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私は魔導図書館の司書です。  作者: 黒銘菓
新人魔導司書エルコ=ヒガシノの悲しい現実

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消食の魔導書2 『異界扉』

 魔導書『異界扉』:■■


 それは、仲間を探すための扉として求められた。

 自分を生んだ人間達。

 自分を育てた人間達。

 自分と学んだ人間達。

 自分と働いた人間達。

 自分と住んだ人間達。

 皆、怪物だった。

 自分と似た形をした怪物。

 自分と違う中身の生き物。

 人間達(怪物)を欺き、同じだと見せるために偽ったが、もう飽き飽きだ。

 仲間を探そう。

 自分と同じものを探そう。

 世界中を探したがいないなら。

 別の世界を探しに行こう。

 別の世界への扉を作って。

 別の世界で仲間探しを。

 その願いは本来荒唐無稽なものだった。

 別世界と繋がる扉なんてそう簡単に作れるものではない。

 だが求めた人間(怪物)怪物(人間)とは違っていた。

 一線を画していた。

 一線を越えていた。

 世界の一線を越えられた。

 独りの天才(怪物)が書き上げた魔導書『異界扉』は世界を越える扉を作ることを可能とした。

 そして、著者はこの世から姿を消した。

 『異界扉』はこの世に残り、同著者の『異界案内』という本は今のところ確認されていない。


 真っ白な頁。

 そこに書き加えられる(・・・・・・・)のは、二人に迫る終わりを書き換える魔法。

 この世のあらゆる物を喰らい尽くす暴食の化身を止めるには、飢餓で止めるか、満腹にするかのどちらか。

 前者は時間が掛かり、後者は圧倒的な物量が要求される。

 特に後者はこの世界のも(・・・・・・)ので行うのは(・・・・・・)至難である。

 「できた……」

 白紙の頁が一枚、失われる。

 代わりに現れたのはとある天才の置き土産。その紛い物だった。

 その頁に名前を付けるなら

 魔導書『偽・異界扉』

 そう名付けるだろう。


 大きな口が目の前に迫る。

 私とそれに割って入るように現れたのは小さな木製の扉。

 人の半身ほどの大きさ。大喰らいを異界に送るには到底足りない。

 「大丈夫、その必要はないから。」

 扉の蝶番が重く響き、口を開ける。

 それでも異界が大喰らいを呑むには足りない。異界が怪物の口腔を覗くことになるだけ。

 だが、大喰らいが異界を呑むことになる(・・・・・・・・・・)


 魔導書『異界扉』

 この魔導書自体には危険はない。だが、危険視されている。

 その理由はただ一つ。繋がる世界が非常に危険なのである。

 今回、異界の扉は向こうの地面と繋がったらしい。

 繋げた扉の先にあるのは異界の陽だまりだった。


 口腔が焼け爛れる。

 唾液が爆発し、歯が熔け落ち、灰塵に変わる。

 しかし、内包した膨大なエネルギーは嘔吐を許さない。

 一度口にしたのであれば、全て味わい尽くすのがマナー。


 焼けた口腔が治る。

 吹き飛んだ唾液腺が元に戻る。

 熔けた歯が射出され、歯茎の奥から新たな歯が生える。

 喰らい続けた膨大なエネルギーが可能とした超速再生。

 どんなに刺激的で、どんなに膨大でも、呑み込み自分の物にする。

 口腔が焼け爛れる。

 唾液が爆発し、歯が熔け落ち、灰塵に変わる。

 焼けた口腔が治る。

 吹き飛んだ唾液腺が元に戻る。

 熔けた歯が射出され、歯茎の奥から新たな歯が生える。

 喰らい続けた膨大なエネルギーが可能とした超速再生。

 口腔が焼け爛れる。

 唾液が爆発し、歯が熔け落ち、灰塵に変わる。

 焼けた口腔が治る。

 吹き飛んだ唾液腺が元に戻る。

 熔けた歯が射出され、歯茎の奥から新たな歯が生える。

 喰らい続けた膨大なエネルギーが可能とした超速再生。

 口腔が焼け爛れる。

 唾液が爆発し、歯が熔け落ち、灰塵に変わる。

 焼けた口腔が治る。

 吹き飛んだ唾液腺が元に戻る。

 熔けた歯が射出され、歯茎の奥から新たな歯が生える。

 喰らい続けた膨大なエネルギーが可能とした超速再生。

 もし、魔導書に賢明な頭脳があったのなら、違和感を覚えていただろう。

 いくら咀嚼しようとしても歯は届かず、消化しようにも唾液は枯れ、永遠味わう瞬間が訪れないのだから。

 そして、こう思っただろう。これだけの魔法を行使するのだから、自分のエネルギーが尽きる前に相手が尽きるだろう……と。

 だから、待てば良い。

 待てば全てが口腔の中だ。


 魔導書『異界扉』

 その魔導書は文字通りこの世界と異界を扉で繋げる。

 発動は用意で誰でも使える。

 だが、これは世界と世界を繋げる魔法の本であり、繋げる世界を切り替えることも、世界を変えることも出来ない。

 『異界扉』の原典を受け取ったのは、魔法大学の教授でもあった著者の教え子だった。

 彼は師を探そうとそれを開き、師の研究室を消し飛ばした(・・・・・・)

 何が起きたのか解らなかった。

 次に頁を開いたのは著者の伴侶。

 思い出の一冊を思わず開き、家を失った。

 途方に暮れてしまった。


 次に原典を手にしたのは大学の同僚。

 彼は賢明だった。

 あまりに異常な一冊を前にして考えた彼は同級生にいた一人の魔導司書に相談をしたのだ。

 結果、その魔導書の本質が明らかになった。

 魔導書『異界扉』は建物を吹き飛ばせない。扉を作るだけ。

 だが、扉の向こうに広がる世界は恐ろしい場所だった。

 その先に広がる世界の太陽はこの世界のあらゆる固体を気体へ変える熱を持ち、その世界の法則はこちら側の法則とは相容れない。

 2度のハプニングの正体は、扉が開いた際に僅かに流れ込んだ異界の熱だった。

 子どもでも容易に異界の扉を開くことができる魔導書。

 そしてその結末は皆悲惨なものとなる。

 このままでは死者が出る。

 こうして、魔導書『異界扉』は危険指定を受け、封印されることとなった。

 『ランク:禁書』

 1種を超えた危険性、存在を消し去られる魔導書に与えられる烙印(・・)である。




 焼く、咀嚼を試みる、焼く、咀嚼を試みる、焼く、咀嚼を試みる、焼く、咀嚼を試みる、焼く、咀嚼を試みる、焼く、咀嚼を試みる、焼く、焼く、焼く、咀嚼を焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く焼く…………

 扉から放出される熱は止まるところを知らない。

 口腔の再生速度を上回って焼き続ける、口腔の吸収速度を上回って与え続ける。

 魔道書に撤退するという思考はない。

 魔道書に加減するという思考はない。

 だから、唇を焦がされ、歯を()かされ、舌を焼かれて、食らった熱を全て奪われて再生を失ってなお、喰らおうとして…………

 「qqqqq…………」

 止まった。

 少食を知らず、飽食を知らず、消食の化物は、今満腹を知らぬまま陽光に焼かれ、沈黙し、消えていく。


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