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雨や嵐も必要だからね

何か月ぶりかのアツシからのメールは挨拶程度の内容だったが、モネには文面外に彼の迷いや孤独が読み取れたのが気になり、アツシと以前に何回か会ったハレノテラスのカフェで待ち合わせをしようと呼び出した。


アツシはモネが店に着いたときには頼んだジュースを飲み干していた。


うつ向いたアツシがいつまでも無言だったので、モネはアツシを車に乗せて妻もケンゾーも不在の自分のうちに連れていくことにした。


’アツシ、今は家に帰ってるのね?‘

‘夏からの予備校は決めました…’

’納得できるまで、社会勉強したわけ?‘

‘自虐的な気分す…’

’経験を生かすことに大きな意味があるわ‘

‘カエデは…?’

’うちの大学に決まったわ‘

‘まじですか、すごいな’

’1年や2年、どうってことないから‘

‘よく知らない相手と簡単にヤれるんですね、日本は’

’排泄行為と恋愛行為は別物なのに行為自体は似てるかもね‘

‘キモイヤツもいますしね’

’あなたは心がともなう方がいいというのを経験しないとね‘

‘モネさんは奥さんだけですか?’

’そうではなくなってしまったので困ってるよ‘

‘モネさんも男なんですね’

’つまらないこと言うねぇ‘

‘安心します’

’まだまだなん十年も安心出来ないものよ‘

‘はじめはヤりたいだけでしたけど、もう女の人が怖くなりました…’

’誰だって自己中に必死で生きてるだけよ‘

‘俺は必死で排泄してたんですね’

’そういう経験も必要なんだって‘

‘カエデには顔見せられないです…’

’…‘

‘モネさんは相変わらずドラーグクインもやるんですか?’

’気分がその感じなときはね‘

‘俺は背が低くて駄目なんだ…’

’アツシはしっかりしたイイ顔になったよ。無駄な日々などないの、雨や嵐は地球には大切なんだから‘

‘酒も旨旨くないんです…’

’食事や相手とセットだからよ‘

‘モネさんが女ならヤりたいです’

’年上好きね‘

‘心が通じるようなのをヤってみたかっただけなんです’

’まだ?‘

‘女にもヤりたいだけのがいるんですね…’

’誰が正しいとか駄目だとかなんてないもんよ‘

‘夜になると誰でもイイからヤりたくなったり、しましたか?’

’あんまり。バカとはヤりたくないかな‘

‘ですよね…’

’自分に自信がつくような進学を決めなさいね、楽になるから‘

‘…’


お酒を飲まないので長居がしにくかったアツシは2時間ほどで帰っていったが、モネはカエデを何度も抱いたことでアツシと会うことはもうこの辺でやめておこうという思いがよぎったことを一人で分析してみたくなった。


モネにとって、素直で女としてはまだ幼いカエデとの行為は恋だけでもなく師弟愛だけでもない、妙な信頼関係を基盤にした異性愛だったのだ。


カエデの素直な瞳と強く触れると跳ね返ってくるようなシルキー肌が汗をかくとキラキラと輝き、それがモネには眩しくてつい見とれてしまうのだが、

カエデは愛し合ったあとの男と女の会話にならないような妙な事を次々に話してくる。


’モネさん、腕も脚も毛は剃ってないんですね‘

‘夏でも長袖を選ぶよ、脚だって隠れるストッキングがあるからね’

’中身は細マッチョですよね‘

‘ありがとう、ていうべきかな?’

’モネさん、爪が痛いです‘

‘ごめん、優しくしてたつもりだけどね’

‘爪は長いんですね、マニキュアも綺麗だし’

’痛くないように気をつけるね…‘

’モネさんはキスしてると髪の毛からいい匂いがするんですよ‘

‘整髪料かな’

’私はクサくないですか?‘

‘大丈夫だよ!’

‘ワタシの髪の毛、なんもいい匂いしませんよ’

’え?‘

‘ボディーソープは何ですか?’

’あー、いろいろかな‘

‘脚の爪も塗ってください、ペディキュア’

’あー、わかった‘

‘もう一回、これから、またしてください’

’いいよ…‘


さすがのモネも、思ったより羞じらいや戸惑いの無いカエデに押されっぱなしなところが可笑しくて、

妻にどう言うべきかを悩む暇もなかった自分を思い出して、カエデが恋しくなっていた。























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