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トリカブト毒の用途

カエデは1年や2年先に生まれただけの自分が認めていない相手から当たり前のように上級生風を吹かれたくないので、今も帰宅部だ。


カエデの住むマンションから歩いてすぐの伯母のうちは、玄関の右奥の犬走りからそのまま1000坪あまりの山林へとつながっていて、金網で囲まれた広大な内側は出入り口の鍵を持っている者しか入れない場所だった。


カエデがその山林の庭で毎日暗くなるすこし前まで一人で過ごすのは、鳥と草木の声に包まれていたいからで、春は摘み草が楽しい。


今ではタンポポに似たタビラコやブタナ、美味しくて苦味の少ない日本タンポポと欧米では食用とされている西洋タンポポの鑑別なども容易に出来るようになった。


日本人が昔から春の摘み草を食するのは贅沢な栄養価を摂取するためで、散歩犬のオシッコも農薬もない伯母の山林庭は知識のあるカエデには巨大な宝の山に見える。


明日の朝、天婦羅にしてユカリにも食べさせてあげようと、タンポポ、ハハコグサ、ヨモギ、カラスノエンドウの新芽だけを今日は少し多めに丁寧に摘んだ。


トリカブトかもしれない群生した草はいまだ花をつけていないが、もし春に花が咲くようならアメリカフウロかニリンソウだ。


この一面に群生している草がもしトリカブトだったら、大変なことになる…。


カエデは小学校3年生のころ、担任教師公認で何週間もいじめられていた子をかばったことでいじめの対象になったまま卒業を迎えたことから、時分がいじめられる側にならないためにだけの発言をする生徒たちも、学校組織内の大人の態度も言葉もいまだに信じていない。


10代の子が活躍するe-スポーツやゲーム大会で優勝賞金が2億6千万円という現代に空や鳥や草木を愛しているカエデは、本当は社会に出ていく勇気がまったく持てないでいる。


高校にはいって1年のクラス委員の相棒として話すようになったアツシは言葉に嘘がない誠実な男の子なので今でも友人だと思っているが、カエデは中学でも高校でも女子たちの無責任な言動が好きになれず彼女たちとは群れることが出来ないでいる。


その頃アツシは、都内の以前エスカレーター肝試しをした場所にじっとたたずんで人を探していた。



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