すぐに刃が唸りをあげて返ってくる。

 棒と刃が何度もぶつかり、力と技術が均衡する。


 「壊す速さと、守る速さ……どっちが勝つかな」

 葉倉の声は狂気じみていた。


 七国の額に汗が滲む。だが、その目は冷静だ。

 「なら、勝つのは……“壊す”より“創る”側だ」


 バキィィン!!

 力強いスイングが葉倉の刃を大きく弾き飛ばし、金属片が宙に舞った。


 だが──その直後

 「面白いじゃねぇか……!」

 葉倉は獰猛に笑い、両手を地面に叩きつけた。


 「壊れろ……!」

 ドゴドゴッ、と地面が隆起し、アスファルトが槍のように七国へと突き出してくる。


 「──っ!」

 七国の身体が串刺しにされ、跳ね上がる。


 「……ハッ、終わりだ。俺の、勝ちだ……」

 葉倉が勝利を確信し、笑みを浮かべた──その瞬間。


 ブワッ……七国の姿が霧のように掻き消えた。

 《カセットリード ミラージュアドベンチャー キドウ》


 「……な、なんだと……!?」

 驚愕の表情を浮かべる葉倉の背後で、空気がビリリと揺れる。

 黒服の透明化が解かれ、実体の七国が姿を現した。


 「──後ろだ」


 《カセットリード フウライノガレン キドウ》


 轟ッ!!

 暴風が弾丸のごとく解き放たれ、葉倉の全身を直撃する。

 鉄骨ごと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた葉倉は、激しい衝撃に耐えきれずその場に崩れ落ちた。


 「……ッ、ぐ……」

 力なく崩れる葉倉。その瞳の緑の輝きがふっと消える。


 「今のも、物真が作ったカセットの一つ。幻影を作れる能力だ。言ったろ?創る側が勝つって」


 「くっ……そ……」

 気絶した葉倉を見下ろし、七国小さく息を吐いた。

 

 「終わった。……物真、もう大丈夫だ」


 「俺の発明品を連発してたにしちゃぁ、ちょっと時間がかかりすぎだろ……」


 「葉倉の熱意に答えただけだ」


 これにて七国VS葉倉の戦いは、七国の圧勝に終わったのだった。

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