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医者は組織の歯車だもの

モネは京都で商工団体系の老人たちを介さなずに全国展開半ばの受験塾のコンサルティング案件を請け負うことに決め、1週間ほどして妻のもとに戻った。


絶対に老害社会に子どもの未来を奪わせてはならないと思うモネなので、出来るだけ子どもたちが自分で考える癖をつけ自律して生きていけるよう、幼い心の成長と自信と受験を結びつける講師を育てるという方針のもと、講師は京大生に限定してモネ自身で研修を担当することになる。


もちろんカエデはその一期の講師の一人として迎えるつもりだが、自分にも男として制御できない事があったのを改めて知ったカエデとの今回の一件から、モネの心に初めて小さな動揺が生まれてしまいこれからも会う機会が増えることが気になっていた。


モネの妻には病院勤務を退職してシンガポールから帰宅したあと銀座や青山にあるメディカルエステの美容外科部門のバイト医の声がかかり、個人クリニック組織にも勤務してみることにしたところ、給与が以前の2倍になったことに結構満足していた。


おしゃれに興味がないモネの妻はいつも適当に夫モネの女装用ワードローブの中のものを身に付けて出かけるのだが、長身でスタイルが良いのでそれなりに見えて青山でも銀座でも浮いてしまうような存在にならず、けっこう楽しんでパートタイマー医をしていた。


カエデは、大学から紹介されたマンションに引っ越す準備を毎日少しずつ始めていて、4月からは京都でモネのそばでスタッフとしてバイトしたいと思っていた。


モネは、仕事から帰ってきた妻に新しく手掛ける京都で請けた仕事のことを話した。


’また京都に時々行くことにしたよ‘

‘あの、社会が有能な若者の未来を奪っていくようなのが嫌だ、とか言ってたのと関係ある感じ?’

’人間は子どもの時だけは誰にだって無限に可能性が拡がっているんだ。ティーンエイジャーを守り育てる講師を育てたくてね‘

‘そうだ、カエデちゃん、あなたの後輩になったのよね?’

’農学部には人脈はないんだけど、ね…‘

‘あのこは浪人したアツシくんと別れたのよね?寂しいでしょうね…’

’…‘

‘なんか今夜は、どうしたの?…したいの?’

’できる?‘

‘あー、明日は朝診担当だし、ごめん、まだ慣れないクリニックで、もうオバサンなんで疲れちゃって…’

’うん、いいよ、おやすみ‘

‘おやすみ’

モネと妻は個室が別なので、寝るのも起きるのも通常別々で、妻はさっさと部屋に行って寝てしまった。


モネの妻が医師として患者の期待する施術が出来たときの満足感は、夫のモネと抱き合うよりも深いようだ。


モネはリビングの照明を落としてピンクのスプマンテを飲みながら夜景を見ていたが、いくら忘れようとしてもカエデの若いきめ細かい肌を自分のカラダが思い出してしまって仕方なかった。


モネはふいに妻の部屋に行き、明かりを消して寝ようとしていた妻のベッドに入って一方的に妻を求め、モネの妻も嫌がらずに応えてきたが、

モネは頭の中では一緒にいる妻ではなく若い一生懸命な瞳を向けてくるカエデを、優しく丁寧に抱いていた。








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