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私は魔導図書館の司書です。~手始めにドラゴンと戦って倒してもらいます。これも魔導司書の仕事なので~  作者: 黒銘菓
魔導司書の督促は比喩無しに命がけ

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マープルさんと督促に行こう10

 「こんにちは、マスターさん。今日はとっても良い日ね。」

 酒場のカウンターで羽の生えた妖精が微笑んでいる。正直変な光景だなと思う。

 「……注文は?」

 多分、カウンターの奥に立ってるから、マスターなんだろうな。なんか、全身に目と耳が一杯張り付いているけど……

 「無くしたものを探してるの。目印をつけておいたんだけど、それを隠されちゃって。

 そういうが一番得意な人のことを、紹介してもらえる?」

 「……生憎ここは酒場だ。酒は売ってるが情報は売ってねぇ。知りたきゃそこらの化け物から聞きな。」

 周りの(怪物)達がゆっくり立ち上がり始めた。これ、もしかしなくても、不味い?

 「うふふ、沢山よく見える目とよく聞こえる耳があるのに謙遜しなくて良いのよ。」

 あー、分かった、この人、情報屋だから目と耳がこんなに沢山あるのか。

 「金の無い奴に用は無い。」

 「そう……ならこれを。」

 そう言って妖精がカウンターにあるものを出した。

 札束?違う、あれは本だ。

 内容はおとぎ話、一人の勇敢な若者が十二の無理難題を踏破していく英雄譚だ。

 私も読んだことがある。けど、あれは魔導書でも何でもない児童書だ、情報料代わりの初版本や稀覯本という訳じゃなさそうだけど、一体……?

 「っ!アンタ……」

 目と耳だけで表情が解りづらいけど、それを見たマスターの顔色が変わった?

 「情報料はこれで足りるでしょ?最近魔導書を封印した人について教えて頂戴。」

 「魔導書の封印だな……アンタが言ってるレベルの封印が出来る奴はこの辺に一人しかいない。居るとしたら、ここだ。」

 メモが渡された。

 「ふふ、ありがとう。お礼に一杯くらいもらいたいのだけれど、勤務中だから飲めないの、ごめんなさいね。」

 そう言って小銭をカウンターに置いて出ていこうとして、止められた。

 立ち上がっていた人達がバリケードを作って邪魔をしている。

 流石にもう、やるしかないかな?

 魔導書を出そうとして、マープルさんに止められた。

 「急いでいるの。ごめんなさい。」

 「お客さん、荒事はナシだ。やめてくれ、やるとしても他所でやってくれ。そうなりゃ……俺は知らんで済ませる。」

 やっぱりマスターの顔色が悪い。

 ちょっと、スルーしようと思っていたけど、これ、もしかしてもしかしなくても、マープルさん、昔物凄くヤンチャだった?

 「仕方ないわね……」

 魔導書を取り出した。それを見てマスターがびっくりして……

 『錯乱』

 目を瞑った私は無事だったけど、取り囲んでいた人達とマスターは直撃。目を回してひっくり返っちゃった。

 マープルさんが出したのは光系の魔導書。この手の魔法はだいたい目を瞑ればなんとかなるだろうと思って咄嗟に目を閉じたらドンピシャだった。

 「さ、エルコちゃん、急ぎましょう。」

 「はい!」






 少し走って追手がいないことを確認して、裏路地で作戦会議になった。

 「さぁ、これからの流れを説明するわね。

 まずは封印を施した魔導士を見つける。そして、魔導書に施した封印の解除か、依頼人の居場所を教えてもらう。それが出来たら魔導書のところに向かって、返してもらう。

 以上。

 ここまでで質問はあるかしら?」

 「え、あー、ありません。」

 別件で聞いてみたいことはあるけど、流石に言えない。

 「私がどうしてこんな風に詳しいか、聞きたいんでしょう?」

 私が飲み込んでいた言葉をマープルさんが見抜いていた。

 「いや、あの…………」

 気になると言えば気になる。けど、人には踏み込んじゃいけない所があるのも知ってる。

 何より……

 「『人は秘密があってこそ魅力的に映る』という名言があります。

 折角の魅力、暴いたら、詰まらないじゃないですか。だから聞きません。」

 私にだって秘密の一つや二つある。

 臓器が数個無くなって死にかけたから、豚と牛の臓器を移植して、それを魔法で自分の臓器と同化してもらったとか……。

 『だから私の内臓で焼肉すれば幾つかは豚と牛の味だよ~。当たりはどれかな?』

 なんて軽いジョークを言ったら男友達には苦笑いをされて、女友達には殴られたな……。

 「ふふ……ありがとう。エルコちゃん。」

 とても、素敵な笑顔だった。

 「さぁ、じゃぁここから封印の魔導士の所に行くけれど、準備は良い?」

 「はい。」

 「なら、行きましょう。」


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