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外国人には格安が日本人には高価だなんて…

先に京都に滞在しているモネを追いかけるように土曜の夕方の新幹線に乗ったアツシとカエデは、気まずさを追いやるために沈黙しないよう意味ない会話を続けていた。


2人の両親は、京大訪問を東大生が付き添うということで研修内容を捏造したフライヤーを見て、記載した参加費も出してくれたのだが、連絡先は実在する研究室でモネの同期がちゃんと在籍しているし宿泊先は京大のセミナーハウスを確保してあるので受験のための研修、という部分以外は嘘はない。


ふと、モネのうちにいったとき玄関のネームボードを見ていたカエデがその事を思い出して話題にした。


’玄関はいるときね、MONEって読めたんだけどあれって名字だったのかな?‘

‘そうだっけ?でもさ、それなら偶然それっぽい名字ってさ、スゴくない?’

’それっぽいって、何っぽいの?‘

‘なんとなくフランス人ぽいて感じとかさ’

‘そうかもね、たしかに’

’だよね‘


たしかにモネは漢字では「椛根」と書く名字だったが、名刺をもらったわけではなかったアツシ達はうちに招かれるまで知らないことだった。


肩が時折触れる距離に座っているカエデからはカモミールの花のような匂いがして、暗い窓の外に灯る建物のあかりを見るフリをしている窓側席のアツシの胸は動悸のような拍動を打っていた。


じつはカエデも、もしかするかもしれないので身体中の無駄毛を除毛クリーム処理して手触り良く準備してきたが、右膝から下だけに使ったレザーで傷が出来て線状のかさぶたが三本出来てしまったのが悔やまれる。


モネからのLINEの指示どおりに京都駅八条口の送迎車専用エリアに着くと、ケンゾーの白い高級車が待っていてくれモネが待つメンバーの実家まで乗せてくれた。


夜の京都タワーや西本願寺、二条城のライトアップを見てアツシとカエデはたった2時間ほどで京都までやって来たことに感動した。


ケンゾーが連れていってくれた嵐山の奥の嵯峨鳥居本の一軒家にはモネをはじめ5~6人の男女が愉しそうにケンゾーと2人を迎えてくれた。


京都駅から30分ほど車で移動するだけで時代劇の撮影所の中にいるような環境が現代に拡がっているなんて驚きだ。


照明に浮き上がる竹林の庭の隅にあるピザ窯では食べたい具材を乗せたピザが何枚でもすぐに焼けて、何枚も食べてお腹が一杯になったアツシとカエデは、ワインの瓶が何本も空いているテーブルの上を女性メンバー2人と一緒に片付けながら旅先の知らない祭りに参加したかのような夜を過ごしていた。


‘ピザもワインも日本の国内でだけ高い食べ物みたいやけど、ほんまはお菓子程度の費用で食べられるようなもんなんやで。’と、長い黒髪の女性が京都弁で言った。


‘日本に来る外人向けの高級ホテルやらお土産は、もう日本人にはあほらしいほど高価過ぎるんやけど

自分の国よりずうっと安いらしい。国力が落ち込んでるんやろな、もう、このニッポンは。’


アツシとカエデは国力の話に相づちなど打てるわけもなく、なかなか話は繋がらず会話がうまく続かなかったが邪魔者扱いされることもなくお開きの時が来た。


’あなたたちは2階の奥の部屋を朝まで使わせてもらって、お風呂は溜めてないのでシャワーを一人ずつでね。‘


モネに声をかけられてアツシは須玖にシャワーを使った。
























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