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私は魔導図書館の司書です。  作者: 黒銘菓
新人魔導司書エルコ=ヒガシノの悲しい現実

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消食の魔導書1 魔導司書は転んだ時に悪夢の様な予知夢を見るか?


 「クソが…」

 目の前の魔導書の正体は一目見て解っていた。

 『消食(しょうしょく)の魔導書』

 『過酷な環境でも食料採取が出来るように創った。』と抜かした阿呆(アホ)が数十年前に作った魔導書だ。

 自分が賢いと思い込んだ馬鹿が独学で半端に魔導書創りが出来たばかりに生まれた、制御の方法や消す方法という一番重要な部分を抜かして生み出されたモンスター。

 無機物有機物関わらずに自分の前にあるものを貪り、魔法をも呑み込み、結界までも食い破り、口の中に入ったものを全部自分の血肉にして動き続ける危険な魔導書。

 そもそも食料採取するのに食料消してちゃ意味無ぇだろうが!

 が、この魔導書は過去に何度もこうして暴走が確認され、その度に対処されているお陰で対処法は確立されている。

 『魔導書が吸収しきれない程の大量のエネルギーや物質を一気に口に叩き込む。』という無茶(不可能)を除けば、あの『(くち)』を結界に放り込み、光も空気も無い状態にしてエネルギー補給を断ち、中の『口』が結界を喰えない様に結界と『口』の動きを連動させて結界と口を触れさせないようにする。これを『口』の内包するエネルギーが尽きる迄続ける事だけが確保手段だ。

 アイツは『喰う』という性質上、対象に近寄らなければその力を発揮出来ない。燃費も良い訳じゃない。動きもそこまで速い訳じゃない。対処法は確立されている。

 が、俺の結界を喰らい、一度迎撃の為に仕掛けちまった魔法一通りを喰らい、今のエネルギーが尽きるまでにどの位の時間が掛かるかが読めない。

 今の俺一人だと回収は不可能。二人揃って逃げたら行方をくらまされて、その間にクソ程ドカ食いして詰む。

 「失せろ!先輩命令だ。館長達呼んで来い!」

 館長なりマープルさんなりが来るまでなら、俺一人でも時間稼ぎくらいは出来るだろう。

 「…はい!」

 返事が遅ぇ!


 「qrururururururururururuuuuuuuuuuuuuuu!」


 きたねぇ音が響く。

 「テーブルマナーくらい守れやボケが!」

 杖を構えなおした。



 走って、走って、走って。

 後ろから爆発音と叫び声と化け物の咆哮が聞こえる。

 『消食(しょうしょく)の魔導書』だった。

 あれは並の魔法じゃどうにもならない。全部食べられてエネルギーにされる。

 あれは食べることだけ考えている。木々も石も岩も川も海も建物も動物も、人も(・・)。そこに善悪も躊躇も無い。

 エネルギーになるものは、美味しそうなものは、口にする。

 近くにあるもの、美味しそうなものから、口にする。

 今近くにあって一番エネルギーになる(美味しそうな)ものは……

 「イース先輩……」

 あの場にいた美味しそうなのは私とイース先輩。一つは逃げて遠くに、一つは目の前に。

 逃がしてくれた。

 悪態をついていたけど、嘲笑っていたけれど、でも、こうして私を助けようとして……。

 早く、早く館長達を呼ばなきゃ。早く、先輩を助けなきゃ。早く、どうにかしないと!

 息が切れる。正直痛みは無いけれど体の動きが鈍くなって、木の根に足を絡めとられた。

 「わっぷ。」

 頭から突っ込んで、火花が散った。


 「ボケがよぉ………」

 左腕を力無く揺らしながら肩で息をする。凶悪な顔が汗で濡れていた。

 けれど、右腕は一切、微動だにしない。

 「quruquruquruquruquruquruqurururururururururu………」

 怪物の口に右手の指先が沈んでいった。

 ゴキゴキと骨を砕いて咀嚼した後、満足そうに真っ赤に染まった舌でべろりと舐めた。

 「最後の晩餐の味はどうだ?美味いだろうよ、俺の奢りだ。

 たっぷり味わって……死ねよ。」

 左手で持った杖の先をそれに向け、一撃を放とうとして、足元から崩れ落ちる。

 「あ゛?」

 急に糸の切れた人形になる。

 必死に抵抗しているのが解る。けど、ダメだ。

 「んだよ、さっきっから、テメェ、何しやがった……?」

 その場に崩れ落ちる。虚空が迫ってい……ゴブリ

 咀嚼音が響いて、真っ赤に染まった舌を舐めた。


 「っ!」

 火花が散った。転んで少し目を回していたらしい。

 「……………行かなきゃ。」

 不安が見せる幻覚だ。

 私より強くて、私より頭が良くて、私より経験豊富な人が逃がした。

 私じゃどうにもならない。

 けど、行かなきゃいけないと思った。

 ここで行かなきゃ、後悔すると、そう思った。


 3年も放置して今頃書いて申し訳ありません。1章キリの良いところまで書いたのでそこまで置きます。

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