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いっときの快楽のもたらすもの

高3のアツシがマッチングアプリで知り合う相手の中には親に反抗して家出している中学生もいたが、次第に相手が快楽のためだけに出会うのではなくそこからカモになる人脈を拡げるきっかけをもちたいとか、堕ちる仲間を探しているとかいう場合も少なくないことが分かってきた。


そこではアツシは高校中退フリーターということにしてお金をかけずにヤれる相手を見つけていたが、今一番頑張るべき立場の受験生なのにといったうしろめたい胸のうちを絶対に見ないようにして、とうに大学受験は諦めた、というか大学にいく意味さえ見失ってしまっていた。


カエデは、第一目標ではモネと同じ大学に入ろうとしているのだが、モネの専門分野の工学部は医学部と変わらぬ難易度でとても届かなそうなので、偏差値が一番下の農学部食料環境を目指すことにした。


カエデはもともと、いつも居る庭でいろいろな摘み草を食用にしているし、葉や根の薬能を調べるのも好きなのでちょうどよい学部でもあり受験勉強にもますます熱が入り、模試の成績が少しずつ上がっていく手応えを実感していった。


やがて、例年より暖かく全国で桜が満開になってしまいそうな3月になり、国立大学の後期日程もすべて終わった。


カエデは、見事、モネと同じ大学に合格して、京都の住まいを探すことになったので、このことをモネに伝えるメールを送った。


卒業後は連絡もとっていなかったアツシは、噂では予備校にも入学せず家を出てしまったようだ。


モネはカエデからの報告メールでお祝い返信を書き、近いうちに京都で会う約束をしながら、

生きるためだけの仕事などしたくないのだと妻に告げているところだった。


3月の最後の週の水曜日の夕方、カエデは京都のモネの家に来ていた。


モネはここ数ヶ月ほど京都には来ていなかったが、この日は丁寧にメイクしたドラーグクインの格好で後輩となったカエデのために細いグラスで白ワインを飲みながらパエリアを作っている。


カエデはずっと、モネのクールな考え方や品の良さに憧れていて、モネと2人きりなのが夢のようだった。


’前にアツシと泊まった部屋を使っていいわよ‘

‘円町のビジネスホテルを3泊取りました’

’そう。あ、明日はキャンパス内を案内するわ‘

‘夢のようです、お願いします!’


モネには素直で若いカエデが眩しく、つい、年上の妻と違うところを目で追ってしまっていた。


夜になって、今夜はモネの妻も義弟ケンゾーもここには来ないとわかったカエデは夢に見たチャンスが到来したことに気づいて緊張した。


少し酔っているモネがメイクを落としながらカエデのためにタクシーを呼ぼうとしていたので、カエデは行動に出た。


’カエデちゃん、急に抱きついてきたりして…どうしたの?何かあったの?‘

‘後輩になれたんです、誉めてください!’

’あんまり頑張らなくて合格してる天才人間がわんさか合格してるわよ、うちの大学はね‘

‘私は頑張りました、モネさんのことだけ想って’

’え?‘

‘一度でいいんです…’

’は?‘

‘抱いてください!’

’俺?‘

‘モネさんがいい!’

‘?’

’ゲイじゃないの知ってます!‘

‘そんなに…?あーもう脱いじゃってるし…’

’脱いじゃってます!‘

‘………!’


不器用でストレートに必死なカエデの様子があまりに可愛くて、大人げないことにモネの心にも妙な火が点いてしまい、2人は激しく愛し合ってそのままシャワーに一緒に入り、また抱き合って、そのうちどちらからともなく眠ってしまった。















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