第5話 覚醒
《東京》
23区とそれ以外の市との区境
そこには、東京23区を超生類達の侵攻から守る為、巨大な壁が区境上に連なっていた
その壁の中の東京23区は、至って平穏であった
まるで、超生類の存在など忘れているかのように
大勢の人が行き交う渋谷、スクランブル交差点
「…」
そんな人間達の営みを、ビルの屋上から見下ろすフード付きの白いローブに身を包んだ人物
信号が青になり、人々が横断歩道を渡り始める
だが、そんな時であった
『ボオオオン!!』
スクランブル交差点が爆発に包まれ、黒煙が立ち込める
爆風に巻き込まれ、倒れた多くの人々
その光景に騒ぎ出す人々
ただ呆然とするしかない人々
子供は泣き出す
そんな辺りが騒然とする次の瞬間だった
『ボウンッ!!』
さっきまで立ち込めていた黒煙が、何かに切り裂かれたように一瞬で晴れる
人々の騒音が一気に止み、人々の注目がさっきまで立ち込めていた黒煙の中心へと向かう
スクランブル交差点はクレーターのように割れて凹み、その中心には、フード付きの白いローブ姿の人物が立っていた
そして、その人物はフードを取り出し、フードの下から姿を現したのは、灰色の狼のような姿をした超生類であった
「平和ボケした人間共が…
虫唾が走る…!!」
その超生類は、人間達を睨み付けて、言うのだった
《タイプ:狼♂
系統:不明(タイリクオオカミの一種…?)
名前:不明》
『ぎゃあああ…!!』
次の瞬間、辺りは悲鳴に包まれ、人間達は一斉に逃げ出す
「だから、虫唾が走る…
騒ぐな…!」
狼の超生類はそう呟き、空を切るように右腕を横に振り払った
『スパンッ!!』
すると、次の瞬間、走り去っていた人間達の身体が、上半身と下半身とに割くように、真っ二つに切り裂かれるのだった
『バサッ、バサバサ…!』
走っていた勢いのまま、地面に転がる切り裂かれた人間達の身体
その瞬間を見ていた人間の一人は、目の前に転がってきた身体を見て、更に恐怖するだった
だが、それも束の間
『スパンッ!』
その見ていた人間の顔も、目の位置の所から上下真っ二つに切り裂かれた
『バタッ…』
その人間も倒れる
溢れ出す血液
そして
「ウオオオ…!!」
狼の超生類は遠吠えをするのだった
『バシンッ!!』
四方八方に目では見えない斬撃が走り、人間達も、ビルなどの建物も、切り裂かれる
『シャャャ…』
切り裂かれた人間達の鮮血で、血の雨が降り注ぐ
狼の超生類の白いローブが赤く染まっていく
すると、そんな中
『バタバタバタ…』
自衛隊のヘリコプターのブラックホークが一機、上空を飛んでくる
そのブラックホークは渋谷の状況を確認するかのように、機体を少し斜めして旋回する
その様子を静かに見る狼の超生類
だが、次の瞬間、ヘリコプターのサイドドアが開き、そこから機関銃が姿を現す
そして
『バババババ!!!』
狼の超生類に向かって、射撃するのだった
無数の銃弾を浴びせ、ようやく止まる機関銃
銃撃の衝撃で、白煙に包まれるスクランブル交差点
しかし、次の瞬間であった
『シュンッ!』
白煙を切り裂き、目に見えない何かが飛んでくる
そして
『スパンッ!!』
ブラックホークの機体が、頭の部分とテールの部分とで真っ二つに裂ける
ゆっくりと墜落していくブラックホーク
『ボオオオン…!!』
その後、爆炎に包まれた
「いつまで温室に居るつもりだ…?
気付けよ、人間共!」
狼の超生類は、そう言うのだった
《この日、渋谷で起こったたった一匹の超生類の襲撃は、人類達に衝撃と恐怖をもたらし、人類達に再認識させるのだった…
戦争中であるという事を…
更に超生類達はただの生物の進化体では無いという事を…
渋谷、血の雨事変…》