未来に通じる今を生きること
5月の中旬には30度近い夏日があったが無事に梅雨も過ぎ、もう7月で夏の盛りになっていた。
新入学1年のカエデも一人暮らしやキャンパスに慣れ自分の想定よりずっと大学生活を愉しんで、始めての祇園祭にも男の子たちと出掛けたりしていた。
アツシはようやく今は女の子とヤるよりも受験勉強が優先なんだと悟り、マッチングアプリで知り合った相手を削除しアプリ自体を使わなくなった日々に慣れてきていた。
どんなに逃げてもその時が訪れ必ず終わる日が来る、とモネに言われているアツシは、
心が折れそうになるとモネにメールはするのだが直接会うことはなくなっていた。
モネの京大生塾講師教育は応募者も多くまずまず順調な始まりとなり、モネは3日前から3週間の予定で京都のうちにケンゾーも連れて滞在している。
最初の講師研修はカリキュラムを作った東大生のケンゾーとモネが直接担当するが、2度目からは前回受けた講師が担当する仕組みとし若い講師の考えや意見も取り入れるのがモネの方針だ。
自分が頭が良いから教えるのがうまい講師になるとは限らないことや受験に向かう姿勢が生徒本人の生き方に繋がるように接すること、生徒と一緒に講師自身も学ぶこと、など、
モネは人として誇りをもてる行動をすることの意味や喜びを偏差値競争だけに特化してきた大学生たちにドラーグクインの装いで丁寧に指導した。
モネは自分を見つめるカエデの視線を何度も感じていたがこの3週間は2人だけで会う機会をつくらなかったので男女の関係をもつこともなく、
カエデもキャンパスで知り合った男の子たちと出掛けているようで、カエデのモネへの恋慕はそれなりに時間が解決してくれたかのように見えていた。
あっという間に日が過ぎてモネが京都から離れる日になりケンゾーとスタッフが片付けをしているところにカエデがモネを探しながら入ってきた。
モネが2階の自室で持っていく方のラップトップを選んでいると後ろからカエデが音を立てないように走り込んで抱きついてきた。
カエデの髪からはカモミールの香りがして、良い匂いをアピールしてるな、と思ったモネは笑ってしまった。
離れるのを惜しんで誰にも気付かれないよう何度もキスをする2人はまるで成就しない恋に狂う恋人どうしのようだった。