滝落ちの魔導書4>消食の魔導書
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
爆炎がダメだった、落とし穴もダメ、だからと今度は電気を喰らわせてみたけど、全然効いてない。なんで?どうしよう!助けて!逃げたい!なんで⁉あとあれを倒せそうな魔法なんて……規模大き過ぎて使ったら森が消し飛んで多分捕まる!あと私が死ぬ!
「どうしよ!どうしよ!どうしよう⁉」
エルコは知らなかった。この時張られていた結界は彼女の考えている最大火力の魔法を封じ込める事が出来る筈だった。
死力を尽くした新人の力を見る為に最後の最後、魔導書のドラゴンが巨大化or頭を増やして限界まで追い詰めて最大火力を吐かせるというシナリオ前提で結界は作られている。
「もうこうなったらいっその事…………」
最大火力の魔法を使おうと思った瞬間……
「クソッ!」
イース先輩が後ろから飛んで来た。
私が飛んで来たイース先輩に驚いて転びそうになったのに、追い抜きした本人は低空を相変わらず飛んでいた。
「あぁ?なんでテメェここに居るんだよ⁉」
理不尽で心が折れそうですが労基は何処ですか?遥か遠くですかそうですか!
イース先輩が青筋を立てて怒っているのが分かる。あと、サングラスしているけど絶対めっちゃ睨んでる!
「失せろ!回収は終わりだ!」
物凄い勢いで私を睨みつけて、懐から杖を抜いた。
杖を使わずとも魔導士は魔法を使える。杖を使うとき、それは魔法をより強力に使うときだ。
「それが出来なきゃ死ぬだけだ!」
『獄炎』
イース先輩が口にしたのは私が使った『爆炎』よりも上位の魔法の名前。
威力・規模・危険度・発動難易度、全てが爆炎より圧倒的に格上で、そもそもそれを使える人が少ない魔法だ。
それが私に向けて放たれた。
ちなみに、私はそれを捌き切れる手段が今、無い。
赤黒い炎が私に襲って来て……通り抜けていった。
「え?」
足が止まった。
あと今気付いた。イース先輩が来る前から全然地響きが聞こえなくなっていた。
「qururururururururuuuuuuuuuuuuuuu?」
振り返って後悔した。
さっきまで私を襲っていた魔導書のドラゴンの頭が、むしゃむしゃとそこに消えていくのが丁度見えた。
表面が脈打ったぶよぶよの肉塊に口が一つだけ。それが、爆炎でも倒せなかったドラゴンをモグモグと飲み込んだ。
今まで図鑑でも見た事がない、奇妙な怪物。
それが、飲み込んだドラゴンの味に満足したように、真っ赤な舌でペロリと唇を舐めた。
『消食の魔導書』:2種
頁を開くと同時に『消食の口』という魔導生物を呼び出す魔導書。
発音こそ『少食』と同じだが、その本質は真逆である。
『消食の口』は召喚後に周囲にあるものを無差別に摂食し続ける特徴を持つ。
有機物、無機物、生き物、魔力を含めたエネルギー全て、この世に存在するもの全てを喰らい、それらを己の存在維持の為のエネルギーに瞬時に変換する。
この魔導書には『消食の口』呼び出し以外の魔法が一切記載されておらず、魔導書を破壊しても『消食の口』は止まらない。操る方法も記載されていない。
一度発動すれば複数の都市を食らって消してしまう。故に危険度は高く設定されている。
魔導司書であっても複数人がかりで挑むべき魔導書。当然新人の実力を見る時に使うものではない。
予想外のことが起きている。




