強いたぬきとの遭遇
どこへ行こう
どこへ行くんだっけ
あ
そうだ
仕事だった
あたしはすくーたーに乗って
田舎の国道を走る
なにもない
人間の作ったものは道だけだ
信号さえない
UFOの気配
上空の後方に感じながら
びゅーん
びゅいーん
そこで出会ったのだ
道のど真ん中にたぬき
あたしをじっと見てた
あぶなーい
どいてくれええええ
じっと見てる
病院は意外と混んでいた
おじいちゃんとおばあちゃんが9割以上いた
1割以下があたし
道に倒れるあたしをじっとしばらくバカにするように見てから逃げて行ったたぬきをあたしは思いながら
それも人生だと胸に刻み込んだ
そんなことで胸よ膨らめと祈りながら
おじいちゃんを連れた四歳くらいの女の子が駆け込んできて
あたしの足をかすめていった
彼女はとても弱いので
病院の中では天下無敵だった
廊下を走って本棚をかき乱し
大声で歌ったかと思えば駄々をこねだし
あんまり顔見知りではないらしい老婆からにこにこ許されていた
あたしの胸に新たに飛来した膨らみの元はなんだろう
まさか嫉妬?
あたしもあんな風に弱くなりたいの?
弱さはさいきょう
漬け物は西京漬け
ああ
でも
あたしの貧乳はつよくなんかない
そこじゃない
そこじゃない
弱くなるためにはもっと
べつのところが欲しい
帰り道にどどんどん
太鼓の音を聞いた
そういえば告知があったっけな
秋祭り
あたしはすくーたーを停めた
割れた左半身がみっともなかったので
停める場所は無限にあった
田舎とはそういう場所だったので
小学校の校庭
どこにこんなに人間がいたのか
あふれかえる
いろんなひと
あたしは祭りの中に混ざって
ひとりでただ歩いた
知らないひとばかりじゃないことがとても怖い
混ざってしまえ
そうすれば大海のひとしずくみたいに無視されて気持ちいい
どんどんどん
祭り太鼓
男たち
不慣れな花火を打ち上げる
ひゅっ
ぱんっ
しょぼ花火
大まじめな男たち
得意顔
笑顔に汗
いいかも
好きなひと
見つかるかも
いなかった
いたのは赤ちゃんを抱いたお母さん
花火に顔を照らされるほどに花火は豪快ではなくて
でも赤ちゃんの顔は小さいのでしっかり照らされた
怖がってるの?
驚いてるの?
それともまさか
感動しているの?
判然としないアホ顔で
抱かれている赤ちゃんの存在は
とても弱い
弱いからこそさいきょうだった
あたしはやっぱりうらやましくなって
逃げるように誰もいない場所を探した
あったよ
ここは奇跡的に誰もいない広場だ
赤い夜に白く空いた満月めがけて
たぬきの腹太鼓
激しく撃ち放つ
ばん!
ばん!
ばん!
割れんばかり
しょぼ花火に負けた
中途半場に弱いあたし
夜空にまたUFOを探す
UFOさん
UFOさん
聞こえますか
北のほうからお越しください
家に帰って
作ってあった野菜の煮っころがしを食べる
ひとりで食べる
中島みゆきの歌を聞きながら
ここじゃないどこかへ
ここじゃないどこかへ
Wow Wow…




