黒猫のひとりごと-2-(96話からあとのお話)
たくさんの仲間の中から、髪が長くて少し茶色くて、きれいな女の子に選ばれた黒猫のぬいぐるみ。
それがわたしだ。
けれど、そのことはあまりいいことじゃなくて、たくさんの仲間と離れたわたしは、すぐにくらくて、せまくて、さびしいところ――“袋”というものの中に閉じ込められた。
そうして、どれくらいの時間が経ったのかわからないあと、わたしはクリスマスの少し前にしおりちゃんに会った。
でも、それもいいことじゃなかった。
だって、わたしとはじめて会ったとき、しおりちゃんはうれしそうじゃなかった。わたしは悲しくて、仲間のところに帰りたくなってしまったけれど、すぐにしおりちゃんのことがだいすきになった。
しおりちゃんは楽しそうじゃなかったり、面白そうじゃなかったりする女の子だけれど、わたしと一緒に寝てくれる。こうこうというところを卒業したら、だいがくというところに行くということも教えてくれた。
ほかにも、猫はにゃーと鳴くことやかつおぶしというものがすきだということも教えてくれたし、本棚で本を守るというお仕事もくれた。
――その役目はちょっとつまらないけれど。
でも、しおりちゃんは、ティッシュカバーのワニさんというお友だちもくれた。
本当は、わたしのことをワニさんのお友だちだと言ったのはせんだいさんで、しおりちゃんはわたしのことをワニさんの餌だと言ったけれど、餌にされることはなかったからしおりちゃんはやさしい。
ワニさんの背中に乗せてくれるし、話しかけてもくれるから、きっとしおりちゃんもわたしのことがすきなんだと思う。
でも、しおりちゃんがせんだいさんのことをどう思っているのかはよくわからない。
わたしは、せんだいさんがしおりちゃんのお部屋にあそびに来るから、ふたりはお友だちなのだと思っていたけれど、しおりちゃんは、せんだいさんがお部屋にきているとき、つまらなそう顔をしている。
おかしい。
お友だちはつまらなくないはずだ。
どういうことなんだろう。
わたしにはよくわからない。
この前、ワニさんは、せんだいさんはしおりちゃんのお友だちじゃないと言っていた。そして、しおりちゃんをたぶらかすわるい人だとも言っていた。
どういうことなんだろう。
わたしには“たぶらかす”がよくわからない。
けれど、ワニさんも意味はよくわからないらしい。
しおりちゃんの周りはよくわからないことだらけだ。
でも、わたしはしおりちゃんに会えてとってもうれしい。
しおりちゃんとずっと一緒だと幸せだ。
だいがくというところに行くときも、わたしを連れて行ってくれたらいいな。