マープルさんと督促に行こう6
今日は短めです。申し訳ありません。
「ホントにごめんなさい。危うく名状しがたい何かに引き摺り込まれるところだったわ……」
蛸の足の中から救出されたのは一冊の魔導書とそれを借りたラブさんだった。
「もしかして、読んでしまって体調不良や後遺症が……暴走はそれが原因?」
「いえ、読んでてあまりにも面白くて、うっかり三日徹夜してしまい、強制的に眠らされました。
正直、結構快適でした。」
「蛸足のベッドなんて、中々無いけど、良いらしいわね。」
「そうなんですか?」
「いえ、言ってみただけよ。」
「……うふふ、ごめんなさい。
ラブさん。私達司書は大なり小なり本と縁があって、こうして仕事をしているわ。
本を読んでくれること、とっても嬉しい。
けれど、ね。あくまでそれは無理の無い範囲での話。睡眠時間を削って、命を削ってまでやることじゃないわ。
安らかに眠れる日々があって、起きられる日々があるのなら、その日の中で、是非読書は堪能して頂戴。」
「わかりました。」
「一睡も出来ない日々や、痛みで起きられない日々があると、折角だからキリの良い所まではせめて読んで終わりたいという衝動に襲われます。
けれど、そうじゃないなら、自分を労わってください。」
眠れない日々があった。
起きられるかと怯える日々があった。
痛みでベッドの上で苦しみうめくだけの日々があった。
逃げるために本を貪っていたことがあった。
でも、そうじゃないなら、本は、ただ楽しいものであってほしい。
「ご迷惑、おかけいたしました。返却します。」
「はい。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
ラヴクラフトコメディを知る人は、減ったのでしょうね。




