表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

黒猫のひとりごと-2-(96話からあとのお話)

 たくさんの仲間の中から、髪が長くて少し茶色くて、きれいな女の子に選ばれた黒猫のぬいぐるみ。


 それがわたしだ。


 けれど、そのことはあまりいいことじゃなくて、たくさんの仲間と離れたわたしは、すぐにくらくて、せまくて、さびしいところ――“袋”というものの中に閉じ込められた。


 そうして、どれくらいの時間が経ったのかわからないあと、わたしはクリスマスの少し前にしおりちゃんに会った。


 でも、それもいいことじゃなかった。


 だって、わたしとはじめて会ったとき、しおりちゃんはうれしそうじゃなかった。わたしは悲しくて、仲間のところに帰りたくなってしまったけれど、すぐにしおりちゃんのことがだいすきになった。


 しおりちゃんは楽しそうじゃなかったり、面白そうじゃなかったりする女の子だけれど、わたしと一緒に寝てくれる。こうこうというところを卒業したら、だいがくというところに行くということも教えてくれた。


 ほかにも、猫はにゃーと鳴くことやかつおぶしというものがすきだということも教えてくれたし、本棚で本を守るというお仕事もくれた。


 ――その役目はちょっとつまらないけれど。


 でも、しおりちゃんは、ティッシュカバーのワニさんというお友だちもくれた。


 本当は、わたしのことをワニさんのお友だちだと言ったのはせんだいさんで、しおりちゃんはわたしのことをワニさんの餌だと言ったけれど、餌にされることはなかったからしおりちゃんはやさしい。


 ワニさんの背中に乗せてくれるし、話しかけてもくれるから、きっとしおりちゃんもわたしのことがすきなんだと思う。


 でも、しおりちゃんがせんだいさんのことをどう思っているのかはよくわからない。


 わたしは、せんだいさんがしおりちゃんのお部屋にあそびに来るから、ふたりはお友だちなのだと思っていたけれど、しおりちゃんは、せんだいさんがお部屋にきているとき、つまらなそう顔をしている。


 おかしい。

 お友だちはつまらなくないはずだ。


 どういうことなんだろう。

 わたしにはよくわからない。


 この前、ワニさんは、せんだいさんはしおりちゃんのお友だちじゃないと言っていた。そして、しおりちゃんをたぶらかすわるい人だとも言っていた。


 どういうことなんだろう。

 わたしには“たぶらかす”がよくわからない。


 けれど、ワニさんも意味はよくわからないらしい。


 しおりちゃんの周りはよくわからないことだらけだ。

 でも、わたしはしおりちゃんに会えてとってもうれしい。

 しおりちゃんとずっと一緒だと幸せだ。


 だいがくというところに行くときも、わたしを連れて行ってくれたらいいな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