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彼女の鬱に恋をした  作者: ホタテノホ
28/37

第28話 なつさんと◯◯◯したいです

 

 いつもより早く目が覚めた。


 昨夜は少し興奮状態でなかなか寝付けなかった。


 それにも関わらず、いつもより3時間早く目が覚める。


 布団の上で天井を眺めながら、昨日のことを思い出す。




 昨日の出来事は夢じゃないよな?




 そう思ったりするのも恋愛の醍醐味。



 例に漏れず、俺もそういう気持ちだ。





 そして、少し緊張して登校した。



「本当に深谷と付き合ったんだ…」



 俺が深谷と…



 研究室に入るとそれをすごく感じて、不思議な気持ちだった。



 全く興味がなかった訳じゃない。



 この研究室内で、深谷と()()()()()人間がいるとしたら、それは俺だろう…



 そういう感覚は1年前から漠然とあった。



 単なる直感。



 そう感じる人は過去に3人いて、その内の2人とは実際、交際に発展した。



 幸奈もそうだった。



 だから深谷とは距離をとっていた。



 そして、数ヶ月前から、その必要も無くなった。



 失恋が落ち着き始めた頃…



 そのタイミングでの深谷の休学。



 休学申請で久しぶりに登校した深谷。



 それを見つけてたまたま声を掛けた俺。



 そこから繋がり、そして今に至る。



 このごく自然な…



 あまりに自然すぎて…



 逆に不気味で不自然にも感じるほど、



 俺と深谷は1つにまとまっていった。




「おはようございます」



 深谷はいつもと変わらない様子で登校してきた。



 いつものように僕は振る舞う。



 深谷も普通に振る舞う。



 研究室でのやり取りは今までと変わらない。



 いつものように踊り場の休憩所で話をする。



 特に昨日の話題には触れない。



 しかし、今日からこれまでと違うことが出来た。



 本日は木曜日。



 いつもなら、駅に一緒に向かう、駅のベンチで会話、終電逃す、駐車場に向かい、森公都市駅に向かう…がいつものルーティン。



 最初の3つが無くなった。



 そのまま車に乗せて、森公都市駅に行く。



 本来なら、深谷が契約している駐車場までそのまま行く。



 でも、深谷が駅横のホームセンターに寄りたいと言ったので、一緒に行くことにした。



 今の駐車場を契約する前まで、駐車料金も安く、このホームセンターの駐車場を使っていたらしい。



 でも、卒論が忙しくなってくるにつれて、店が開いている時間に戻れるか怪しくなってきた。



 そのことで、今の駐車場を契約したとのこと。



 その話は、最初に森公都市駅に送った時に聞いた。




「ここにいつも停めてました」




 そう言って、2F駐車場の奥にある2台分が停めれる、ちょっと区画されたある一角を指差した。



「ここはすごく良いんです」



 駐車場の一角で、良いも悪いもあるのだろうか?



