新しい幸せの種類
カエデは中国からの留学生ワンといつも一緒に過ごすようになっていた。
ワンは北京大学からの交換留学生で、食べた人間や育てる場所に害のない食料環境の研究をして今後の人口増加に備えていきたいとする論文を書こうとしている秀才だった。
21歳のワンは日本語がほぼ完璧で、受験勉強しかしたことがなかったカエデに日本の伝統文化や和食、作法やマナーを教えてくれる。
カエデはモネのところで講師のバイトをしながら質素に暮らしていたのだが、ワンの両親は中国では普通クラスとはいえ資産家で、毎月50万円の生活費とほ別に家賃60万円の億ションをワンのために契約している。
中国の資産家人口は一億人はくだらないので彼らの資金を世界中が狙っていて彼らに向けたビジネスが花盛りであるが、彼らが好む日本製品や和食はいくらでも高い価格で設定できるほどだった。
‘日本は何でも破格に安いよね、母は三億日本円くらいのマンション買う気でしたが、契約が難しかったと言っています。’
’え?それは事実のことなの?‘
‘日本は安全で清潔ですが国力は下がり続けてますよ、カエデ。’
’これからも?‘
‘気を取り直して、カエデ、今夜は高台寺の料亭にしましょう!’
’毎日一人10万円の特別な夕食ばっかだね‘
‘カエデがドレスアップするのをサポートします、今からTAKASHIMAYAに買いに行きましょう!’
’また新しいのを買うの?!‘
カエデの部屋は洋服やバッグ、靴が溢れている。
‘中国の女の子はもっと買って買って言うのに、日本は安いのでまったく遠慮しなくて良いですよ!’
カエデは明らかに高級な店に場馴れし始め、何十万円もする高価なバッグや靴、洋服にも慣れておどおどすることもなくなっていった。
‘身に付けるものに負けるようでは恥です、マナーや姿勢や笑いかたも作ってください。’
ワンに言われて熱心に映画から仕草や態度を学ぶようになった頭の良いカエデは、もう少しでどこに出ても恥ずかしくないような女性になれそうな雰囲気で女の子としての幸せを味わっていた。
‘どうして日本にきたの?’
’和食や懐石料理が長寿のもとなのでもっと知りたいのと、中国人はみんな寿司や和食が大好きだからです。世界中に健康な食事を展開したいのです。‘
‘ご両親がされるの?’
’母は中華料理店展開してまして世界に200店舗以上は出しています、父はスポーツジムを30ヶ所ほどと私立学校を2校経営しているので、和食は初めてのことです。カエデ、着物も着られるようになってください。‘
カエデは既にワンと男女の関係をもっていたが、アツシのときのような共同作業的な行為としか感じられなかった。
モネが何度も自分を抱いてくれたときの、大切な相手として扱ってもらえていて愛しく包まれているかのような溶けるような感覚が恋しくて恋しくて仕方なかったが、モネはあれからはキス以上の相手をしてくれることはまったくなかった。