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私は魔導図書館の司書です。  作者: 黒銘菓
新人魔導司書エルコ=ヒガシノの悲しい現実

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滝落ちの魔導書2~魔導司書は辛いよ(切実)~

 森の中を『身体強化』の魔法を使って駆けていく。

 それは魔導士なら、魔法を使える人間なら誰でも使える基本魔法。名前の通り、筋肉や反射神経といった身体能力を向上させる魔法で、ずっと病院住まいだった私が一か月のリハビリだけで自分の足で外を歩けるようになった理由でもある。

 病弱な体を何とか動かそうと補強して頑張った結果、そこそこ扱いが巧くなって、同級生曰く、『エルコ、それの扱いだけならアンタは多分学院でトップ狙える』だとか。

 『問題はそれ以外なんだけどなぁ…』と思っていたけど、今、それが非常に役立っていると本気で思ってる。

 「私、病弱だったし薬とか沢山飲んでいたから絶対薬の味がするから!絶対美味しくなぃぃぃぃいいいいいいいいいい!」

 薬草と不思議な動く木を掻き分けて必死に逃げているのに、向こうはペースが全ッ然落ちない。撒けない。音と振動がずっと後ろについてくる。

 学院の課題で何度もこの森にはお世話になっているから道は知ってる。けど、ドラゴン三匹を相手に戦うなんてやった事が無い!

 「無理無理無理無理無理!助けて!誰か助けてぇぇぇぇぇええええええええ!」

 走る!走る!転びそうになってそのまま走る!走る走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走る!アイアム、バール=ロイス!アイアム、ルザイン=ヴォルト!走る!走る!走る!




 下の森でこれから直ぐにでも辞めるだろう後輩未満の悲鳴が聞こえる。

 空に浮かぶのに箒は要らない。この仕事(魔導司書)をやってから『箒無しで飛ぶ』を歩く事と同じくらい簡単に出来るようにした。


 魔導司書なんて仕事はクソだと俺は思っている。


 学生時代のクソ野郎共に飲み会で何の仕事をしているかと聞かれて『魔導司書だ。』と答えると、『ナニソレ?』と言われる。お前はどこの世界の出身だ?デンシ機器が世界の根幹にある最近流行の異世界転生者か?ドラゴンに踏まれたら異世界に行ってクソみたいな魔法使って無双してJKってヤツからちやほやされるなろう系か?

 先ず就職条件がクソ面倒臭い。魔導司書資格が無いと就業出来ない。つまり前提の魔導士資格も必要とされる。就業には資格二つ必要というのは舐めているとしか言いようが無い。しかも│内一つ《魔導司書》は他の職では原則使い道が無い。魔導書店員になるにはそんな資格は要らない。魔導書出版社や魔導書職人もそんな資格は必要とされない。運転免許程汎用性が無い。身分証にもならない。資格取得に最低でも2年必要。面倒な条件を揃えて得た物があまりに使い道がねぇ。

 就職条件がクソ悪い。ゴミと言っていい。

 『魔導司書資格を持っているのは最低条件で。』・『出来たら数年間職務経験があるといいね。』・『言語は最低でも三つ以上マスターしておいてね。』・『チームワークを重んじる性格であってほしいね。』・『情報魔道具の扱いが出来て当たり前だよね。』

 これだけ条件を提示されて対価は最低賃金分に毛が生えているかどうか。挙句に臨時や契約が殆どだ。

 『資格取得しているから』と自給に資格分を上乗せする所もあるが、最低賃金ギリギリに十円単位で上乗せして得意顔をしてくる。その顔を見て魔法を叩き込みたくないと思う様なクソ司書は居ない。

 これだけの能力があれば、余程の事が無い限り、他の金の貰える仕事に就く。



 最後に、命が軽い。

 『魔導書の管理だからラクそうだよね。』・『一般と違って魔導士相手だから来る人少ないでしょ?良いじゃん。楽じゃん。』・『魔導書読み放題。最高でしょ?』

 一緒に飲まない連中が言ってた台詞だ。魔法をしこたまぶち込んでやったからもう二度とそんな口は叩けない。会うこともない。

 魔導司書は魔導書の管理や回収も行う。そして管理や回収が必要なシロモノという事は危険度が高い代物だという事が確定している。

 今回後輩未満が相手にしている魔導書は4種。魔導書の分類において下から二番目。頭を使えばただの魔導士でも、剣をぶん回すだけのヤツでも、力づくでぶん殴って黙らせて回収出来る代物だ。

 なぁ、4種でそれなら、もっと上。3種から1種にはどんなモンがあると思う?

 『使ったら最後、それまでの地図がゴミになるほど地形が変わる魔導書』・『あんなトカゲ擬きとは比べ物にならない怪物がアリみてぇに湧いて来て、戦争の引き金になる魔導書』・『最悪国一つが消えて無くなる魔導書』・『世界が滅ぶ魔導書』・『もっと悪趣味な何か』………

 ラクだと思うか?最高だと思うか?楽しいと思うか?常に危険物を相手にして、何度も死にかける事が最高だと思えるヤツ以外は狂う。

 これだけ悪条件が揃った上で給料が安い。命と給料、吹き飛ぶのはどっちが先か程度のクソだ。

 これが魔導司書。

 能力が有って、熱意が有って、そして、死ぬかもしれないというのに安月給でコキ使われ、賞賛もされず、見向きもされず。それでも魔導書を愛し、魔導司書の仕事に誇りを持てる狂人だけがなれる世界最高にクソな職業だ。

 「命が有る内に失せろよ、クソが。」


 魔導書と後輩未満が鬼ごっこの茶番をし続けているのをナオミ=イースは淡々と観察していた。


 「頃合いかぁ?」

 下を見て、呟いた。



 現実の司書の就職条件を見て、戦慄しましたよ。

 魔導書関連の要素以外大半が現実のソレを参照しました。削られますね、心。

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