 そう疑問に思って聞いてみると



「ここは他の車が目の前を殆ど通らないんです」



 元々、この田舎で、この駐車場が満車になることはほぼありません。



 そして、自分が先に停めてまえば、その横をわざわざ停める人はまずいないです。



 自分が停めることで、ここの一角には誰も入ってこないんです。



 卒論でしんどくなって帰ってきた時、閉店まで車の中でよくシクシク泣いてました。



 深谷は、少し笑みを含んで言った。




 …あぁ、そうか。



「深谷。何も気にせずにもっと長く泣けるように、あの駐車場を契約したんだな…」



 深谷は、ハッとした顔をして、少し苦い笑みを浮かべて



「やっぱり、なつさんですね」


 と言った。





「深谷の買いたいものってなんだ?とりあえず、お店に入ろ!」



 そう言って、車を降りて、店の入り口の方に向かって歩き始めた。



 でも、深谷がついてこない。



「どうかしたの?もしかして調子が悪くなった?」




「…なつさん。昨日はすごく嬉しかったです」




 ドキッとした。



「嬉しすぎて寝れないくらい」


 私は、好きな人にアプローチしたことがないんです。


 でも、なつさんに振り向いてほしい。


 なつさんだけは誰にも渡したくない。


 そう思っていっぱい近づきました。



 だから本当に嬉しかった。



 もっとそばにいたいし、触れたいと思ってます。


 どんどん好きになってます。



 でも、なつさんは今日も普段と変わらない。


 昨日がなかったんじゃないかと思ってしまうんです。


 もし、私に嫌なところがあるなら言ってほしい…




「深谷。俺はね、照れてるの。深谷が好きだから。そしてね、俺も深谷と同じ気持ちだよ」



 そう言って、深谷の右手を繋いだ。



 深谷は嬉しそうに握り返してきた。



「そういえば、なつさん」



「どうした?」



「あの時、手を繋ぐタイミングでしたよね?」


 と微笑んで言う。




「やっぱり、そうだよね。深谷も感じたの?」




「はい!自然と手が出そうになりました」




「…俺もだよ」



 河川敷で手を取りそうになったのは深谷も気が付いていたらしい。



「あの時、繋がないなつさんは私に興味がないんだって、ちょっと落ち込みました」




「いや、あそこで繋いだら、軽い男と思われそうでしょ?だから自然と引っ込めたよ」




「そんなことは思いません。なつさんだもん。繋いで欲しかったです」




「あそこでは繋げないよ。でも、今、深谷は俺の彼女なんだし、してほしいことは素直に言ってよね」




「そうなんですよね…。なつさんは私の彼氏なんですよね…」




「それがどうしたの?」




「嬉しすぎて死にそうです」




「ありがとう。でも、頼むから、そんなので死なないでくれ」




「本気で言ってますよ。でも、本当にしたいことを言って良いんですか?」




「良いじゃん。彼女なんだし」




「じゃあ、後で要求します!」



 ご機嫌な深谷とホームセンターに手を繋いで入った。




 どうやら、深谷のホームセンターでの目的は文房具と弁当箱だった。



 これから頻繁に学校に来ることになりそうで、節約も含めて弁当を作るとのこと。



 弁当箱は持ってるが、心機一転と、やる気を促すために新しいものにするそうだ。



 そして、食品コーナーに行って、ホットケーキミックスを買っていた。



「なつさんはホットケーキが好きなんですよね?だから買っとかないと!」


 と、かわいいことを言ってきた。



 そうして、2時間近くぶらぶらして、店を出て、深谷の契約駐車場に向かった。



 信号待ちをしていると深谷が恥ずかしそうに言う。



「なつさん。…キスして良いですか?」




「えっ?今?」




「はい。ダメですか?」




「駐車場に着いてからで良くないかなぁ」




「やっぱりダメですよね」




「いや、ダメじゃないけど、今がいいの?」




「はい。なつさんを見てたらどうしても今したくなって…ダメですよね」



 そっと、横を向いて深谷にキスした。



 深谷がバタバタと足を動かしながら喜んでいた。



 普段見ている深谷との(ギャップ)に驚くとともに、かわいいと思ってしまった。



「もう一回ダメですか?」




「良いけど、後ろの車から見えちゃうよ」




「私は気にしませんが、なつさんは気になりますか?」




「分かった…」



 そう言ってもう一度キスをした。



 バックミラーで後ろを見ると、若いカップルの車だった。



 どうやらキスに気が付いているようで、笑いながら興味津々にこちらを見ている様子だった。




 深谷の契約駐車場に着いた。



 その駐車場は月極と時間貸の兼用タイプであった。



 そのため、駐車している深谷の車の横に、俺も車を止めた。



 付き合いたてのカップルだ。



 その駐車場で話していても、抱きしめ合ったり、キスもする。



「なつさんが彼氏って本当に嬉しい」



 その言葉を何度も深谷は繰り返した。



 この言葉を深谷に言われるのは本当に嬉しい。



 だって深谷だからだ。



 そういう台詞を言うイメージがまるでない深谷。


 

 いや、そもそも言ったこともないらしい。



 その深谷から言われると、その本気度がまるで違って聞こえる。



「私は自分からこれほど好きになって、そして、付き合うって今までないんです」



 だから、自分でもよく分からないくらい、不思議な感じなんです。



 本当になつさんが横にいて、そして今付き合っていると思うと、おかしくなりそうです。



「ありがとう。俺も嬉しいよ」




「なつさん、さっき、“してほしいことは素直に言って”って言いましたよね?」




「うん、言ったよ」




「本当に素直に言って良いんですか?」




「深谷は彼女なんだし、素直に言ってくれた方が俺も嬉しいよ」




「本当の本当にですか?」




「本当だよ」




「私、そういう素直に言うってことを、誰にもしたことがないので、許可されてるだけで嬉しいです」




「許可って…。別に言えば良いんだよ。俺も深谷には素直に言うつもりだし」




「本当ですか?ちゃんと私にも素直に言って下さいね」



「うん、分かった。約束だ。で、深谷のさっき言ってた要求って何だ?」




「それはですね…」




「うん、言ってみて」




「私、なつさんとSexしたいです」




 えっ!?





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