マープルさんと督促に行こう7
魔導書を読んだことは幾らでもある。
それは、借りたら期日内に返すもので、心が健康な状態になるために読むもので、それ以外に考えた事がなかった。
「色々な人がいるでしょう。」
私の考えを見透かした様にマープルさんが微笑んでいた。
「はい。戸惑い……より驚きが一杯です。考えたこともなかったので……」
「エルコちゃんの好きはとっても純粋なのね。だから期日を守るし、楽しいものと思ってくれるし、悪いことを考えない。
純粋に好きって思われたら、誰だって、何だって、悪い気はしないわ。
そしたら、好きに応えたいと思う。
だから、エルコちゃんは魔導書に好かれるし、魔導書はそれに応えた。
だからここまで来れたのね。」
「かも、しれませんね。」
「それは素敵な才能で、とっても大事なことよ。」
「ありがとうございます。」
「さぁ、次に行きましょう。次は……あらぁ、ちょっと難しいかもしれないわ。」
「?」
マープルさんの言葉の意味は、直ぐに解った。
次に向かったのは結構な数の本を借りて、延滞しているラバーさんのところ。
の、筈だった。
「表札の名前が、違う?」
別人の名前がそこには記されていた。
「お引越し、しちゃったみたいね。
私達は、利用者さんが登録したデータを元にして、最初は本を返してもらえる様に手紙を送って、それでもダメなら向かうようにしているの。けれど……」
「住所が変わったら、手紙さえ届きませんね……」
「そうなの。定期的に更新はお願いしているし、変わったら変更届を出す様にお願いしているんだけれど、そう上手くはいかないのよ……」
「そんな……じゃぁもう、追いかけられないんですか?その……魔導書は?」
どうしよう?返してもらえないまま、そのままにしていたら、それで何か起きたら……
「慌てないで。私達が扱う魔導書はとても繊細で、時に危険なもの。だから、強制的に手元に戻すような魔法は付与出来ない……暴走のリスクを上げるからね。
強制帰還はさせられない。けれど、こういう時のために、こういうものがあるのよ。」
マープルさんが取り出したのは一枚の正方形の真っ白な紙。特に何かが書いている訳はなく、特別な何かが……
「何かの、魔法がかかってます?」
「あら正解。目が良いのね。
さぁ、説明しましょう。魔導図書館の本には皆、専用の魔法が刻まれた極小のタグが取り付けられているの。それこそ、目に見えないし、外すことの出来ない状態のね。
勝手に館外に本を持ち出そうとすると、館の警報が鳴る様に取り付けられているのだけれど、同時に行方不明になった本の場所を示す道標にもなっているの。
これは、その道標を追跡するための魔道具なの。」
そう言いながら紙にキスして、詠唱を始めた。
『私は比翼の鳥 私はあなたと共に飛び 共に落つる翼
どうかあなたのそばで羽ばたかせて どうかあなたとともに終わりを迎えさせて
今あなたのそばに向かう羽を授けて』
空に向かってふぅっと紙を吹き飛ばす。
風に乗ったそれは空中で勝手に折りたたまれて、あっという間に鳥の形になった。
「あれについていきましょう。そうすれば、今本がある場所が解るわ。
箒には乗れる?」
「はい!」
空の旅が始まった。
呪文の詠唱考えるの、楽しい。
けど、長編になったらネタが尽きたり同じ魔法を使う時に詠唱文を探さなきゃいけなさそうで、大変そう。
今更気付いたのですが、連続投稿キャンペーン、毎日投稿が条件ではなかったのですね……。てっきり毎日投稿かと……。




